IT時代の成功者は「エンジニア」ではなかった

実例を挙げたほうが話は早いだろう。これが2000年頃の話であれば、「インターネットが有望だ」という話になるわけなのだが、そこで考えてみてほしい。インターネットビジネスで成功したIT企業の成功者たちは、ITエンジニアだっただろうか。

もちろん、そういう人たちも一部にいるが、そうではない人たちもたくさん成功している。

楽天の創業者の三木谷浩史氏は元銀行マンだ。ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイの前澤友作氏は元ミュージシャンで輸入CDの通販からビジネスをスタートしている。DeNAの創業者の南場智子氏は大学卒業後、マッキンゼーのビジネスアナリストから社会人キャリアを始めている。

本場アメリカのインターネットの世界では、マーク・ザッカーバーグやスティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツのようにITについての深い理解を伴ったカリスマ人材でなければ成功しないように見えるが、彼らとてIT技術者として機能していたのはそのキャリアの始まった当初だけだ。

本当の成功の過程では、彼らはフェイスブックやWindowsのプログラムを書いていたわけでも、iPhoneの設計をしていたわけでもない。むしろ日本では文系の仕事に分類される経営や交渉、戦略の力で事業を成長させている。

重要なことは、インターネットでの成功者たちはそれぞれが、インターネット技術がビジネスの未来を変えていくことについての強いビジョンを持ち、インターネット技術を誰よりもうまくビジネスに適用することができたということである。

これを職種で言えば、「事業開発の仕事」と呼ぶ。つまりこれからの10年間で一番引く手あまたになる仕事は、人工知能をビジネスに適応する事業開発の仕事なのだ。

文系ビジネスパーソンでも「AI」を武器にできる!

事業開発とはどのような仕事なのか。現代の仕事の現場では、(新しい)事業や業務の勝ちパターンを設計し、それを横展開できるようにすることが正社員の仕事だ。そしてこのようなことを行なう業務こそが事業開発である。

この事業開発の仕事を「人工知能を武器にして遂行する」ことができる人材は、まだ世の中には圧倒的に不足している。これが文系のビジネスパーソンが目指すべき、これからの10年間で一番成功できるビジネス領域なのである。

成功したIT企業の経営者がプログラマーではないのと同じで、これから先の近未来で、このような仕事で成功するビジネスパーソンの大半は人工知能の開発者ではないだろう。

そうではなく、エンジニアが開発する人工知能製品を誰よりも早く試し、構造を理解し、適応領域や機能的な限界を理解し、それをビジネスに適用できるビジネスパーソンが、これからの10年間で最も必要とされる人材である。