投資初心者でもはじめやすい投資制度「つみたてNISA」が2018年1月から始まる。つみたてNISAは、特に少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度で、最大の特徴は利益が非課税となる点だ。

つみたてNISAを始めようと考えていても、分からないことが多くて申し込みを後回しにしては、このお得な制度を活用できない。ここでは、つみたてNISAについて、10のよくある質問と回答を紹介していく。つみたてNISAの理解を深めるために活用して欲しい。

なお関連する言葉として、従来のNISAを「一般NISA」と、通常の証券や投資信託の口座(特定口座、一般口座)を「課税口座」と表記する。

Q1. つみたてNISAとは、どのような制度で誰が利用できるの?

(画像=Who is Danny / shutterstock.com)

A1. 利用対象者は、日本在住で、口座を開設する年の1月1日時点で20歳以上となる人

つみたてNISA(ニーサ)は、少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度であり、2018年1月から開始される。購入できる金融商品は、長期・積立・分散投資に適したものに限定されており、投資初心者でも始めやすい制度になっている。

証券会社や銀行などの金融機関でつみたてNISA口座を開設し、対象の金融商品を積み立てながら購入することで、分配金や売却益が非課税となる(非課税でない場合には利益の約20%が課税される)。非課税投資枠は年間40万円まで、非課税期間は20年である。

つみたてNISAは2037年までの制度であり、つみたてNISA口座で金融商品を購入できるのは2037年までとなる。2018年に購入した金融商品は2037年までの20年間、2037年に購入した金融商品は2056年までの20年間、非課税で保有できることになる。

つみたてNISAの非課税期間20年が終わっても、一般NISAと異なりロールオーバー(新しい年の非課税投資枠に移すこと)はできない。20年の非課税期間が経過すると、つみたてNISAで保有している金融商品は、特定口座や一般口座などの課税口座に移る。これにより、非課税での運用は終了となるが、つみたてNISA口座に保有していた間の値上がり分は課税されない。課税口座へ移った後の分配金や売却益等には課税されることになる。

つみたてNISAの利用対象者は、日本在住で、口座を開設する年の1月1日時点で20歳以上となる人である。

Q2. どのような金融商品が対象か?

A2. 公募株式投資信託とETF(上場投資信託)のうち、長期・積立・分散投資に適した商品

例えば、公募株式投資信託では、販売手数料がゼロ、信託報酬は一定水準以下、信託契約期間が無期限または20年以上、分配頻度が毎月でないこと、などの要件をすべて満たす必要がある。

金融機関は、つみたてNISAの要件を満たす商品を金融庁へ届け出ることで、その商品がつみたてNISA対象商品となる。よって、金融機関によって扱う対象商品は異なる。金融庁へ届けられた商品の総数は、2017年12月時点で百数十程度である。

「負けない投資」のためには、長期・積立・分散投資が重要である。その中の「投資先の分散」をするために対象商品の数を確認しよう。2017年12月6日時点で、つみたてNISA対象商品の投資先別の商品数は、国内株式型が34本、海外株式型が34本、国内・海外の資産複合型が52本、その他が8本となり、これらを組み合わせることで投資先の分散が可能となる。

Q3. 一般NISAを利用しているが、新規つみたてNISA口座を開設できる?

A3. つみたてNISAと一般NISAは、両方で同じ年に金融商品を購入することはできず、どちらを利用するか選ぶ必要がある(なお年ごとにどちらで金融商品を購入するかを変更できる)。

一般NISA口座と新規つみたてNISA口座の金融機関が同じ場合、一般NISAからつみたてNISAへの切り替え手続きが必要になる。

一般NISA口座と新規つみたてNISA口座の金融機関が異なる場合、両方の金融機関に手続きを行う。手続きは次の2ステップになる。

ステップ1. 変更前の金融機関へ、「金融商品取引業者等変更届出書」または「非課税口座廃止届出書」を提出し、「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」を受け取る。

ステップ2. 変更後の金融機関へ、「非課税口座開設届出書」に加え、ステップ1で受け取った「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」を添付し提出する。

手続きの期間は、1月1日から9月30日迄その年の一般NISAとつみたてNISA切り替え手続き時期となり、10月1日から12月末迄は翌年の一般NISAとつみたてNISA切り替え手続き時期となる。

注意すべき点として、その年に一般NISA口座で金融商品を購入している場合、その年は既に一般NISAを利用したことになり年内はつみたてNISAへ切り替えできない。その場合、つみたてNISAへの切り替えは早くて翌年になる。

Q4. 一般NISA口座や課税口座(特定口座、一般口座)に保有している投資信託やETFを、つみたてNISA口座へ移すことはできる?

A4. つみたてNISAで非課税になるのは、つみたてNISA口座で新たに購入した商品。一般NISA口座に保有している投資信託やETFを、つみたてNISA口座へ移すことはできない。課税口座に保有している金融商品も、同様に移すことは不可である。

一般NISA口座や課税口座に保有している金融商品をつみたてNISAの資金として利用したい場合は、それらの口座に保有している金融商品を一旦売却し、つみたてNISA口座で買い直すことになる。

Q5. 今まで一般NISAで投資してきた。来年からつみたてNISAへ切り替える予定だが、今まで一般NISAで購入した株の配当金や売却益はどうなる?

A5. 一般NISAからつみたてNISAへ切り替えても、一般NISAにて購入した株式などの配当金や売却益は、その非課税期間内は非課税となる。一般NISAでは、購入した年の1月1日から5年間が非課税期間となる。

例えば、2017年に一般NISAで株を購入し、2018年からつみたてNISAで積立投資をする場合、一般NISAで購入した株は、2021年12月末まで配当金や売却益が非課税となる。

Q6. つみたてNISAの金融機関を変更する場合、変更前の金融機関でつみたてNISAにて購入した投資信託やETFの分配金や売却益は、いつまで非課税になるの?

A6. 変更前の金融機関のつみたてNISA口座で購入した投資信託やETFの分配金や売却益等は、その非課税期間内は非課税となる。つみたてNISAでは、購入した年の1月1日から20年間が非課税期間となる。

例えば、2018年につみたてNISAで投資信託やETFを購入し、2019年から別の金融機関へつみたてNISAを切り替える場合を考える。この場合、変更前の金融機関で購入した投資信託やETFは、2018年から20年間となる2037年12月末まで分配金や売却益が非課税となる。

Q7. つみたてNISA口座で保有していた金融商品で売却損出が発生した。この損出を課税口座(特定口座、一般口座)と相殺(損益通算)できる?

A7. つみたてNISAでは、投資信託やETFの分配金や売却益などは非課税となるメリットがある。一方、デメリットとして、売却による損失が発生しても、損はないものとされるため、課税口座と相殺(損益通算)はできない。

また、課税口座では可能な「3年間の損失の繰越控除」についても、つみたてNISA口座では利用できない。

Q8. つみたてNISAで購入した投資信託やETFの分配金は非課税になる?

A8. それぞれの分売金により異なる。

投資信託の分配金は、「普通分配金」と「元本払戻金(特別分配金)」がある。普通分配金は、投資信託の運用による収益から払われる利益であり、つみたてNISAで非課税となる。元本払戻金(特別分配金)は、投資した元本の一部払い戻しであり、利益とはみなされず、つみたてNISAに関係なく課税されない。

ETFの分配金を非課税にするには、配当金の受け取り方法として「株式数比例配分方式」を選択する必要があり、手続きが必要となる。この手続きは、分配基準日までに証券会社から証券保管振替機構に取り次ぐ必要があるため、時期的に余裕をもって行いたい。

補足として、「株式数比例配分方式」を選択すると、つみたてNISA口座以外の課税口座に保有する株式の配当金等も「株式数比例配分方式」で受け取ることになるため注意が必要だ。更に、証券会社により異なる受け取り方法を設定することはできないため、複数の証券会社で株を保有している場合、「株式数比例配分方式」を選択すると、他の証券会社の口座にも「株式数比例配分方式」が適用される。

など2009年1月の株券電子化に伴い開設された「特別口座」に株式がある場合などは、「株式数比例配分方式」を利用できない。「株式数比例配分方式」の手続きなどについては、各金融機関に問い合わせていただきたい。

Q9. つみたてNISA口座を開設したが、海外勤務のために日本を離れることになった。海外在住でも「つみたてNISA」は継続できる?

A9.つみたてNISAの対象は日本居住者である。つみたてNISA口座を開設した人が出国により非居住者となる場合、つみたてNISA口座が閉鎖され、つみたてNISAを継続することができなくなる。つみたてNISA口座に保有されている投資信託やETFは、非課税口座へ移され、非課税優遇を受けることができなくなる。

出国し非居住者となる場合は、「出国届出書」を出国日の前日までに、つみたてNISA口座を開設している金融機関へ提出する必要がある。

尚、出国後、2037年までに帰国した場合、手続きをすることで、同じまたは別の金融機関につみたてNISA口座を再開設できる。但し、出国前につみたてNISA口座から非課税口座へ移された投資信託やETFは、帰国後のつみたてNISA口座へ移すことはできない。つまり、帰国後のつみたてNISA口座は、一から積立投資を開始することになる。

Q10. つみたてNISAを利用して10年後に所在地の確認が必要になるが、どのような手続きが必要か?

A10.つみたてNISA口座を開設した日から10年経過した日に、金融機関が口座保有者の所在地を確認することになっている。その手続きは次の2種類がある。

・ 口座保有者が金融機関へ本人確認書類を提出することで、10年経過した日における氏名と住所を告知する。
・ 金融機関が口座保有者へ書類を送付し、口座保有者が10年経過した日における氏名と住所を記載し、それを返信(提出)する。

10年経過した日から1年の間に所在地を確認できなければ、その確認ができるまで、つみたてNISA口座に新たに投資信託やETFを受け入れることができない。住所に変更があれば、口座を開設している金融機関へ速やかに住所の変更を届け出るようにしたい。

なお2回目以降の所在地確認は5年ごとに行われる。(松本雄一、ビジネス・金融アドバイザー)

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