2ヵ月ぶりの上昇も、1月の落ち込みを取り戻せず
経済産業省が3月30日に公表した鉱工業指数によると、18年2月の鉱工業生産指数は前月比4.1%(1月:同▲6.8%)と2ヵ月ぶりに上昇したが、事前の市場予想(QUICK集計:前月比5.0%、当社予想は同5.7%)を下回る結果となった。出荷指数は前月比2.2%と2ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比0.9%と4ヵ月ぶりに上昇した。
2月の生産は高めの伸びとなったが、1月の落ち込みを取り戻すまでには至らなかった。1月に続き大雪の影響で一部の工場が操業停止となったことが生産を下押ししたとみられる。
2月の生産を業種別に見ると、輸送機械が1月の急低下(前月比▲14.3%)の反動から前月比10.3%と二桁の伸びとなったほか、電気機械(同6.1%)、電子部品・デバイス(同4.8%)、はん用・生産用・業務用機械(同3.6%)も高い伸びとなったが、いずれも1月の落ち込みに比べて上昇幅は小さかった。
速報段階で公表される15業種のうち、11業種が前月比で上昇、3業種が低下した(1業種が横ばい)。
なお、鉱工業生産指数は、2月確報公表時(4/17)に前年の年間補正、季節調整のかけ直しが実施されるため、1月、2月の振れは事後的に均される可能性があることは念頭に置いておく必要があるだろう。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は17年10-12月期の前期比4.3%の後、18年1月が前月比▲5.2%、2月が同▲1.3%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は17年10-12月期の前期比0.8%の後、18年1月が前月比▲9.2%、2月が同1.8%となった。1、2月の平均を10-12月期と比較すると、資本財(除く輸送機械)は▲2.3%、建設財は▲4.9%低い水準にある。
17年10-12月期のGDP統計の設備投資は前期比1.0%と5四半期連続で増加した。企業収益の大幅増加に伴う潤沢なキャッシュフローを背景とした設備投資の回復基調は維持されているが、18年1-3月期はいったん足踏みとなる可能性が出てきた。
消費財出荷指数は17年10-12月期の前期比0.3%の後、18年1月が前月比▲6.0%、2月が同5.3%となった。2月は耐久消費財が前月比11.9%(1月:同▲11.4%)の高い伸びとなったが、非耐久消費財は前月比▲0.7%(1月:同0.2%)と4ヵ月ぶりに低下した。
17年10-12月期のGDP統計の民間消費は前期比0.5%の増加となったが、物価上昇による実質所得の低下や株価下落に伴う消費者マインドの弱含みなどから、18年1-3月期には伸びが低下する可能性が高いだろう。
1-3月期は8四半期ぶりの減産が確実に
製造工業生産予測指数は、18年3月が前月比0.9%、4月が同5.2%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(2月)、予測修正率(3月)はそれぞれ▲2.7%、0.9%であった。
実現率が1月の▲3.7%に続き大幅なマイナスとなったことは大雪の影響が大きいとみられるため、それほど悲観する必要はない。一方、3月の予測指数の伸びは前月時点のマイナスからプラスに転じたが、2月実績が下振れたことを踏まえれば強い数字とは言えない。
18年2月の生産指数を3月の予測指数で先延ばしすると、18年1-3月期は前期比▲1.9%となり、8四半期ぶりの減産となることは確実となった。大雪の影響で生産活動が抑制された面もあるため、生産が基調として調整局面に入ったと判断するのは早計だが、生産の牽引役となってきたIT関連財は調整局面に入ったとみられる。
IT関連財の在庫は17年11月以降、前年比で二桁の伸びが続いている(2月は前年比11.8%)。2月は出荷が1月の前年比▲0.2%から同▲6.3%へとマイナス幅が急拡大したため、IT関連財の出荷・在庫バランス(出荷・前年比-在庫・前年比)は1月の▲10.6%から▲18.2%へと急速に悪化した。
輸出が底堅い動きを続けていること、鉱工業全体では在庫調整圧力が限定的にとどまっていることなどから、現時点では4-6月期は増産に転じるとみているが、IT関連財の調整が長期化すれば、生産の足踏み状態が長引く恐れがあるだろう。
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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長
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