「相続税対策の一環として不動産投資を行う」という話を耳にしたことがある人は、多いのではないでしょうか。

しかし、不動産には相場変動に伴う価格下落リスクがあるため、現金や預金で相続する方が安全だと思っている人も少なくないでしょう。相続を有利に進めるためには、こうした点を正確に理解することが重要です。

相続税のポイントは基礎控除と税率

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(写真=Avatar_023/Shutterstock.com)

相続税額を算定する際には、まず相続財産から負債などを加減して課税資産額を計算します。次に課税資産額から基礎控除額を差し引いて、課税対象となる遺産額を確定します。

基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。相続税も所得税と同様に、累進課税制度が導入されています。遺産額が6億円を超えれば、控除額(7,200万円)を引いた金額に対し55%の税率が適用されます。

3代相続すると財産がなくなるといわれますが、100億円の財産を3回(3人)相続すれば約9億円になります。遺産を生活費などに使えばさらに早く減るため、資産家が何の手も打たずにひ孫へ残せる資産はあまり多くありません。

ここまで多額でなくても、基礎控除額を上回る相続財産があれば、最低でも10%の税率が適用されます。遺産額が1,000万円超から3,000万円以下で15%、3,000万円超から5,000万円以下は20%、5,000万円超から1億円以下では30%と小刻みに税率が上がっていきます。

このため、課税資産額を圧縮する(相続財産の評価額を下げる)ことが重要になります。

円滑な相続のカギを握る不動産投資

相続財産の評価額は、種類により異なります。現金や預金は額面がそのまま評価額になります。有価証券や不動産などそれ以外の資産については、その特性に応じた評価方法が定められています。

土地は原則として宅地、田、畑、山林などの地目ごとに評価します。評価方法には路線価方式と倍率方式の2つがあり、路線価が定められている地域では前者を用います。その際、路線価をその土地の形状などに応じた奥行価格補正率などで調整したあと、当該土地の面積を乗じて計算します。建物は固定資産税評価額と同額に評価されます。

一般的に路線価は時価の約70%、固定資産税評価額は建築費の50~70%程度といわれています。このため、時価1億円のマンションの相続財産評価額は、7,000万円程度になると考えられます。

課税資産額は純財産額ベースとなるため、借入金(負債)とセットで不動産(資産)を相続すれば圧縮されます。時価1億円のマンションの相続財産評価額を7,000万円、基礎控除額を4,800万円と仮定した場合、3,200万円のローンと合わせて相続すれば課税対象となる遺産額はゼロです(他の相続財産やみなし相続により取得した財産などが存在しない前提です)。

また、子が購入したマンションを親へ売却してリースバックすることにより、課税対象財産を圧縮する手もあります。この方法を実行すれば、子には時価相当の現金がただちに渡ります(自宅売却であれば、不動産譲渡益課税に際し3,000万円の特別控除枠を利用できます)。その一方で、相続時には時価から大幅に減価された評価額で不動産が承継されます。

このように不動産をうまく活用すれば、相続税額を減らせる上に、将来にわたって収益を生む資産を残すことができます。不動産投資にリスクはつきものですが、すべて現金や預金で相続することにもデメリットがあることを認識して、相続対策を考えるべきでしょう。(提供: Incomepress

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