不動産投資をはじめる上で、減価償却の仕組みは必ず理解しておかなければなりません。減価償却を理解しているか否かで、支払う税金の額は大きく変わってきます。また、キャッシュフローや不動産投資の戦略にも多大な影響をおよぼしかねません。つまり、自分の投資家人生を左右する力を持つのが減価償却なのです。

減価償却とは「費用の振り分け」

depreciation
(写真=Michael R Ross/Shutterstock.com)

減価償却とは、時間の経過とともに減価する資産を一定の期間にわたって、費用計上する会計処理です。建物や機械、車両運搬具などは、消耗品のように1回限りで使い捨てするわけではありません。少なくとも数年、長い場合は数十年にわたって使用します。それに対して、時間が経過すれば確実に劣化し、価値が減少していくことが一般的です。

こうした資産の取得費用は、取得したときに一括して計上するよりも、使用可能期間にわたって按分して処理する方が理にかなっています。たとえば、20年ほど使い続けられる機械を100万円で購入したとしましょう。購入年度に100万円を経費として一気に計上するより、20年間にわたって5万円(100万円÷20年)ずつ計上していくことが、減価償却の考え方です。

減価償却できる年数は、壊れずに使える「耐用年数」に応じて決められています。不動産の場合は、新築と中古、あるいは構造によって、その耐用年数が税法で定められています。たとえば、新築の鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、または鉄筋コンクリート造(RC造)の住宅用物件だと耐用年数は47年、鉄骨造(S造)で骨格材の肉厚が4mm超だと34年などです。詳細は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」を参照するか、不動産管理会社・税理士などに確認すると良いでしょう。

減価償却の実例とメリット

減価償却費の計算方法には、主に定率法と定額法があります。ただし、2007年4月1日以降に取得した建物について定率法は適用されませんから、ここでは定額法のみ計算方法を紹介します。定額法の場合、単純に耐用年数で取得費用を割り算すれば毎年の償却費を計算可能です。たとえば、物件価格2,000万円、SRC造の新築マンション(住宅)の場合、耐用年数は47年で償却率は0.022になります。そのため、1年間の減価償却費は、2,000万円×0.022で計算され44万円です。なお、土地は経年劣化がないため、減価償却の対象外です。

物件購入時に将来の減価償却費を見通せるので、意識的に税金の額をある程度コントロールすることが可能です。手元に残るキャッシュフローをシミュレーションしやすくなるので、2戸目、3戸目以降の投資戦略を考えるのに役立ちます。不動産投資では、減価償却費以外にもさまざまな経費があります。仲介手数料やローン手数料、行政への申請手数料、司法書士への支払いなどで、これらを総称して「諸経費」と呼びます。

諸経費は、不動産価格の10%弱となることが一般的です。諸経費も、経費として不動産収入から差し引くことができます。しかし、諸経費は物件取得の初年度しか発生しません。それに対して、減価償却費は耐用年数の続く限り長く発生する経費です。不動産投資では数年後の売上予測が立てやすい傾向があり、上手に減価償却費を活用することで、利益をコントルールすることが可能です。

減価償却を活用した損益通算で節税

減価償却と一緒に理解しておきたいのが、損益通算の仕組みです。損益通算とは、異なる所得の種類の損益を合算できることを指しています。不動産投資の場合は、不動産所得を給与所得や別の事業の所得と損益通算することで、その期(年度)の税金を減らすようにするのが一般的なテクニックです。

具体的には、減価償却費を計上することで不動産所得を赤字にし、他の所得と損益通算する方法です。たとえば、不動産投資以外で課税所得500万円の本業を持っていたとします。不動産からの家賃収入が100万円あった場合、このままだと課税所得が600万円となり、税金が高くなってしまうでしょう。

しかし、減価償却費やその他経費を合計200万円計上できれば、不動産所得がマイナス100万円となり、課税所得を400万円に圧縮可能です。単純化していますが、減価償却と損益通算を使った節税方法の一例です。

減価償却費は将来的に見通せるので、うまく不動産所得を赤字に誘導して所得税・住民税(法人なら法人税・法人住民税)の節税につなげられます。特に、耐用年数が短い物件を購入すれば、単年当たりの減価償却費を高く設定できますから、損益通算の効果も高くなるでしょう。ただし、損益通算は厳密には税金の繰り延べにすぎず、売却時に払う譲渡所得税を考慮しなければなりません。

減価償却費を計上すると取得物件の簿価も下落するのですが、売却時には売買価格と簿価の差額を税金として支払うからです。そのため、厳密には「節税」とはいえないかもしれません。しかし、それでも損益通算は有効な「節税」方法の一つです。最終的には同じでも、それまで税金額を減らし、キャッシュフローを増やすことで次の投資につなげられます。活きた資金をうまく運用することで、さらに収入を増やすことができれば、結果的には大きなメリットといえるでしょう。(提供:Incomepress


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