・日銀は、10/31の金融政策決定会合で、全ての政策を維持した。一方、政策委員のインフレ率見通しは、連続で引き下げ。今年度予想はとうとう1%割れの0.8%で、緩和は一層長期化へ。

・次の注目は、11/2の次期米FRB議長人事と、英国の利上げ。報道通りFRB議長がパウエル氏なら、現状の利上げペースが維持されるとみられ、市場に大きな変動はないとみられる。

・英国が10年ぶりの利上げに踏み切れば、日本は先進主要国中唯一の緩和維持国に。金利差からは安定的な円安、景気拡大の持続が期待される。

日銀が金融緩和維持決定:インフレ率見通し引き下げで、緩和は一層長期化へ

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(写真=PIXTA)

10/31、日銀が金融政策の維持を決めた(図表1)。インフレ率2%達成には緩和が不十分として、前回に続き片岡新委員が反対票を投じた以外は、全員が賛成票を投じた。政策的には、予想通り全く変更なしという結果となった。

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事前に注目されていた点は、展望レポートにおける政策委員の予想インフレ率と、前回も反対票を投じた片岡委員の対案提示の有無の2点だった。

まず、展望レポートの政策委員のインフレ率見通しは、前回会合から連続の引き下げとなった(図表2)。今年度の予想はとうとう1%を切る0.8%との予想で、「19年度ごろ」との達成時期は維持したものの、2%の目標からの乖離は一層拡大した。これにより、緩和の長期化が一層確実になった。

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次に、片岡委員の対案については、現在0.3%程度で推移している15年国債金利について、「0.2%未満で推移するよう長期国債の買い入れを行うことが適当」との意見が提示された (図表3)。しかし、発表後も債券市場の反応は薄く、こうした施策が実行される可能性は低いと受け止められた模様である。

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当面の注目点:日本は主要先進国で唯一の超金融緩和継続国に

10/31~11/1のFOMC翌日の2日に、次期FRB議長人事が発表になる。30日までの報道では、現在のFRB理事のジェローム・パウエル氏が本命と伝えられている。仮に報道通りであれば、ゆっくりしたペースでの利上げというイエレン路線を引き継ぐものと見られる。景気を重視する政策であり、市場にはポジティブとみられる。

なお、パウエル理事は、4月からFRBの中で金融監督・規制委員長となっている。米投資ファンド・カーライルに在籍したこともあり、政府による厳しい規制よりは、業界の自主的な規律を重視している。パウエル氏のリーダーシップ強化は、米金融機関にとってもプラスに働きうるだろう。

また、今週11/2には、英イングランド銀行が10年ぶりに利上げに踏み切る可能性が高い (0.25%→0.5%)。先週10/26には、ECBが資産購入枠の縮小(月600億ユーロ→300億ユーロ)を決めた。これで、日本は、日米欧の主要先進国中唯一、金融緩和を継続する国となった。地政学リスクが完全に晴れたわけではないが、基本的には金利差による円安が継続するとみられ、日本にとっては安定的なGDP成長持続の原動力となるだろう (図表4)。

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大槻 奈那(おおつき・なな)
マネックス証券 チーフ・アナリスト

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