結果の概要:成長率は在庫、外需の押下げにより、前期、市場予想を下回る
1月26日、米商務省の経済分析局(BEA)は10-12月期のGDP統計(1次速報値)を公表した。10-12月期の実質GDP成長率(以下、成長率)は、季節調整済の前期比年率(*1)で+2.6%となり、7-9月期(同+3.2%)から伸びが鈍化したほか、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の同+3.0%も下回った(図表1・2)。この結果、17年の成長率は前年比+2.3%となり、16年の同+1.5%から加速した。
10-12月期の成長率を需要項目別にみると、個人消費が前期比年率+3.8%(前期:+2.2%)と前期から大幅に伸びが加速したほか、民間設備投資が+6.8%(前期:+4.7%)、政府支出も+3.0%(前期:+0.7%)といずれも前期から伸びが加速した(図表2)。また、住宅投資は+11.6%(前期:▲4.7%)と3期ぶりにプラスに転じた。
一方、在庫投資の成長率寄与度が▲0.67%ポイント(前期:+0.79%ポイント)となったほか、外需の成長率寄与度も▲1.13%ポイント(前期:+0.36%ポイント)といずれも前期から大幅なマイナス寄与に転じ、合計で▲1.8%ポイント成長率を押下げた。
この結果、在庫投資と外需を除いた国内最終需要は前期比年率+4.3%(前期:+1.9%)と、前期から伸びが大幅に加速したほか、14年7-9月期(同+4.4%)以来の伸びとなった。
当期の成長率は前期から伸びが鈍化したものの、国内最終需要の伸びにみられるように、在庫や外需によって大幅に成長率が押上げられていた前期に比べて、経済の基調自体は寧ろ強くなっていることを示す結果と言えよう。
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(*1)以降、本稿では特に断りの無い限り季節調整済の実質値を指すこととする。
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結果の詳細:
(個人消費・個人所得)財、サービスともに前期から伸びが加速
10-12月期の個人消費は、財消費が前期比年率+8.2%(前期:+4.5%)、サービス消費が+1.8%(前期:+1.1%)と、いずれも前期から伸びが加速した(図表3)。財消費のうち、耐久消費財は+14.2%(前期:+8.6%)と2桁の伸びとなった。自動車・自動車部品が+16.7%(前期:+12.2%)と2期連続で2桁の伸びとなったほか、家具・家電が+15.6%(前期:+8.8%)、娯楽財・スポーツカーも+13.0%(前期+0.8%)と軒並み2桁の伸びとなった。
一方、非耐久財も+5.2%(前期:+2.3%)と前期から伸びが加速した。ガソリン・エネルギーが▲2.6%(前期:▲2.3%)と2期連続でマイナスとなったものの、衣料・靴が+13.2%(前期:▲0.3%)と前期から大幅に増加したことが大きい。
サービス消費では、娯楽サービスが▲0.1%(前期:+0.3%)とマイナスに転じたほか、外食・宿泊が+0.4%(前期:+2.0%)、金融サービスも+0.9%(前期:+2.4%)と前期から伸びが鈍化した。しかしながら、住宅・公共料金が+2.0%(前期:横這い)と前期から伸びが加速し、全体を押上げた。
一方、実質可処分所得は前期比年率+1.1%(前期:+0.5%)と前期から伸びが加速したものの、個人消費の伸びを大幅に下回った(図表4)。この結果、貯蓄率は2.6%(前期:3.3%)と前期から低下した。
(民間投資)設備機器投資が2期連続で2桁の伸び
10-12月期の民間設備投資の内訳をみると、知的財産投資が前期比年率+4.5%(前期:+5.2%)と前期から伸びが鈍化したものの、建設投資が+1.4%(前期:▲7.0%)と前期からプラスに転じたほか、設備機器投資が+11.4%(前期:+10.8%)と2期連続で2桁の伸びとなった(図表5)。
建設投資では、原油掘削を含む資源関連が+17.0%(前期:+22.6%)と2桁の伸びを維持したほか、製造業関連が▲10.9%(前期:▲33.6%)と前期からマイナス幅が縮小した。
設備機器投資では、産業設備が+2.6%(前期:+7.6%)と前期から伸びが鈍化したものの、情報処理関連が+9.1%(前期:+10.9%)と高い伸びを維持したほか、輸送機器が+16.0%(前期:+14.9%)と前期から伸びが加速した。
一方、住宅投資では、集合住宅が前期比年率▲3.8%(前期:▲12.3%)と3期連続のマイナスとなったものの、戸建てが+9.5%(前期:+3.1%)と前期から伸びが加速し、成長を押上げた。
(政府支出)連邦、州・地方政府ともに前期から伸びが加速
政府支出の内訳をみると、連邦政府支出が前期比年率+3.5%(前期:+1.3%)と前期から伸びが加速したほか、州・地方政府も+2.6%(前期:+0.2%)と前期から伸びが加速した(図表6)。
連邦政府支出では、国防関連支出が+6.0%(前期:+2.4%)と前期から伸びが加速したほか、非国防支出が+0.1%(前期:▲0.2%)と4期ぶりにプラスに転じた。
(貿易)輸入の大幅な増加が純輸出減少の要因
10-12月期の輸出入の内訳をみると、輸出が前期比年率+6.9%(前期:+2.1%)と前期から伸びが加速した一方、輸入が+13.9%(前期:▲0.7%)と前期から大幅なプラスに転じており、当期は主に輸入の増加が純輸出の減少に寄与したことが分かる(図表7、8)。
輸出を仔細にみると、財輸出が前期比年率+12.6%(前期:+1.8%)と前期から大幅に伸びが加速した一方、サービス輸出は▲3.3%(前期:+2.5%)とこちらは16年10-12月期以来のマイナスに転じた。財輸出では、飲食料が▲35.2%(前期:+7.4%)と前期からマイナスに転じたほか、自動車関連を除く資本財も+6.4%(前期:+15.2%)と前期から伸びが鈍化した。一方、自動車関連が+9.5%(前期:▲4.9%)、消費財が+14.6%(前期:▲2.6%)、工業用原料も+34.2%(前期:▲7.4%)と前期からプラスに転じた。
輸入では、財輸入が+16.8%(前期:▲0.2%)、サービス輸入が+1.7%(前期:▲2.6%)といずれも前期からプラスに転じた。財輸入では石油製品が+13.8%(前期:▲13.4%)、自動車関連が+8.1%(前期:▲0.6%)、消費財が+35.6%(前期:▲6.5%)といずれも3期ぶりにプラスに転じたほか、自動車を除く資本財が+13.1%(前期:+13.2%)と前期に続き高い伸びを維持した。
(物価・名目値)PCE価格指数、コア指数ともに前年同期比で3期ぶりに伸びが加速
10-12月期のGDP価格指数は、前期比年率+2.4%(前期:+2.1%)と前期から伸びが加速、市場予想(同+2.3%)も上回った。この結果、名目GDP成長率は前期比年率+5.0%(前期:同+5.3%)と14年7-9月期(同+7.1%)以来となった前期から小幅ながら伸びが鈍化した(図表9)。
一方、FRBが物価の指標として注目するPCE価格指数(*2)は、前期比年率+2.8%、前年同期比+1.7%(前期:+1.5%、+1.5%)と前期比、および前年同期比ともに前期から伸びが加速した(図表10)。さらに、食料品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数も前期比年率+1.9%、前年同期比+1.5%(前期:+1.3%、+1.4%)と、総合指数同様、いずれも前期から伸びが加速した。
この結果、PCE価格指数、コア指数(前年同期比)ともにFRBの物価目標(2%)を下回っているものの、3期ぶりにインフレ率が上昇に転じた。足元で原油価格が上昇しているほか、労働市場の回復も持続していることから、当面は物価の緩やかな上昇が見込まれる。
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(*2)現在、FOMCのメンバーは四半期に一度物価見通しを公表しており、そこで物価の指標として採用されている指数がPCE価格指数とコアPCE価格指数である。見通しは年単位で、各年の10-12月期における前年同期比が公表されている。
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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員
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