新・階層社会を生き抜けるのは「仕事を作れる人」
「AIによる失業は未来の話ではなく、今、この瞬間にも進行している」……こうした現実に不安を覚える人も多いだろう。だが、考え方さえ変えれば、AIはあなたに大いなるチャンスをもたらしてくれる。では、このピンチをチャンスに変えるにはどうしたらいいのか。著書『「AI失業」前夜』にて、近未来のAIと人間との関係を描いた鈴木貴博氏に、AI失業時代を生き残るための具体的な方法を説く。
「年収300万」が目標!? 新・階級社会が始まる
ITの発展と日本国内の富の格差には大きな関係がある。ITの浸透により多くの仕事がマニュアル化、自動化され、労働人口の非正規化が拡大した。30年前には「1億総中流」と呼ばれていた日本社会は、非正規労働者が増えるにしたがって、「格差社会」へと変貌していく。
2003年に経済評論家の森永卓郎氏が『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)を著した。この書籍のサブタイトルには「給料半減が現実化する社会で豊かなライフスタイルを確立する」と書かれている。これは、それまでの中年日本人サラリーマンの常識が年収600万円だったことを意識したうえで、「来るべき年収300万円時代に備えよ」と警鐘を鳴らしたという意味である。
現在はそれがさらに進み、「新・階級社会」だと再定義される時代になってきている。今では非正規労働者を中心とした新下流層の年収は180万円前後であり、年収300万円の正規労働者はむしろ下層の彼らが目指すべきひとつ上の目標だと言われるようになってきている。これから先の5年間の人工知能の進化だけで見ても、この傾向はさらに大規模に拡大することになる。
これから社会に出る学生が就くべき仕事とは?
では、これからの10年間で生き残れる仕事とはなんなのか。もうすぐ大学を卒業する若者はどのような仕事に就くのがいいだろう。
ニューシネマの名作映画に『卒業』という作品がある。1967年の映画である。その映画の中で大学を卒業したダスティン・ホフマン演じる主人公に、ある成功したビジネスマンが「プラスチックが有望だ」とアドバイスをするシーンがある。
1960年代、そして1970年代には化学メーカーがおおいに発展した。発展する産業の中に身を置けば、仕事に困ることはない。それが「プラスチックだ」というのが、人生の大先輩からのアドバイスの意味である。
その観点で、2018年時点で大学を卒業する若者にとって一番有望な仕事は何かというと、「人工知能が有望だ」ということになる。
いや、ここで諦めないで話を聞いていただきたい。この記事を目にしているあなたは多分、人工知能学者の卵ではないだろう。むしろ文系の学生、ないしは文系出身のビジネスパーソンである可能性のほうが高いかもしれない。
そのあなたでも、今このタイミングで就職ないしは転職するのに良い仕事の筆頭は「人工知能だ」ということなのだ。