2016年大晦日に発表された『第704回年末ジャンボ宝くじ』の1等当せん金は7億円で、当せん枚数は104枚だった。

有名なジャンボ宝くじは、2~3月、5~6月、7~8月、9~10月、11~12月と年5回販売されていて、よく当たるとされる宝くじ売り場には、当選実績の看板が目立つ。年5回販売されているため、単なる夢で終わらないのではないか、今度の当選者は自分ではないかと考える人もいるだろう。

今回は、この宝くじの還元率と経済的合理性について考えてみる。

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)

宝くじの売上はどのように使われるのか

宝くじの運営は「当せん金付証票法」で決められており、全国都道府県および全指定都市 (地方自治体) で販売されている。この法律には発売総額に対する当せん金額の割合が明記されており、5割を超えてはならないとある。

宝くじ公式サイトによると2015年度の販売実績9,154億円のうち、当せん金は47.0%の4,303億円となっている。では、当せん金以外は何に使われているのだろうか。発売総額の39.8%に当たる3,639億円が発売元である自治体に納められ、公共事業等に使われている。印刷経費や売りさばき手数料は12.0%で1,098億円、社会貢献広報費に1.2%となる114億円が振り分けられている。

自治体での使い道は公開されており、例えば2014年度をみてみると、北海道では道路維持管理事業や道有林整備事業など、さいたま市では国際交流事業や中小企業支援事業、高齢化・少子化対策事業など幅広い事業に充当されている。

宝くじの還元率と経済的合理性について

では、宝くじを購入することによる利益はどのくらい期待できるのだろうか。

総務省が発表した宝くじ活性化検討会の資料によると、やや古いデータではあるものの、宝くじは非課税なので、当せん金率が45.7% (2008年度) であれば、実際の還元率も同率となる。サッカーくじも宝くじと同じ仕組みで実際の還元率は49.6% (2008年度) となっている。これに対して、競艇や競輪などの公営競技は、当せん金率が74.8%であっても所得税・住民税を控除すると実際の還元率は58.5% (2008年度) となる。前述の通り、2015年度の宝くじの還元率は47.0%なので、この比率は大きく変わっていないと言えるだろう。

ただ公営競技の場合、1日に複数のレースが行われている。仮に1日3レースに賭けた場合、還元率を60%としても、60%×60%×60%=21.6%となり、宝くじやサッカーくじの還元率を下回る。宝くじも何度も購入すれば還元率は下がるが、公営競技と比べジャンボ宝くじの場合は年5回しか買えない。さらに当選結果がその場ではわからないこともあり、その日に負け分を取り返そうという心理は働かず、ギャンブル性は相対的に低いと考えられる。

では、宝くじに経済的合理性はあるのだろうか。経済的合理性とは「経済的な価値基準に沿って論理的に判断した場合に、利益があると考えられる性質や状態」のことである。

仮に宝くじの還元率が一律50%とする。手元に100万円の資金があるとして、その全てを宝くじの購入に費やしたとしよう。還元率通り計算すると、当せん発表時に手元の資金は50万円に減る。この50万円をもう一度、全額宝くじの購入に費やすと、次は25万円に減る。

このように、胴元 (国) が最小でも50%を持っていく以上、期待利回りはマイナスであり、購入すればするほど手元の資金は減っていくことになる。宝くじを投資商品として考えたときは、経済的合理性がないと言えるだろう。

宝くじは夢を買うもの ?

しかし宝くじは、数は少ないとはいえ、7億円を非課税で手に入れる機会を提供していることは間違いない。重要なことは、一般の人が通常の生活をしていて、7億円という日本人の生涯年収の倍以上の金額を一瞬にして手に入れる機会はほとんどないということだ。

2016年8月に公表された「第14回宝くじに関する世論調査」によると、宝くじの平均購入総額は、購入者ベースで2万6,650円となっている。また、「2015年度宝くじ長者白書」のアンケートによれば、1,000万円以上の高額当選者934人のうち、10年以上買い続けた人は66.2%を占めるそうだ。

宝くじへの考え方は、人によって分かれるところだろう。どちらにせよ、自分の信念に基づいた行動を継続したいものだ。

(提供: 大和ネクスト銀行

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