「脱デフレ」で水準訂正が期待される低PBR銘柄
「日本株投資戦略」では、「脱デフレ」の動きが強まると、低PBR銘柄の株価が上昇しやすくなると考えています。表1は、そうした「低PBR銘柄」を若干のスクリーニングを加えてご紹介したものです。スクリーニング条件は以下の通りです。
(1)時価総額1千億円以上の東証上場銘柄
(2)今期の会社計画経常収支および最終損益が黒字の予想
(3)予想配当利回りが東証一部の平均(1/5現在)である1.64%以上
上記の全条件を満たす銘柄を、低PBR順に10銘柄ご紹介したものが下の表1になります。この表の最も大きな特徴は銀行株(特に地銀)が多いことです。経済がデフレ状態になると、融資先の資産が目減りやすくなり、貸倒れのリスクが増えると考えられます。長く続いたデフレを背景に、株価の低迷が続いたことが主因で「解散価値割れ」の銀行株が多いのだと考えられます。したがって、日本経済がデフレから脱却できれば、銀行株の水準訂正が進んでも不思議ではないと考えられます。
なお、2015/11に上場したゆうちょ銀行 <7182> は、203兆円超の運用資産(2016/9末)に対し46%の93兆円が国内公社債(うち国債は76兆円超)になっています。したがって低金利、特にマイナス金利が経営に大きな打撃になったと考えられます。このため、日銀のマイナス金利政策が一巡し、世界的にも金利がボトムアウトの傾向を示していることは追い風とみられます。一般的に、銀行は多額の公社債を保有していると考えられますので、こうした事情は同じであると考えられます。
「脱デフレ」が追い風になる業種の代表銘柄は?
前項では、日本経済の「脱デフレ」が進むと「解散価値割れ」の銘柄が見直されるという考え方の下で銘柄を選びました。この項では、「脱デフレ」が進む局面で株価が上昇しやすい業種を調べ、その代表的な銘柄を選ぶことを目的にスクリーニングをし、銘柄を選んでみました。
業種別株価指数(月足)と消費者物価指数(生鮮食品を除く)の前年同月比を比較(2016年末までの過去10年)した時、相関関係の強かった業種を上位5業種上げると、鉱業、不動産業、化学、卸売業、非鉄金属となっています。また、業種別株価指数(週足)と原油先物相場(同)を比較した時に相関関係の強かった5業種は鉱業、石油・石炭、卸売業、鉄鋼、非鉄金属でした。今回のスクリーニングでは、ここであげた合計7業種(重複を考慮)を「インフレで株価が上昇しやすい業種」と考えることにしました。
今回のスクリーニング条件は以下の通りです
(1)時価総額1千億円以上の東証上場銘柄
(2)今期・会社計画の最終損益が黒字の予想
(3)PBRが1倍未満
(4)上記した「インフレで株価が上昇しやすい業種」に属していること
これらの条件をすべて満たす銘柄を、各業種で時価総額が最大の銘柄をひとつずつ、計7銘柄ご紹介したものが表2となっています。このうち、新日鉄住金 <5401> は昨年11/9から本年1/4にかけ、株価が33.9%も上昇し、いわゆる「トランプ・ラリー」で主役の一角を占めました。このように、株価的にはすでに大きく動いている銘柄もありますが、原油を含む商品市況については堅調な見通しをもつ市場参加者が多いようで、資源・素材関連銘柄は引き続き追い風を受けそうです。このように、「脱デフレ」(リフレ)は日本にとどまらず、世界的な広がりをもつ投資テーマに育つ可能性もありそうです。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
鈴木英之
SBI証券
投資調査部
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