結果の概要:名目個人所得、消費支出ともに市場予想に一致

米個人所得・消費支出
(画像=PIXTA)

3月29日、米商務省の経済分析局(BEA)は2月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.4%(前月値:+0.4%)となり、前月、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%に一致した。個人消費支出(名目値)も前月比+0.2%(前月値:+0.2%)と、前月、市場予想(+0.2%)に一致した(図表1)。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は前月比横這い(前月改定値:▲0.2%)と、こちらは▲0.1%から下方修正された前月を上回ったものの、市場予想(+0.1%)は下回った(図表5)。貯蓄率(1)は3.4%(前月:3.2%)と前月から上昇した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.2%(前月:+0.4%)と前月から伸びが鈍化、市場予想(+0.2%)には一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数も、前月比+0.2%(前月値:+0.3%)と、こちらも前月から伸びが鈍化、市場予想(+0.2%)に一致した(図表6)。前年同月比では、総合指数が+1.8%(前月値:+1.7%)と前月から伸びが加速、市場予想(+1.7%)も上回った。コア指数は+1.6%(前月値:+1.5%)と、こちらも前月から伸びが加速したものの、市場予想(+1.6%)に一致した(図表7)。

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(1)可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。
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結果の評価:前月に続き、所得対比で消費の弱い状況が持続

2月の名目個人消費(前月比)は、1月に続き2ヵ月連続で堅調な所得の伸びを下回った。この結果、貯蓄率は2ヵ月連続で上昇し、17年8月(3.5%)以来の水準に改善した(図表1)。

米個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

2月以降、株式市場が大幅に下落するなど資本市場には不安定な動きがみられるものの、雇用が堅調に伸びているほか、最近発表された消費者センチメントは、資本市場の消費マインドへの影響は限定的に留まっている可能性を示唆していることから、今後消費の伸びは、より所得の伸びを反映した水準に回復してくるとみられる。

一方、物価は前月比では総合指数、コア指数ともに高い伸びとなった前月は下回ったものの、物価上昇圧力が高まっていることを示した。実際、前年同月比では物価目標(2%)は下回っているものの、総合指数、コア指数ともに前月から伸びが加速した。また、携帯電話会社が料金プランを変更した影響で物価が▲0.2%ポイント超押下げられた昨年の反動で、来月以降は+0.2%程度の押し上げが見込まれることもあって、今後物価の伸びはさらに加速しよう。

所得動向:可処分所得は堅調も前月から伸びは鈍化

個人所得の内訳をみると賃金・給与が前月比+0.5%(前月:+0.6%)と堅調な伸びが持続しているほか、利息・配当収入が+0.3%(前月:▲0.2%)と、前月のマイナスから回復した(図表2)。一方、前月に高い伸びとなった移転所得は横這い(前月:+1.3%)と前月から大幅に鈍化した。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は+0.4%(前月:+1.0%)と、堅調な伸びを維持しているものの、前月から伸びは鈍化した(図表3)。これは税負担が+0.7%(前月:▲3.2%)と、年初からの減税実施に伴い大幅に減少した前月の反動とみられる。一方、価格変動の影響を除いた実質ベースも前月比+0.2%(前月:+0.6%)と、前月から伸びが鈍化した。

米個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

消費動向:非耐久財の落ち込みから財消費が2ヵ月連続で減少

名目個人消費(前月比)は、サービス消費が+0.3%(前月:+0.3%)と前月並みの伸びを維持した一方、財消費は▲0.1%(前月:▲0.2%)と前月からマイナス幅は縮小したものの、2ヵ月連続でマイナスとなった(図表4)。

財消費では、非耐久財が▲0.2%(前月:+0.6%)と前月からマイナスに転じたのが響いた。食料・飲料が▲0.3%(前月:▲0.3%)と2ヵ月連続でマイナスとなったほか、ガソリン・エネルギーが▲2.1%(前月:+4.8%)と高い伸びとなった前月の反動もあってマイナスに転じたことが大きい。

一方、耐久財は+0.2%(前月:▲1.5%)とこちらは前月からプラスに転じた。自動車・自動車部門が▲0.7%(前月:▲3.6%)、家具・家電も▲0.1%(前月:▲0.2%)と前月からマイナス幅が縮小したほか、娯楽財・スポーツカーが+0.5%(前月:▲1.1%)とプラスに転じて耐久財消費を押上げた。

サービス消費では、住宅・公共料金が▲0.4%(前月:+0.1%)と前月からマイナスに転じたものの、金融・保険が+1.3%(前月:+1.0%)と前月から伸びが加速したほか、娯楽が+0.9%(前月:▲0.8%)、外食・宿泊が+0.2%(前月:▲0.1%)と前月からプラスに転じるなどまちまちの動きとなった。

米個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

価格指数:エネルギー価格は前月比では物価押下げも、前年同月比での伸びは加速

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲0.1%(前月:+3.0%)と前月からマイナスに転じ物価を押下げた(図表6)。一方、食料品価格指数は▲0.1%(前月:+0.1%)とこちらも3ヵ月ぶりにマイナスに転じた。

前年同月比では、エネルギー価格指数が+7.2%(前月:+5.9%)と前月から伸びが加速した(図表7)。エネルギー価格は16年11月以降、物価を押上げる状況が持続している。最後に食料品価格指数は+0.7%(前月:+0.9%)と、こちらも8ヵ月連続のプラスとなっているものの、物価上昇圧力はエネルギー価格に比べて落ち着いた状況となっている。

米個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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