本記事は、リ・ソンウェイ氏の著書『5%の変化 自分を変える「小さな実験」』(ダイヤモンド社)の中から一部を抜粋・編集しています。

5%の変化 自分を変える「小さな実験」
(画像=mapo/stock.adobe.com)

良心が痛む営業の仕事に向き合えません

最近ずっと悩んでいることがあります。おそらく、営業職の多くの人が一度は抱える悩みかもしれません。
先生なら、もうお察しでしょう―そうです、顧客への電話のことです。
営業職を始めたばかりの頃は平気でした。伝えるべきことを伝え、契約に向かって突っ走る。断られても、それほど気になりませんでした。
しかし次第に、私の業界では、すぐに本題へ切り込むやり方ではうまくいかないと気づきました。そこで、顧客と長期的な関係を築く方法へと切り替えたのです。その判断自体には納得しています。それなのに、この先、どのように仕事を進めていけばいいのかがわからなくなってしまいました。
本当は明確な目的(契約してほしい)があって電話をしているのに、まるで友人のように振る舞う。そのやり方が、どこか「最低だ」と感じてしまうのです。自分がうそをついているように思えて、嫌になるのです。
それに、私は世間話があまり得意ではありません。よく知らない顧客と、取りとめのない会話を続けることにも苦手意識があります。考えすぎてしまい、受話器を手に取ることすらできなくなることもあります。
かつては「電話くらい、たいしたことではない。何も考えず、怖がらなければいい」と思えた時期もありました。
でも今は、そう思うことすらできなくなってしまいました。

回答

営業の業務に強い嫌気がさしている。それでも、あなたはその仕事を続けている。
私は、あなたの問題の本質はここにあると理解しました。
おそらく周囲の人から、こう言われたことがあるのではないでしょうか。
「そんなに嫌なら、どうして辞めないの?」
その問いに、あなたがどう答えたのかはわかりません。けれど、強い嫌悪感を抱きながらも続けるという選択をしている以上、そこには何かしらの“利点”があるはずです。
たとえば、こんな理由が考えられます。
「自分は独自のやり方でなかなかの成績を収めている。嫌だと思いながらも結果を出せている自分は、どこか他人とは違う存在なのではないか」と思えている。
あるいは、もっと現実的な理由―「収入がいいから」という可能性もあるでしょう。
この2つ以外に、他にどんな利点があると思いますか?
これからの7日間で、この2つ以外の10の利点を挙げてみてください。
そして最後にそれらを整理し、あなたはこの仕事から何を得ているのかをまとめてみましょう。そのとき、仕事への向き合い方が少し変わるかもしれません。
報告を待っています。

実践報告

先生からご回答をいただけたことに、とても驚きましたし、心から嬉しく思いました。
本当にありがとうございます。
私が会社に残り続けている理由について、正直にお話しします。
実は、私には日常的なケアが必要な子どもがいます。それにもう一人、まだ幼い子もいます。
社長は近所に住んでいて、私の家庭の事情をよく理解してくれています。そのため、家族の世話をする時間を確保できるよう配慮してくれ、副業で収入を得られるよう融通を利かせてもくれます。
だからこそ、この仕事を続けることは、私にとって「仕方ない選択」でもあり、もしかすると「最善」、あるいは「唯一の選択」なのかもしれません。社長の配慮に応えたいという気持ちもありますし、お互い様だと思える部分もあります。
先生からお返事をいただく少し前、私はかなり気持ちが沈んでいました。思い切って社長に「うまくやれないので辞めたい」と伝えたこともあります。けれど社長は私を責めることなく、「残ってほしい」と言ってくれました。私も、社長に対して自分の意志を押し通すことはできず、結局、今の仕事を続けています。
そのとき私は、「すべて社長にお任せします」と言い、決定権を社長に委ねてしまいました。
すると、なんだか気持ちがとても楽になったのです。
「給料が少ないのは自分の能力が足りないからではないか?」などと、何でも自分を責める癖も薄れていきました。「もっと学ぼう」とも思えるようになり、仕事に関する本や資料を用意してほしいとお願いすると、社長も喜んで応じてくれました。

その後、先生から回答をいただいたので、おっしゃるとおり「今の仕事を続ける利点」を挙げてみました。すると、さらに気持ちが軽くなりました。
「やはり今の仕事を続けよう。これ以上に良い選択肢は、今は他にない。これしかないなら、受け入れよう」
そう思えたとき、仕事も家庭も、前向きに受け止められるようになりました。「他に選択肢はない」と腹をくくると、不思議と仕事への抵抗もプレッシャーも感じにくくなりました。
さらに、自分は「プレッシャー」という言葉が嫌いだと気づきました。
好きなのは「モチベーション」という言葉です。
「営業を頑張れば給料が上がる」と考えるほうが、「できなければ下がる」と考えるよりも、ずっと前向きになれます。
だから今は、「この先うまくやっていけるだろうか」といったことは考えないようにしています。
とにかく、今できることに集中する。
そう考えるだけで、とりあえずやる気は出ます。そして、やる気が出れば充実感も生まれるのではないかと思います。好きな「モチベーション」という言葉を味方につけ、前向きな言葉で自分を支えていこうと思います。
電話は電話。それ以上でも以下でもありません。顧客の反応を気にして考えすぎるのはやめます。無理をせず、臨機応変に。その時が来たら、その時にやるだけです。
先生、本当にありがとうございました。また変化があれば、ご報告します。

5%の変化 自分を変える「小さな実験」
リ・ソンウェイ
1985年生まれ、中国・四川省出身。北京大学臨床心理学博士。2007年より北京大学校医院心理カウンセリングセンターおよび北京大学学生心理健康教育カウンセリングセンターでカウンセラーを務める。認知行動療法、家族療法が専門。現在はフリーの心理カウンセラー、作家として活動するほか、清華大学をはじめとする各大学で心理学講座を受け持ち、人気講師として名高い。

【訳者】金山まゆみ(かなやま・まゆみ)
中日翻訳者。関西大学文学部(中国文学科)卒業。企業や政府、自治体など、幅広い分野で中国語の通訳翻訳業務に従事。

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