あなたは「今すぐ貰える1,000万円」と「1年後に貰える1,050万円」のどちらを、どのように判断して選ぶだろうか。

1,050万円を選べば年利5%。普通預金と比べても条件は良い。しかし、そんなことは考えずに目の前の1,000万円に飛びついてしまう人も中にはいる。どのようなポイントに注意して判断すればよいのだろうか。

合理的に考えれば分かるけれど「目先の1,000万円が欲しくなる」のが人間

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(写真=PIXTA)

合理的に判断するためには、お金の価値が時間の経過でどう変わるかを知っておく必要がある。現在日本は低金利が続いており、1,000万円の価値が1年後に大きく変わることは想像しづらいだろう。1年後に確実に50万円の収益を受け取ることができるのは現在の環境を考えると好条件と言えるだろう。

しかしながら、1年待てばリスクなしに50万円を受け取れるにもかかわらず、いますぐ貰える1,000万円に飛びつきたくなるのが人間心理だ。

このような一見合理的でない行動も、経済学のイチ分野である行動経済学の「現在バイアス」 (現在志向バイアス) の理論から説明がつく。これは、多くの人は目先の利益が大きく見え、将来の利益が小さく見えてしまうというもの。1年後にノーリスクで50万円が増えるという合理性よりも、今1,000万円を手にする喜びのほうが勝ってしまうわけだ。このような人間の脳のクセを知り、上手に付き合う必要がある。

別観点から、年間5%以上のリターンを狙える投資手法・対象先があるかどうかを考えたい。例えば、2017年末の日経平均株価は2万2,764円94銭 (16年末の終値:1万9,114円37銭) となっており、前年末対比で19.1%上昇した。仮に、1,000万円を日経平均株価に連動する金融商品に投資をして1年間寝かせておけば、単純計算で1,191万円になったわけだ (便宜的に手数料等は考慮せず) 。

もうひとつ考えるべきは、ノーリスクで年5%の利回りを確保できることと比較して、「リスクを取る」ことについて判断する必要がある。リスクを取ってでも大きな利回りを求めることができる投資環境かどうかを判断すべきだということだ。リスクを取ることで大きなリターンを求められると判断すれば、リスクを取らないことは機会損失になるとも言える。

投資環境を見極め、リスクを取る価値があるかどうかを判断してから、今1,000万円を受け取るか、それとも1年待って1,050万円を受け取るかを判断するのが正しい選択といえる。

脳のクセに引きずられない投資判断を

取り上げた現在バイアス以外にも、非合理的な判断をしてしまうケースは多々存在する。

例えば、長蛇の列を作っているレストランと1人も並んでいないレストランがある場合、前者のレストランを選んでしまいがちだが、この行動も「ハーディング効果」と呼ばれる理論で説明することができる。しかし、「人の行く裏に道あり花の山」といった相場格言があるように、多数の人が選択していることが必ずしも正しいとは言い切れない。

もうひとつ、コインの表裏の出る確率は繰り返しても毎回50%であることは誰でもわかっているのに、「裏、裏、裏、裏、裏」とくると、「次こそは表になりそうだ」と考えてしまう。合理的な根拠がないにも関わらず確率論に基づいた予測が歪められてしまう心理現象は「ギャンブラーの誤謬」と呼ばれる理論で説明がつく。投資の場面においても、「これだけ下がったのだからそろそろ上がるだろう」と感覚で判断して失敗してしまったことは無いだろうか。

本記事タイトルの”問い”に対する結論は、判断者のリスク見通しや相場環境で変わってくるため、合理的な判断を元に決断が下せていればどちらを選んでもよい。

脳のクセが合理的判断を狂わすこと知り、感覚で考えずに論理的に考え、より利益が最大化するのはどちらかを常に冷静に判断したい。(提供:大和ネクスト銀行


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