本記事は、金川 裕一氏の著書『一流の人望力 人の心をつかむ人がいつもやっていること』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の中から一部を抜粋・編集しています。
信頼されるマネジメントは、背伸びではなく「伴走力」で築く
マネジメントの本質は、業績を上げるだけでなく、人との信頼関係を築くことにあります。かといって、「部下から慕われたい」と思って行動することには違和感を覚えます。慕われようとしてする行動は、どこか計算的であり、結果として自然な関係性が築きにくくなってしまうからです。人との関係性は、意図的に築くものではなく、日々の積み重ねによって自然に生まれてくるものです。
業績を達成しながら信頼関係を育てるには、まず「やるべきことを明確にする」ことが不可欠です。誰が、いつまでに、何をやるのか。その具体的な目標を握り合うことが、チームとしての約束になります。数字に対する意識を明確にし、進捗をトレースし続けること。これが、マネジメントにおける基本であり、最も大切な部分です。
目標数字に達しなかったときこそ、上司としての洞察力が問われます。部下が手を抜いていたのか、それとも真剣に取り組んだうえで結果が出なかったのか。この違いを見極めるのがマネジャーの仕事です。努力の跡が見える人には、責めるのではなく、やり方を一緒に考え、伴走する。逆に、サボっているのなら厳しく指導する。感情に流されず、行動と結果を冷静に見つめる視点が必要です。
信頼関係は、こうした積み重ねの中で自然と生まれてきます。言葉だけで「頑張れ」と励ますのではなく、具体的な行動計画と期限を明示し、常に確認し合うこと。その繰り返しが、部下にとっての信頼の源となり、部下を成長させます。
「この上司と一緒に仕事をすると、自分は成長できる」と感じてもらえるかどうかが、長期的な信頼を築くポイントになります。
若い頃に築かれる関係性は、一生ものになることもあります。私自身、30代で一緒に仕事をした先輩や仲間たちとは、今でも関係が続いています。若い頃は体力もあり、時間も惜しまず人と向き合うことができました。そうやって「同じ釜の飯を食う」ような関係性は、生涯の財産になりえます。とことん向き合うという姿勢が、その後の人生においても信頼の土台となります。
とはいえ、経験の少ない30代の時点で、部下に対して的確なアドバイスをするのは難しいこともあります。むしろ、背伸びして立派なことを言おうとするよりも、一緒に悩み、考え、汗をかく姿勢のほうが、人間関係の土台になります。何かを教えるよりも、「一緒にやっていこう」という空気をつくることのほうが、信頼につながることも多いのです。
近年はコンプライアンスやハラスメントの観点から、上司と部下がプライベートで深く関わることに対するハードルが上がっています。しかし、工夫次第で信頼関係は築けます。たとえば、ランチを共にする、雑談を大切にする、といった日常の小さな交流が、大きな意味を持つようになります。形式よりも心の通い合いが、信頼をつくるのです。
外資系企業では、福利厚生やオープンなオフィス環境を整えることで「家族的な関係」を演出することがあります。しかし、表面だけの取り組みでは、深い信頼関係は生まれません。私が大切にしているのは、会社という場においても「人を本当に大切にする姿勢」です。いくら一緒に食事をし、和やかな場を共有したとしても、その裏で簡単に人を切るような制度があるならば、本当の意味での忠誠心は生まれません。
人と人とのつながりは、制度や形式だけでつくられるものではなく、その人の行動と価値観に基づいて育まれるものです。
私の座右の銘は、「企業はファンづくり、人生は仲間づくり」。どんな取引先とも、仲間のような関係で接すること。それが信頼関係の源となり、結果として長期的な仕事にもつながっていきます。
これからの時代は、成果主義や効率性だけではなく、「人との関係性」そのものが価値になる時代です。どれだけの仲間に囲まれているか、どれだけ信頼されているか。
そこにこそ、これからのキャリアを豊かにするヒントがあります。
学生時代は早稲田大学体育会バレーボール部主将として活躍し、卒業後は横河電機バレーボール部監督、早稲田大学バレーボール部監督として選手育成にも携わった。現在は日本バレーボール協会副会長、早稲田大学バレーボール部OB会会長。
座右の銘は「企業はファンづくり、人生は仲間づくり」。
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