一般に節税商品として利用されているオペレーティング・リースは、一時的に大きな利益が出たときに減価償却費で相殺できるため、決算対策として有効だといわれています。ただし、投資した際の会計処理や税務処理にはあまりなじみがないという方が多いのではないでしょうか。

以下では、オペレーティング・リースのスキーム(仕組み)とそれに適した会計処理および税務処理について紹介します。

オペレーティング・リースのスキームとは

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(写真=PIXTA)

オペレーティング・リースは「商法上の匿名組合」や「民法上の任意組合」を活用して、投資家からの出資と金融機関からの融資を受け、その資金で航空機、船舶、コンテナなどの大型資産を購入するものです。

例えば、購入した資産が航空機である場合、その航空機を航空会社などにリースすることにより収益を生み、組合事業の損益を投資家に分配するという仕組みになっています。

法人の決算対策としてよく利用されている商品は匿名組合をもとにしたオペレーティング・リースです。匿名組合は「営業者」と「匿名組合員」との間で締結される商法上の契約です。

通常、オペレーティング・リース商品においては、投資家が「匿名組合員」として出資を行い、その資金をもとに運営会社(リース会社の子会社など)が「営業者」として事業を行います。

オペレーティング・リースの会計処理

オペレーティング・リースの会計処理を考えるにあたっては、匿名組合への出資の法的性格を明らかにする必要があります。この点、オペレーティング・リースにおける匿名組合出資は、金融商品取引法上、有価証券とみなされます(金融商品取引法2条2項5号)。

したがって、購入した航空機などの固定資産や金融機関からの借入金などはあくまで匿名組合の資産および負債、受取リース料や減価償却費などはあくまで匿名組合の収益および費用と考えます。

匿名組合員である法人の側では、オペレーティング・リースへの投資額を「投資有価証券」や「出資金」などの勘定科目で資産に計上し、匿名組合の事業から分配される利益または損失は、法人の損益として認識すると同時に投資額に加減する方法がとられます。

オペレーティング・リースの税務処理

投資している組合員が事業にも積極的に関与する「民法上の任意組合」などでは、事業で発生した損益は、組合を通り越して組合員に帰属するものと考えられ、直接、組合員に対して課税がなされます。このような課税方法は「パス・スルー(導管性)課税」と呼ばれています。

これに対して、「商法上の匿名組合」を活用したオペレーティング・リースでは、事業で発生した損益は基本的に匿名組合の営業者に帰属します。つまり、同じ組合事業でありながら、「民法上の任意組合」であれば、組合をスルーして組合員に課税がなされる一方で、「商法上の匿名組合」であれば、組合をスルーせず、組合の営業者に課税されることになります。

ただし、「商法上の匿名組合」でも、匿名組合契約によって分配される利益または損失の額は投資者である法人の益金または損金として処理することになっています(法人税基本通達14-1-3)。つまり、これによって、法人はリース期間の前半で生じた損失を取り込んで、節税に役立てることができるわけです。

ここで注意すべき点が2つあります。1つは、法人の益金または損金に算入する時期です。これについては匿名組合の計算期間の末日を基準とします。つまり、計算期間の末日が法人の決算期末より前に到来する場合には、その決算期の損益に反映されることになります。

もう1つは、分配された損失の累計額が投資額を上回る場合には、法人の損金にすることができない点です。かつて、多額の借入金を利用して航空機などを購入し、投資額を上回る損金を計上することのできるレバレッジドリースという節税商品が流行したことがあります。このような過度の節税を防止する目的で、2005年度の税制改正において損金計上額を投資額の範囲に制限する措置が設けられました(租税特別措置法67条の12)。

会計処理と税務処理の違いに注意

以上のように、会計処理でも税務処理でも、匿名組合から分配された利益や損失を法人の損益として処理するという発想では共通しています。

ただし、税務上は投資額を上回る損金を計上することができないので、その点には注意する必要があります。決算上の処理として投資額を上回る損失を計上している場合には、法人税申告書で加算調整がなされることになります。(提供:企業オーナーonline

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