結果の概要:個人消費は前月から伸びが鈍化も、市場予想には一致
11月30日、米商務省の経済分析局(BEA)は10月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.4%(前月値:+0.4%)となり、前月の伸びに一致、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.3%を上回った。個人消費支出(名目値)は、前月比+0.3%(前月値改定値:+0.9%)と、市場予想の+0.3%に一致したものの、+1.0%から下方修正された前月を下回った(図表1)。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は前月比+0.1%(前月改定値:+0.5%)と、こちらも+0.6%から下方修正された前月を下回ったほか、市場予想の+0.2%も下回った(図表5)。貯蓄率(*1)は3.2%(前月:3.0%)と前月から上昇した。
一方、価格指数は、総合指数が前月比+0.1%(前月:+0.4%)と前月から伸びが鈍化、市場予想の+0.1%には一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比+0.2%(前月改定値:+0.2%)と、+0.1%から上方修正された前月値、および市場予想(+0.2%)に一致した(図表6)。前年同月比では、総合指数が+1.6%(前月改定値:+1.7%)と、こちらは+1.6%から上方修正された前月値から低下したものの、市場予想(+1.5%)は上回った。コア指数は+1.4%(前月改定値:+1.4%)と、こちらは+1.3%から上方修正された前月を上回る一方、市場予想(+1.4%)に一致した(図表7)。
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(*1)可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。
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結果の評価:所得は堅調も、消費は前月の反動もあり、所得対比でも鈍化
10月の名目個人消費(前月比)は、09年8月(+1.3%)に次ぐ高い伸びとなった前月から大幅に伸びが鈍化した(図表1)。一方、個人所得は前月に引き続き堅調な伸びを維持したことから、貯蓄率が5ヵ月ぶりに上昇に転じるなど、10月の消費は所得対比でも鈍化した。
先日発表された7-9月期のGDP改定値は、個人消費では9月分が下方修正された影響もあって、前期比年率+2.3%と速報値の+2.4%から引き下げられた。一方、今回の結果から10-12月期の最初の月に当る10月の消費もそれほど強くなかったと言えよう。もっとも、11月下旬の感謝祭後から本格化する年末商戦は、足元までオンライン業者を中心に好調で、昨年を上回る伸びに加速することが見込まれていることから、年末にかけて消費の伸びは加速しよう。
物価(前年同月比)は、総合指数では前月値が上方修正されたとは言え、前月から伸びが鈍化した。一方、コア指数は総合指数とは対照的に上方修正された前月に一致したことから、コア指数には物価底打ちの兆しがみられる。
所得動向:可処分所得(名目、実質)が高い伸び
個人所得は2ヵ月連続で堅調な伸びを維持したが、内訳をみると、賃金・給与が前月比+0.3%(前月:+0.4%)と小幅ながら前月から伸びが鈍化した一方、利息・配当収入が+0.8%(前月:+0.4%)と前月から伸びが加速した(図表2)。
個人所得から社会保障支出や税負担などを除いた可処分所得(前月比)は+0.5%(前月:+0.4%)と、こちらは前月から伸びが加速、17年2月以来の高い水準となった(図表3)。また、価格変動の影響を除いた実質ベースも前月比+0.3%(前月:+横這い)と、こちらも17年5月以来の水準に加速した。
消費動向:前月の反動から、自動車関連、ガソリン・エネルギー消費が減少
名目個人消費(前月比)は、サービス消費が+0.3%(前月:+0.4%)と、前月から小幅な鈍化に留まった一方、財消費が+0.1%(前月:+1.8%)と大幅に伸びが鈍化した(図表4)。
財消費では、耐久財が▲0.1%(前月+2.9%)と前月に大幅な伸びとなった反動もあり、2ヵ月ぶりにマイナスに転じた。とくに、ハリケーンからの復興需要で好調であった自動車・自動車部品が▲0.8%(前月:+8.6%)と落込んだことが大きい。また、非耐久財も+0.2%(前月:+1.3%)と伸びが鈍化したが、ガソリン価格が落ち着いたこともあって、ガソリン・エネルギーが▲1.6%(前月:+9.2%)と、3ヵ月ぶりにマイナスに転じた。
サービス消費は、金融・保険が+0.5%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速したほか、住宅・公共料金が+0.4%(前月:+0.4%)と前月並みの伸びを維持した一方、娯楽が+▲0.7%(前月:+1.6%)と前月の高い伸びからマイナスに転じた。
価格指数:エネルギー価格(前月比)がマイナスに転じて総合指数を押下げ
価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲1.1%(前月:+6.8%)と、3ヵ月ぶりにマイナスに転じた(図表6)。食料品価格指数は横這い(前月:横這い)とこちらは3ヵ月連続で横這いとなった。総合指数は前月から伸びが鈍化したが、エネルギー価格下落の影響が大きい。
一方、前年同月比では、エネルギー価格指数が+6.9%(前月:+11.1%)と、前月から鈍化したものの、高い伸びを維持した(図表7)。食料品価格指数は、+0.5%(前月:+0.4%)と、こちらは17年6月(▲0.1%)を底に4ヵ月連続で緩やかながら伸びが加速している。
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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員
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