銀行預金や個人向け国債などは、株式に比べて相対的に安全性が高いため、その分、株式に比べてリターン (金利) が低い。そのため、銀行預金や個人向け国債に近い安全性を持ちつつ、それらより金利が高い傾向にある「個人向け社債」が注目されている。 しかし、個人向け社債にもリスクはある。この記事では、今注目されている個人向け社債について説明しよう。
個人向け社債とは
そもそも社債とは、企業が設備投資などの事業資金を借りるために発行する債券のことだ。発行した企業にとって債券は借金のようなものである。発行する時に返済する日 (償還日) や金利 (利率) 、利子 (クーポン) の支払日が決まっている。最終的に返済する日まで定期的に利子が支払われ、満期時に額面金額 (元本) が償還される。 多くの社債は機関投資家向けに発行される。少なくとも購入単位は1億円単位だが、個人向け社債は、そんな社債を個人投資家でも購入しやすいように、購入単位を10万円や100万円にして発行しているわけだ。
社債の種類
社債には、大きく分けて公募債と私募債がある。公募債は会社法や金融商品取引法などの法令を守り、厳しい手続きを通ったもので、主に3種類ある。
1つ目は「普通社債」と呼ばれる一般的な社債だ。2つ目は「転換社債」で、債券としての働きと株式としての働きの両方を持ち、債券の保有中に株価の値上がりが期待できれば、株式に転換することができる。3つ目は「劣後債」だ。発行体が倒産した時の返済順位が低いことが特徴だ。
私募債は、信用度が低い会社でも発行できる社債のことだ。金融機関や保証機関が発行し保証する私募債と、企業が発行し、知人や取引先など少人数を対象に募集する少人数私募債に分かれる。少人数私募債は、募集する団体が法人であることや社債を購入する人が50人未満であることなど、一定の条件を全て満たしていれば発行できる。
社債の2つのリスクとは
株式よりリスクが低いとはいえ、社債にもリスクがある。社債を購入するときに注意したい2つのリスクを説明する。
● 信用リスク
まず気をつけなければいけないのが、信用リスクである。魅力的な条件の社債を購入しても、発行した企業が債務不履行 (デフォルト) になったら、社債の元本や利息の支払いが行われないことがある。社債の信用リスクを自分で確認するためには、社債を発行した企業の目論見書や有価証券報告書、適時開示情報などに記載されている発行企業の事業内容や財務状況を確認することが必要だ。
また、多くの債券は格付機関が格付けを付与している。格付けとは、社債の発行者が利息や元本を予定通り支払えるかという信用度を評価したもので、信用度を測る一定の目安になっている。発行企業の格付けが低い (高い) と、債券の利回りが高く (低く) なる傾向がある。
● 価格変動リスク (途中換金リスク)
社債の市場価格は、景気動向、金融政策、為替・金利等などの影響を受けて、毎日変わる。特に金利変動が与える影響は大きく、一般的に、金利が上昇すると債券単価が下がり、逆に、金利が低下すると債券単価は上がる。価格変動するため、途中売却時に元本割れするリスクがある。
そのため、社債を購入したら、基本的には償還日まで持つものと考えておきたい。一時的に債券単価が下がっても償還まで保有すれば、債務不履行にならない限り、元金は戻ってくる。また、債券の期間が長ければ、利率は高くなる傾向がある。しかし、償還までの期間が長い債券を購入するということは、その間ずっと資金を固定してしまうということにも注意が必要だ。
気をつけたい「劣後債」と「私募債」
個人向け社債のなかにも劣後債や私募債が存在する。一般的に、劣後債は返済の順位が低いこと、私募債は流動性が低いことに対するリスクへの見返りとして金利が高く設定されているが、利率だけを見るのではなく、それぞれの特徴をよく理解したうえで購入したい。 個人向け社債を含め、社債は、定期的に利子を受け取れて、満期時は元本が返ってくる金融商品だ。商品性を理解して、自分のリスク許容度に応じて運用すれば、個人投資家の資産運用の幅を広げてくれるだろう。(提供:大和ネクスト銀行)
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