マイホームを買った人は確定申告をすることで、「住宅ローン減税」の対象となり還付金を得ることができる。これから家を買おうという人もいるだろう。どんな手続きや書類を準備したらいいのだろうか?

そもそも確定申告って何?

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(画像=PIXTA)

確定申告とは、所得にかかる税金の額を計算し、源泉徴収された税金や予定納税で納めた税金などとの過不足を精算するための手続きのことだ。

サラリーマンはたいてい自ら確定申告をする必要はない。あくまで「一定の要件」に該当する場合のみだ。これは例えば「給与所得が2000万円を超えている場合」、「副業や株式売買など、会社の給与以外から20万円超の所得金額」があるといったケースである。

「確定申告」のメリット 「住宅ローン控除」とは?

もしマイホームを購入した場合は、「確定申告」をすることで税金が減税される可能性がある。これを「住宅ローン控除」といい、最大で10年間にわたって減税を受けることができる。

「住宅ローン控除」とは「住宅借入金等特別控除」のことである。住宅を購入した人であれば、その次の年の1月から還付申告を行うことができる。

住宅ローン控除を受けることで、毎年の住宅ローン残高の1%を10年間、所得税から控除されることになる。所得税で控除しきれない分は住民税からも一部控除される。

そして制度の対象となる住宅ローンの最高額(残額)は4000万円以下であるため、1年間で控除される最高額は40万円以下、10年間では最大400万円となる(すべてがそのまま還付されるわけではない)。

また購入した住宅が優良住宅や低炭素住宅に該当する場合は、住宅ローンの対象上限額が5000万円まで引き上げられる。

「住宅ローン控除」の対象物件や要件とは?

マイホームを購入したサラリーマンが「確定申告」をした場合、「住宅ローン控除」を受けることができる。ではどのような住宅が「住宅ローン控除」の対象となるのか。

●対象住宅は3通り

住宅ローン控除の対象住宅は次の通りだ。

(1)新築住宅
(2)中古住宅
(3)増築や一定規模以上の修繕・模様替え、省エネ・バリアフリー改修(リフォーム)

これらは住宅ローン減税の対象となり、その恩恵を受けることができる。住宅タイプごとの要件は次の通りだ。

(1)新築住宅の要件(一戸建て・マンション)

新築住宅で住宅ローン控除を受けるためには、まず新築した日から6カ月以内に入居している必要がある。

新築した日から6カ月以内に入居したことを証明するために、住民票の写しを確定申告の際に提出することになる。

実際には入居していたが、事情があって住民票上では新築後6カ月よりも遅い入居日となっている場合は、電気料金やガス料金の領収証、引っ越し月日が明記されている運送業者の請求書などの書類で証明することも可能だ。

また借り入れした人の合計所得金額は3000万円以下で、ローンの返済期間は10年以上でなければならない。さらに登記されている床面積は50平方m以上あること、そして床面面積の2分の1以上が居住用であることも条件である。

(2)中古住宅の要件(一戸建て・マンション)

中古物件の場合は、新築物件の要件に加えて次の要件を満たす必要がある。

「鉄筋コンクリート造などの耐火建築物」を取得した場合、取得時点で築25年以内であること。「木造住宅などの耐火建築物以外」は取得の時点で築20年以内であることだ。

もしこれらの築年数を超えていても、「耐震基準適合証明の取得」、「既存住宅売買瑕疵保険の加入」、「住宅性能評価書の取得」のいずれかを満たせば、築年数の要件が緩和される。

しかし、「既存住宅売買瑕疵保険の加入」、「住宅性能評価の取得」の二つにおいては耐震基準に適合していなければ保険の加入や、評価書の取得ができないため、ここでは「耐震基準適合証明」の取得をして、手続きを進めることを前提とする。

耐震基準適合証明とは、改修工事を行うことで、現行の耐震基準に適合しているという証明を受け上記の築後年数要件を緩和するというものである。

「耐震基準適合証明書の取得」は、住宅の引き渡し前でも後でも申請を行うことができるが、タイミングを誤れば、住宅ローン控除を受けられないので注意が必要である。

●住宅引き渡し前の「耐震基準適合証明」取得手順

物件の引き渡し(所有権移転)前までに耐震診断や必要に応じて改修工事を実施し、売り主が申請者となる耐震基準適合証明書を取得する流れは次の通りだ。

売買契約

耐震診断受診

改修工事

証明書手続き

引き渡し

入居

翌年に住宅ローン控除手続き

注意点としては、所有権移転前に「耐震診断」を実施する場合、売り主の許可が必要なことがあることだ。許可が得られない場合は住宅引き渡し後に行う。

「耐震診断」の結果、現行の基準に満たない場合は「改修工事」が必要で、所有権移転前に「改修工事」を実施する場合も売り主の許可が必要だ。

●住宅引き渡し後の「耐震基準適合証明」取得手順

売買契約

耐震診断受診

証明書仮申請

引き渡し

改修工事

証明書類取得

入居

翌年に住宅ローン控除手続き

上のような手順を踏まえて、取引を進めなければ順番を間違えると住宅ローン控除の対象外になる恐れがある。中古住宅購入時には、不動産会社に早めに相談すべきである。

(3)増築や一定規模以上の修繕・模様替え、省エネ・バリアフリー改修(リフォーム)について

住宅ローン控除はリフォームの場合も適用されるので要件をみてみよう。

リフォームの場合も新築住宅の要件に加えて、工事費用が100万円以上であることや自分で所有して居住する住宅であること、リフォーム費用の2分の1以上が居住部分の費用であること。一定の省エネリフォーム、バリアフリーリフォーム、耐震リフォームであることが挙げられる。

このように「住宅ローン控除」の手続きは複雑である。特に中古物件の購入、リフォーム工事費についての減税は手順や要件についてよく確認し専門家のアドバイスを受けながら検討するのがベストかもしれない。

確定申告はいつ行うのか? どこでするのか?

確定申告の期間は、翌年の2月16日から3月15日である。ただし、住宅ローン控除は還付申告に該当するため1月から行うことができる。

確定申告は自分の住んでいる地域を管轄する税務署で手続きする。郵送やインターネットでも手続きが可能である。初めての場合は、税務署の確定申告相談窓口に早めに問い合わせるといいだろう。基本的に平日のみだが、繁忙期である2月には相談会や申告書の受け付けを休日に開催する税務署もあるため、最寄りの税務署に相談してみるといいだろう。

必要書類は最大で11種

サラリーマンなど給与所得のある人が確定申告して、住宅ローン控除を受ける場合の準備書類は次の通りである。

●(1)確定申告書A

こちらは最寄りの税務署で配布している。国税庁のサイトからもダウンロード可能だ。確定申告書には「A」と「B」があるが、会社員は「A」を使う。

●(2)住宅借入金等特別控除額の計算明細書

これも税務署または国税庁のサイトからも入手可能である。

●(3)住宅ローンの年末残高証明書

住宅ローンを借り入れした金融機関から送付されたものを準備。

●(4)源泉徴収票

自分が勤めている会社の総務課などに問い合わせして発行してもらう。

●(5)住民票の写し

住民登録している市町村の役場のほか、コンビニでも入手できる。役場においては、住民戸籍課に出向いて取得することになる。本人が出向く場合は、所定の交付用紙に記入して、免許証等の確認、その後交付手数料を支払い受け取る。

(1)〜(5)はどのタイプの住宅でも必須書類である。次の(6)〜(11)の書類は自分の購入した住宅の形態に合わせて取得をする必要がある。

●(6)家屋の登記事項証明書

最寄りの法務局から入手する。法務局にある交付申請書に記入して、印紙を購入すればすぐに取得できる。

●(7)家屋の請負契約書、売買契約書の写し等

住宅購入時に契約締結し、発行されているものを準備する。

●(8)敷地の登記事項証明書

家屋と同様、最寄りの法務局から入手する。

●(9)敷地の売買契約書の写し等

敷地購入時に契約締結し、発行されているものを準備する。

●(10)耐震基準に適合した家屋である証明書(中古住宅の場合)

●(11)その他:マイナンバーに関する書類

マイナンバーカードまたはマイナンバー通知カード、マイナンバーの記載された住民票の写しに加えて、運転免許証・パスポートなどが必要。

提出書類は、購入した住宅が家屋のみか、敷地も含むかなどの条件ごとに異なる。パターンごとに提出書類を以下にまとめたので、これに合わせて提出書類を準備する。

●敷地の取得に係る住宅借入金等がない場合(家屋の購入のみ)の書類

・必要事項を記載した確定申告書
・住宅借入金等特別控除額の計算明細書
・住宅ローンの年末残高等証明書
(2カ所以上から交付を受けている場合は、その全ての証明書)
・家屋の登記事項証明書
・請負契約書の写し
・売買契約書の写し

●敷地の取得に係る住宅借入金等がある場合

上の書類に加えて次の書類を提出する。

・敷地の登記事項証明書
・売買契約書の写しなど

なお申告書の作成については、自分で作成した経験がない場合は難しく感じるかもしれない。悩むくらいなら、最初から最寄りの税務署の相談窓口で作成して提出するのがいいだろう。電子申請や郵送も可能だが、手直しがあった場合、訂正の手間がかかるため、初心者は窓口で指導を受けながら作成したほうがいい。

まず国税庁のWebサイトから書式をダウンロードして、できる部分まで記入し、残りは相談窓口で聞くのが効率的だ。

2年目以降は勤め先の会社にて、年末調整で処理されるため楽ではあるが、1年目は税務署の指導を受けて確定申告を進める必要がある。

還付金の受け取り方法は2種類

●自分の預金口座への振り込み

振り込みを選択する場合には申告書に指定の金融機関の口座情報を記入する。

●郵便局での現金受け取り

郵便局での受け取りでは、後日送付される通知書と身分証明書を持参して窓口で受け取る。

確定申告で住宅ローン控除を受ける際の注意点や陥りがちな勘違いをまとめてみた。適切な手順を踏まなければせっかくの控除を受けられなくなるため気を付ける必要がある。

注意点1 転勤や転居が決まって住み続けられない場合

住宅ローン控除の適用は原則、転勤などで転居してしまった場合受けられなくなる。

国税庁のWebサイトでは次のように述べられている。「新築又は取得の日から6か月以内に居住の用に供し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること」

つまり、取得したマイホームに住み続けていないと控除は受けられない。しかし、以下のような例外に該当すれば控除を受けることができる。

●例外1

単身赴任の場合は、残された家族が住み続ければ「引き続いて住んでいること」とみなされ、引き続き住宅ローン控除の対象となる。ただし、海外赴任の場合は適用外。

●例外2

再適用の制度を利用することも可能だ。これは転居後に再び控除を受けていた住宅に戻ってきたときに控除期間が残っていた場合に限り、住宅ローン控除を再度受けられるというものだ。

注意点2 買い替えの場合は住宅ローン控除が使えないことがある

住宅を買い替えた場合、「住宅ローン控除」が使えないケースがある。

購入した住宅を売却するときに、譲渡益(売却価格−取得費−仲介手数料などの譲渡費用)が出る場合、譲渡益から3000万円を控除できるという特例がある。

この場合、新たに購入する住宅で「住宅ローン控除」と売却益に対する「3000万円控除」は併用できないのである。

どちらの制度を利用すべきか個人により異なるため十分に検討してから制度を利用するのが得策といえる。

注意点3 親族からの資金援助を受けた場合

マイホーム購入にあたり、一部資金を親族から贈与を受けた場合は、ローン額そのままが控除の対象とならないことがある。

例えば4000万円の家を購入する。諸経費や引っ越し費用など込みで4300万円かかるので親族から500万円の資金援助を受け、頭金500万円を払い、3800万円のローンを組んだとする。しかしこの場合、3800万円の借入金額としてローン控除は受けられず、家の価格4000万円から贈与額500万円を差し引いた3500万円がその対象額と算定される。

対策としては一括で贈与を受けずに、通常の贈与として非課税範囲である年間110万円ごとに受け取るか、住宅資金として認められている200万円までの金額を受け取るなどの方法を使うといいだろう。

以上のように住宅を購入して、確定申告を行い、住宅ローン控除を受けるためには複雑な手順があるため、住宅購入時に担当者へ相談をしながら進めていくことでスムーズに控除の手続きが可能になる。(ZUU online編集部)