銀行の「預金残高」に対する「有価証券残高」の比率を「預証率」という。銀行の重要な経営指標の一つだ。銀行の本業は、個人や企業から預金として集めた資金を貸出や有価証券で運用し利鞘を確保し、業務純益(一般企業の営業利益に相当)を積み上げることである。預証率には会社の経営方針が反映される。預証率の低下はいよいよ銀行貸出が増えてきたのだろうか?
預証率が5年連続低下で過去最低に
東京商工リサーチは7月10日に、国内114銀行(邦銀)の預証率のデータを発表した。17年3月期の邦銀の預証率は26.9%と前年度の31.1%から4.2ポイントと大きく低下した。調査を始めた6年3月期以降で最低だった。低下は5年連続で、直近のピークである12年3月期の42.5%からは15.6ポイント下落した。預証率の低下は、銀行のポートフォリオに占める有価証券の比率が下がっていることを示している。
日銀は、リーマンショック後の景気低迷から脱するために金融緩和を継続してきた。政府は、金融緩和の効果を高めるために、銀行が個人や企業への貸出を増やし消費や設備投資など民間需要を刺激することを求めてきた。預証率の大幅な低下は国策に沿っているように見えるが、実情はかなり違っている。