株式や投資信託を購入する時、「このぐらいは儲かるだろう」「儲かったお金で何をしよう」などと期待に胸を膨らませている人も多いことだろう。

投資では利益が発生することもあれば損失を被ることもあり、必ず儲かるわけではない。それは仕方がなく、割り切りも時には必要だ。「損益通算」という制度を活用することで、投資で発生した損失を有効活用できることをご存知だろうか。

損益通算とは

損切り,確定申告
(画像=PIXTA)

株式などを売却して発生して利益や損失は、給与所得や事業所得などとは区別して、株式や投資信託、公社債などの金融商品で税金を計算する「申告分離課税制度」と決められている。税率については、所得税15%と住民税5%を合わせた20%と決められているが、平成25年から49年までは、所得税率に復興特別所得税2.1%分が上乗せされている。

株式を売買して、たとえば、10万円の利益が発生した場合で簡単に考えてみよう。所得税と住民税、復興特別所得税を合計すると申告分離課税の税率は20.315%になるので、10万円×20.315%で2万315円の税金を支払うことになる。2割を超える税金の負担の大きさを実感せざるをえない。

投資で利益が発生するのであれば、税金を支払うことは仕方のないことだろう。しかし、投資を行っていれば、損失が発生するはよくあることだ。そこで、株式などの売買で損失が発生した場合には、利益と損失を合わせて計算することができる「損益通算」を行うことが可能になる。

損益通算では、毎年1月から12月までの譲渡益と譲渡損を通算して計算することができる。含み損が発生している株式などを毎年12月最終日までに売却、いわゆる損切りをした場合には、利益と損失を通算することで利益を減らすことが可能になる。最終的に利益の方が多ければ確定申告を行う必要はあるが、利益が減少すればその分だけ課税される税金の金額も減少することになる。

損益通算を行うことができる対象の金融商品の範囲としては、上場株式や上場投資信託(ETF)、の上場不動産投資信託(REIT)、上場投資証券(ETN)、公募株式投資信託などに加え、公社債投資信託などがある。上場株式などから発生する配当金や分配金、利子なども損益通算の対象になっている。

繰越控除で「譲渡損」を3年間繰り越せる

しかし、いつも利益が多いとは限らず、時には利益よりも損失の方が多くなる場合もある。一年間の譲渡益から譲渡損を控除しきれずに損失額が発生した場合には、確定申告を行うことによって、その譲渡損を最大3年間繰り越すことができる「繰越控除」を行うことができる。

たとえば、2017年に譲渡益から譲渡損を差し引いても50万円の損失金額が発生した場合には、確定申告を行うことによって、その50万円の損失を翌年以降3年間にわたって懲り越すことができるようになる。2018年に100万円の譲渡益が発生した場合には、前年からの譲渡損50万円と相殺できるようになるのだ。

ただし、繰越控除を利用して譲渡損を3年間繰り越すためには、たとえ取引を行わなくても確定申告を行わなければならない。少々面倒ではあるが、利益と損失を相殺できれば、結果支払う税金を減らすことができる。利益が出ていて、かつ含み損が発生している場合には、12月末までに損切りを行っておくことで税金を減らせる効果がある点は覚えておいて損はないだろう。

特定口座と一般口座 戦略的な「損切り」の実施を

ところで、株式などを取引する際の投資用の口座だが、「特定口座(「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」)」と「一般口座」のどちらかを選んで口座を開設したはずだ。

特定口座とは、株式などの売買内容の記録や税金の計算などを金融機関が代行してくれる口座のことで、証券会社などが譲渡損益などを計算した「年間取引報告書」を送ってくれる。源泉徴収ありの特定口座を選択すれば、証券会社などが税金を源泉徴収してくれるので納税の手間を省ける他、確定申告を行う必要がない。一方、源泉徴収なしの特定口座を選択した場合には、年間取引報告書をもとに確定申告を行う必要がある。

しかし、複数の金融機関で株式などを売買した場合には、損失が発生する口座も出てくる。この場合には、源泉徴収ありの特定口座を選択していても、確定申告を行うことで損益通算と繰越控除を行うことができる。また、一般口座を選択して取引を行った場合には、年間取引報告書のような報告書は交付されないので、自ら計算して確定申告を行わなければならないので面倒ではある。

1月から12月までであれば、譲渡益と譲渡損を通算して計算することができる。特定口座でも一般口座でも、損益通算を行ってもなお譲渡損が発生した場合には、繰越控除を行うことでその譲渡損を最大3年間繰り越すことができる。損切りを行うことを考えている場合には、損切りを行う時期や、支払う税金についても考えて、お得に投資を行いたいものである。

横山利香(よこやまりか)
国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。ファイナンシャル・プランナー。相続士。WAFP関東理事。「会社四季報オンライン」や「All About株式戦略マル秘レポート」での連載や、ヤフーファイナンスの「株価予想」でもマーケットコメントを執筆する等、株式投資や不動産投資といった投資や資産運用をテーマに執筆、メルマガ発行、講演活動、株塾を行う。公式サイト「横山利香の資産運用コンシェルジュ