不動産投資を行っている場合、法人化することによって節税対策が可能という話はよく聞きます。もちろん、どんな場合でも法人化すればいいというわけではなく、事業の実態や規模などによっても、メリット・デメリットの割合は変わってきます。そのあたりの見極めも含め、不動産投資の法人化についておさらいしてみましょう。

不動産投資の「法人化」は何が有利?

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(写真=goodluz/Shutterstock.com)

そもそも、個人と法人とでは、かかる税金のシステムが違います。日本の税体系では、個人の所得税は累進課税で、収入が多くなるにしたがって税率も高くなります。そのため、不動産所得が大きくなるほど、税金も高くなってしまいます。

一方で法人税は個人の所得税よりも税率が低く設定されている上、経済振興との兼ね合いでますますそれが軽減される傾向にあります。

さらに大きいのは、個人で不動産投資を行う場合、収入が一人に集中してしまうのに対して、法人化を行うことで、給与という形で家族に分散することも可能だということです。正当な業務に対する給与ということであれば贈与税なども発生しませんし、所得税の合計額を減らすうえでメリットになります。

さらには、相続対策としても資産を圧縮でき、事業継承をスムーズにできるというメリットがあげられます。不動産が個人資産の場合は全部が相続資産総額に含まれてしまいますが、あらかじめ相続人が株主になっていれば、その分の相続税はかかりません。また、個人営業なら事業継承の際に口座や事業用資産を「贈与」することになり贈与税がかかりますが、法人であればその点でも有利です。

ボーダーラインは所得1,800万円?

もちろん、どんな場合でも法人化が有利というわけではありません。

まず、法人化するにあたっては、当然ながら会社設立のためのさまざまな手続きと、それなりのコストがかかります。個人経営に比べ、帳簿もしっかりと形式に則って付ける必要がありますし、法人税申告の手間も必要です。設立後も、個人経営の時以上の事務の複雑化は覚悟する必要があります。

またコスト面では、法人の場合は仮に赤字であっても必ず最低年間7万円の地方税がかかります。また義務として強制加入の社会保険料(健康保険料および厚生年金保険料)の支払いが発生します。事業の維持費は個人経営に比べ多くなると考えなければなりません。

つまり、法人化にあたっては、「それらのデメリット以上のメリットがあるかどうか」を事前によく考えなければいけない、ということです。

そのボーダーラインに関しては、俗に「5棟10室」(一戸建て5棟もしくはアパート部屋数10室)などと言われますが、これは、税法上その不動産貸付けが「事業」として営まれているかどうかの判断の基準で、必ずしも法人化の目途とは言えません。

もう少しストレートに所得ベースで考えると、課税所得が1,000万円を超えると法人化のメリットが出てくる場合があるものの、そのあたりはケースバイケース。所得税率が40%となる1,800万円までいくと、法人化のメリットがかなり大きく出てくる場合が多いようです。(提供: IFAオンライン

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