「AIを使える人」になれれば年収1000万円への道も

たとえばあなたがテレビ局に勤めていたとして、誰よりも先に人工知能を用いてSNS上でリアルタイムに番組の反響を把握して、生放送中に番組の中身をより視聴者の求めるものへと変えていくという新しい仕事の仕方を現場に導入できるとしたらどうだろう。

もしあなたが小売業のチェーンストアに勤務していて、誰よりも早く人工知能を用いて在庫のばらつきに起因する機会ロスを減らす仕組みを構築し、それを全国の店舗に展開できたとしたらどうだろう。

もしあなたがインターネットサービスの会社に勤務していて、人工知能を用いて潜在顧客に効率的にアプローチして、低い単価で数十万人単位の新規顧客を獲得する仕組みを作り上げたとしたらどうだろう。

実際にそういった仕事に使える人工知能サービスは、アマゾンやグーグル、マイクロソフトのクラウドから利用できるはずだ。しかし、それができる人材はどの企業に行っても希少である。

たとえ今の会社での年収が300万円だったとしても、このような仕事での成功経験を持つ人材になれれば、転職で年収1000万円に向けた道筋は開ける。それは厳しい未来の新・階級社会においても、まったく将来のキャリアを心配する必要がない生き残る才覚である。

まずは趣味でいいので最新情報に飛びつこう

では、そもそもどうすれば人工知能人材になることができるのか。それは若いうちから人工知能商品に興味を持って、それを趣味で使い続けることだ。インターネットビジネスのときと同じである。インターネットをビジネスに適用する事業開発において成功できた人の多くが、私生活ではインターネットおたくだった人たちである。

2000年当時であれば昼間は文系ビジネスパーソンとして働きながら、趣味でインターネット雑誌を購読し、付録でついてくる裏技ツールをパソコンに導入しながらいろいろと試すのが趣味だったような人。そういった人は、実はインターネット技術を会社の中に適用する可能性について誰よりも早く気づくことができたし、ブログやSNS、オンラインゲームといった新しいコンセプトアイデアについての理解も早かった。

それと同じことで、時代はまだ人工知能の黎明期である。現時点でいろいろと出現している人工知能についてのウェブ記事を読んだり、アマゾンの「エコー」のような新しいタイプの人工知能製品を試したりと、とにかく新しい人工知能については趣味で真っ先に飛びつくようにする習慣から始めてみるといい。

少なくとも人工知能を事業開発に適用するという分野においては、社内の人材よりも競争力を持つことを目指せばいいのだ。

実は「人工知能の仕事に就く」以外にもAI失業時代を乗り越える働き方はまだ他にもある。それについては近著『「AI失業」前夜』に詳しく書いておいたので、ぜひ参考にしていただきたい。

鈴木貴博(すずき・たかひろ)経営戦略コンサルタント
東京大学工学部卒。ボストンコンサルティンググループ等を経て2003年に独立。過去20年にわたり大手人材企業のコンサルティングプロジェクトに従事。人工知能がもたらす「仕事消滅」の問題と関わるようになる。著書に『仕事消滅』(講談社)、『戦略思考トレーニング』シリーズ(日本経済新聞出版社)他があり、後者は累計20万部超のベストセラー。経済評論家としてメディアなど多方面で活動している。(『THE21オンライン』2018年7月号より)

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