結果の概要:成長率は、個人消費の伸び鈍化により前期から低下も、市場予想は上回る

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4月27日、米商務省の経済分析局(BEA)は1-3月期のGDP統計(1次速報値)を公表した。1-3月期の実質GDP成長率(以下、成長率)は、季節調整済の前期比年率(1)で+2.3%となり、10-12月期(同+2.9%)から伸びが鈍化した一方、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の同+2.0%は上回った(図表1・2)。

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1-3月期の成長率を需要項目別にみると、個人消費が前期比年率+1.1%(前期:+4.0%)と前期から大幅に伸びが鈍化したほか、民間設備投資が+6.1%(前期:+6.8%)、政府支出も+1.2%(前期:+3.0%)といずれも前期から伸びが鈍化した(図表2)。さらに、住宅投資も横這い(前期:+11.6%)と前期から大幅な伸び鈍化となった。

一方、在庫投資の成長率寄与度が+0.43%ポイント(前期:▲0.53%ポイント)となったほか、外需の成長率寄与度も+0.20%ポイント(前期:▲1.16%ポイント)といずれも前期の大幅なマイナスからプラス寄与に転じ成長を押上げた。

この結果、在庫投資と外需を除いた国内最終需要は前期比年率+1.6%(前期:+4.5%)と、内需主導で高成長となった前期から一転、低い伸びに留まった。

当期は、内需中心に全般的に低調な伸びとなったが、とりわけ個人消費の伸びが大幅に鈍化したことが響いた。もっとも、個人消費の不振は、昨年10-12月期に減税期待で消費を先行させていた反動が大きいと考えられる。個人消費を取り巻く環境をみると、労働市場の回復が持続しているほか、減税に伴う可処分所得の伸びが加速しているため、今後も個人消費の不振が持続するとは考え難い。4-6月期以降は個人消費の回復がみられよう。

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(1)以降、本稿では特に断りの無い限り季節調整済の実質値を指すこととする。

結果の詳細:

●(個人消費・個人所得)自動車関連の消費が大幅に減少

1-3月期の個人消費は、サービス消費が前期比年率+2.1%(前期:+2.3%)と前期からの低下幅が限定的であったものの、財消費が▲1.1%(前期:+7.8%)と、前期からマイナスに転じた(図表3)。財消費では、自動車・自動車部品が▲15.1%(前期:+19.1%)と2桁の落ち込みとなるなど、耐久消費財が▲3.3%(前期:+13.7%)と前期からマイナスに転じたことが大きい。

また、非耐久財も+0.1%(前期:+4.8%)とプラスは維持したものの、前期から伸びが鈍化した。非耐久財では、ガソリン・エネルギー▲3.1%(前期:+0.1%)や、衣料・靴▲9.0%(前期:+10.6%)が軟調だった。

サービス消費は、住宅・公共料金が+0.2%(前期:+2.1%)と前期から伸びが鈍化したものの、ヘルスケアサービス+2.9%(前期:+2.5%)、娯楽サービス+1.5%(前期:▲0.9%)、金融サービス+6.3%(前期:+2.1%)などで前期から伸びが加速した。

一方、実質可処分所得は前期比年率+3.4%(前期:+1.1%)と、前期から伸びが大幅に加速した(図表4)。可処分所得の好調は、税制改革法に基づき今年から個人向け減税が実施されていることが大きい。可処分所得が加速する一方、消費が鈍化した結果、貯蓄率は3.1%(前期:2.6%)と4期ぶりに上昇に転じた。

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●(民間投資)設備機器投資の伸びが鈍化

1-3月期の民間設備投資の内訳をみると、知的財産投資が前期比年率+3.6%(前期:+0.8%)と前期から伸びが加速したほか、建設投資も+12.3%(前期:+6.3%)と前期から2桁の伸びとなった。しかしながら、当期は設備機器投資が+4.7%(前期:+11.6%)と前期から大幅に伸びが鈍化して設備投資全体を押下げた(図表5)。

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設備機器投資では、情報処理関連が+9.6%(前期:+8.5%)と前期から伸びが加速したほか、産業設備も+4.2%(前期:+4.6%)と前期並みの伸びを維持したものの、輸送機器が+4.6%(前期:+15.7%)と大幅に鈍化したことが大きい。

一方、前期から伸びが加速した建設投資では、原油掘削を含む資源関連が+37.7%(前期:18.4%)と引き続き好調を維持している。

最後に住宅投資は、戸建てが+5.7%(前期:+9.3%)と前期から伸びが鈍化したほか、集合住宅が▲1.5%(前期:+2.6%)と、こちらは前期からマイナスに転じた。

●(政府支出)連邦、州・地方政府ともに前期から伸びが鈍化

4期ぶりの伸び鈍化となった政府支出の内訳をみると、連邦政府支出が前期比年率+1.7%(前期:+3.2%)となったほか、州・地方政府も+0.8%(前期:+2.9%)と、連邦、州・地方政府共に、前期から伸びが鈍化したことが分かる(図表6)。

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連邦政府支出では、非国防関連が+1.6%(前期:▲0.1%)と5期ぶりにプラスに転じたものの、国防関連支出が+1.8%(前期:+5.5%)と、前期から伸びが鈍化した。

●(貿易)工業用原料の落ち込み等から、輸入の伸びが大幅に鈍化

1-3月期の輸出入の内訳をみると、輸出が前期比年率+4.8%(前期:+7.0%)と前期から伸びが鈍化したほか、輸入が+2.6%(前期:+14.1%)と大幅な伸び鈍化となった。このため、当期は主に輸入の伸び鈍化が純輸出の改善に寄与したと言える(図表7、8)。

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輸出を仔細にみると、サービス輸出が前期比年率+2.4%(前期:▲1.4%)と前期からプラスに転じた一方、財輸出が+6.1%(前期:+11.6%)と前期から大幅に伸びが鈍化した(図表7)。財輸出では、自動車関連が+34.7%(前期:+7.8%)となったほか、自動車を除く消費財も+14.7%(前期:+8.6%)と前期から伸びが加速した。一方、自動車を除く資本財が+1.0%(前期:+5.8%)と前期から伸びが鈍化したほか、工業用原料が▲0.3%(前期:+35.8%)と僅かながら前期からマイナスに転じた。

輸入でも、サービス輸入が+4.8%(前期:+1.1%)と、前期から伸びが加速した一方、財輸入が+2.1%(前期:+17.3%)と前期から大幅に伸びが鈍化した。財輸入では財輸出同様、自動車関連が+11.5%(前期:+7.7%)と前期から伸びが加速する一方、自動車を除く消費財が+15.5%(前期:+35.0%)、自動車を除く資本財も+2.3%(前期:+13.7%)と伸びが鈍化したほか、工業用原料が▲8.8%(前期:+7.4%)と前期からマイナスに転じた。

●(物価・名目値)PCE価格指数、コア指数(前年同期比)ともに2期連続で伸びが加速

1-3月期のGDP価格指数は、前期比年率+2.0%(前期:+2.3%)と前期から伸びが鈍化、市場予想(同+2.2%)も下回った。この結果、名目GDP成長率は前期比年率+4.3%(前期:同+5.3%)と前期から伸びが鈍化した(図表9)。

一方、FRBが物価の指標として注目するPCE価格指数(2)は、前期比年率+2.7%、前年同期比+1.8%(前期:+2.7%、+1.7%)と前期比は横這い、前年同期比は前期から伸びが加速した(図表10)。さらに、食料品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数は前期比年率+2.5%、前年同期比+1.7%(前期:+1.9%、+1.5%)と、こちらは前期比年率、前年同期比ともに前期から伸びが加速した。

この結果、PCE価格指数、コア指数(前年同期比)ともにFRBの物価目標(2%)を下回っているものの、2期連続で伸びが加速する結果となっており、インフレは緩やかながら加速の兆しがみられる。

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(2)現在、FOMCのメンバーは四半期に一度物価見通しを公表しており、そこで物価の指標として採用されている指数がPCE価格指数とコアPCE価格指数である。見通しは年単位で、各年の10-12月期における前年同期比が公表されている。

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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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