広報は常に「社外」を向いて仕事をせよ

もちろん、今回の事件の全容は、メディアの報道から推測せざるを得ない。だが、今後の日大に求められるのは、歴史ある公的機関として自己の尊厳を取り戻し、トップ自らがその姿勢を積極的に示し、最も真相を知りたがっている学生、父母、OB、その他関係者、そして社会の人々のために自発的に公表していくことだろう。

「犬も歩けば棒に当たる」と諺にあるように、人も歩けばつまづくこともある。会社もまた、人の集まりである。広報担当としては日々、事件・事故・不祥事に遭遇するとの危機意識を心奥に抱き、何が起きても、常に「To be good」を考え、積極的に対峙していく覚悟が必要だ。

緊急時になると、社内の多くの人は「社内7~8:社外2~3」の割合で考えがちだが、広報は逆に「社内2~3:社外7~8」の視点で考えるべきだろう。直言も時には辞さぬ誇りと勇気、言うべき時に断固言うべしという覚悟を持つ。

いかなる状況に置かれようとも常に、言うべきことを、言うべき人に、言うべき時に断固言うという揺るぎなき自負心を抱けば、立派に広報の仕事を全うでき、自らの成長も促進されるだろう。そうして“組織を真人間に導く”ことが、広報の最も重要な役割なのである。

山見博康(やまみ・ひろやす)広報・危機対応コンサルタント
1945年福岡県生まれ。1968年九州大学経済学部卒業。同年神戸製鋼所入社。人事部、鉄鋼事業部、海外勤務を経て、1979年より一貫して広報に携わる。1991年広報部長、1994年ドイツ・デュッセルドルフ事務所長を歴任。1997年スーパーカー商業化ベンチャー企業及び経営コンサルティング会社に出向。中小企業経営を学んだ後、2002年山見インテグレーターを設立し、現在、代表取締役。米国ダートマス大学エイモスタック経営大学院マネジメントプログラム修了。10年に及ぶ海外生活や大小企業における豊富な実践経験に基づいて、広報・危機対応・マーケティングに関するコンサルティングを中心に、セミナー講師、執筆活動などを行なう。
主な著書に、『広報の達人になる法』『だから嫌われる』(以上、ダイヤモンド社)、『広報・PR実務ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)、『企業不祥事・危機対応広報完全マニュアル』(自由国民社)、『勝ち組企業の広報・PR戦略』(PHP研究所)などがある。(『The 21 online』2018年06月04日 公開)

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