円安の影響で輸出入ともに高い伸び

財務省が8月17日に公表した貿易統計によると、17年7月の貿易収支は4,188億円と2ヵ月連続の黒字となり、事前の市場予想(QUICK集計:3,800億円、当社予想は3,271億円)を若干上回る結果となった。円安の影響で輸出入ともに高い伸びとなったが、輸入の伸び(前年比16.3%)が輸出の伸び(前年比13.4%)を上回ったため、貿易収支は前年に比べ▲858億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比2.6%(6月:同4.0%)、輸出価格が前年比10.5%(6月:同5.5%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比3.2%(6月:同4.2%)、輸入価格が前年比12.7%(6月:同10.9%)であった。

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季節調整済の貿易収支は3,374億円の黒字となり、6月の873億円から黒字幅が拡大した。輸出が前月比2.8%(6月:同▲0.6%)の増加となる一方、輸入が前月比▲1.2%(6月:同0.3%)と3ヵ月ぶりに減少した。17年入り後縮小傾向にあった季節調整済の貿易黒字は5ヵ月ぶりに拡大したが、これは主として原油価格下落によるものである。

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7月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=48.5ドル(当研究所による試算値)となり、6月の52.3ドルから下落した。ただし、足もとのドバイ原油は50ドル前後まで持ち直しており、通関ベースの原油価格は8月以降上昇することが見込まれる。数量ベースの輸出入はほぼ同程度の伸びとなっているため、原油価格上昇に伴う輸入価格の上昇を主因として貿易収支(季節調整値)は縮小に向かう可能性が高いだろう。

IT関連輸出が減速

7月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比3.0%(6月:同5.2%)、EU向けが前年比▲1.0%(6月:同4.5%)、アジア向けが前年比1.9%(6月:同3.6%)といずれも前月から伸びが低下した。

季節調整値(当研究所による試算値)では、米国向けが前月比▲2.0%(6月:同2.6%)、EU向けが前月比▲5.0%(6月:同▲1.0%)、アジア向けが前月比▲2.3%(6月:同0.2%)、全体では前月比▲0.2%(6月:同0.1%)となった。7月の水準を4-6月期と比較すると、米国向けは0.4%上回っているが、EU向けは▲4.9%、アジア向けは▲2.5%、全体では▲0.1%下回っている。

4-6月期のGDP速報では財貨・サービスの輸出が前期比▲0.5%と4四半期ぶりに減少し、外需寄与度が前期比▲0.3%のマイナスとなった。これまで輸出の牽引役となっていたIT関連に一服感がみられることなどから、輸出全体の回復ペースはやや鈍化しており、7-9月期も外需が成長率を大きく押し上げることは期待できないだろう。

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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長

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