2015年から改正相続税が適用されました。基礎控除額の引き下げによって、これまで相続税とは関係ないと思っていた人も相続税を納税する必要が出てきました。

相続税は、亡くなった人ではなく相続を受けた人が納税します。遺された家族が安心して暮らしていくために、相続税対策とその注意点について考えてみましょう。

相続税は大きな不安要因

(写真=Monkey Business Images/Shutterstock.com)
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「相続税額はどれくらいになるのだろうか……」

これは、遺された家族にとって大きな不安要因となります。そもそも相続とは、遺族が安心して生活するための「生活保障」の意味合いもあると言って良いでしょう。そのため、配偶者には税額が軽減されるなど、一定額までは相続税がかからないこともあります。その他にも、未成年者控除、障害者控除、小規模宅地等の特例、生命保険金や死亡退職金の非課税限度額など、相続税負担を軽減するための措置や制度を活用することができます。

これらの措置や制度を適用するためには、さまざまな条件を満たす必要があるので注意しましょう。

不安を取り除くための生前にできる対策

相続税の不安を払拭するためにできる対策として「相続時精算課税制度」があります。これは、60歳以上の父母や祖父母と20歳以上の子どもと孫に対して適用出来る制度で、2,500万円までを贈与税0円で生前贈与することが可能です。もし、相続時精算課税制度を適用しなければ、贈与を受けた人は年間110万円以上から贈与税が発生するのです。

また、「相続時精算課税制度の特例」を適用すれば、父母や祖父母が60歳未満でも贈与税をかけずに生前贈与することができるようになります。ただし、平成33年12月31日までと期間が限定されていることや、住宅取得資金として贈与することなどが条件となっています。そのため、住宅に関する登記事項証明書や売買契約書などの添付資料を提出しなければならない点で注意が必要です。

相続税対策で気をつけること

相続税対策で気をつけることとして、「自分の生活保障を確保する」という点が挙げられます。

確かに相続税対策をすることにより、相続を受ける人の不安を解消することが可能です。しかし、過度な生前贈与は、自分の生活基盤を危うくしかねません。持ち家の固定資産税や受取年金に関する所得税といった税金の支払いを免れることはできませんし、病気や怪我をした場合には入院費用や治療費が予想以上にかかることも考えられます。自分の生活費に影響を与えない範囲で相続税対策を行うことが大切です。

また、贈与税をかけずに生前贈与するためにさまざまな税制が用意されていますが、条件によっては適用されないことがあります。例えば、住宅取得資金を利用した相続時精算課税選択の特例では、「住宅面積が50㎡以上である」、「親族に建築の請負依頼をしていない」、「贈与を受けた年の12月31日までにその住宅に住んでいる」などの条件をクリアしなければなりません。予め、どのような条件があるのかを把握しておきましょう。

相続は生前に決着をつける

相続は、生前に準備をすることが大切です。自分の生活を確保しながら相続税対策をするためには、老後に生活費や税金がいくらかかるのか、年金受給額はいくらかについて概算を知っておく必要があります。

その上で余剰遺産があれば、贈与税をかけずに生前贈与したり相続税負担を軽減したりすることが可能となるのです。