1-3月期は8四半期ぶりの減産
経済産業省が4月27日に公表した鉱工業指数によると、18年3月の鉱工業生産指数は前月比1.2%(2月:同2.0%)と2ヵ月連続で上昇し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比0.5%、当社予想は同0.1%)を上回る結果となった。出荷指数は前月比▲0.2%と2ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比3.5%と2ヵ月連続で上昇した。
3月の生産は事前の市場予想を上回る伸びとなったが、出荷指数が前月比でマイナスとなったことにより在庫指数が大幅に上昇しており、内容はあまり良くない。特に、電子部品・デバイスの在庫は半導体集積回路を中心に前月比で12.8%の急上昇となった。
18年1-3月期の生産は前期比▲1.4%と8四半期ぶりに低下した(17年10-12月期は同1.6%)。業種別には、国内外の設備投資回復を受けて好調を続けてきたはん用・生産用・業務用機械が前期比▲1.3%と8四半期ぶりに低下し、大雪の影響で一部の工場が操業停止となった輸送機械も前期比▲2.6%の大幅減産となった。一方、電子部品・デバイスは前期比0.7%と7四半期連続で上昇したが、直近3四半期の伸びはゼロ%台にとどまっており、16年後半から17年前半にかけての勢いは明らかに落ちている。1-3月期は15業種のうち、12業種が低下、2業種が上昇(1業種が横ばい)した。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は17年10-12月期の前期比3.1%の後、18年1-3月は同▲0.6%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は17年10-12月期の前期比0.7%の後、18年1-3月期は同▲4.6%となった。
17年10-12月期のGDP統計の設備投資は前期比1.0%と5四半期連続で増加した。企業収益の大幅増加に伴う潤沢なキャッシュフローを背景とした設備投資の回復基調は維持されているが、18年1-3月期はいったん伸びが鈍化する可能性が高いだろう。
消費財出荷指数は17年10-12月期の前期比0.4%の後、18年1-3月期は同▲1.1%となった。耐久消費財(前期比▲1.5%)、非耐久消費財(前期比▲0.8%)ともに低下した。
17年10-12月期のGDP統計の民間消費は前期比0.5%の増加となったが、物価上昇による実質所得の低下や株価下落に伴う消費者マインドの弱含みなどから、18年1-3月期は伸びが大きく低下し、前期比でマイナスとなる可能性もあるだろう。
在庫は積み上がり局面へ
製造工業生産予測指数は、18年4月が前月比3.1%、5月が同▲1.6%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(3月)、予測修正率(4月)はそれぞれ1.0%、0.2%であった。18年3月の生産指数を4、5月の予測指数で先延ばし(6月は横ばいと仮定)すると、18年4-6月期は前期比3.5%となる。なお、今月から製造工業生産予測調査のみ基準改定が実施されており、鉱工業指数と業種ウェイト、品目などが異なっていることには注意が必要だ。
在庫循環図を確認すると、17年4-6月期から3四半期続けて「在庫積み増し局面」に位置していたが、18年1-3月期は「在庫積み上がり局面」に移行した。1-3月期は出荷指数が10-12月期の前年比3.1%から同0.9%へと鈍化する一方、在庫指数が10-12月期の前年比1.9%から同4.1%へと伸びを高め、出荷の伸びを上回った。
3月の在庫指数の急上昇は船待ち在庫など一時的なものである可能性もあること、在庫水準がそれほど高くないことから、現時点では、このまま鉱工業全体が在庫調整局面入りするとはみていないが、IT関連財はすでに在庫調整局面入りしたと考えられる。
IT関連財の出荷・在庫バランス(出荷・前年比-在庫・前年比)は、出荷が前年比▲3.5%(10-12月期:同2.7%)と5四半期ぶりに低下する一方、在庫が10-12月期の前年比9.3%から同15.3%へとさらに伸びを高めたため、10-12月期の▲6.6%ポイントから1-3月期には同▲18.8%ポイントへと悪化幅が拡大した。
輸出が底堅さを維持していること、鉱工業全体では在庫調整圧力が限定的にとどまっていることなどから、現時点では4-6月期は増産に転じるとみているが、IT関連財の調整が長期化すれば、生産の足踏み状態が長引く恐れがあるだろう。
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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任
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