円定期預金では想像できないような金利が付く外貨での運用は魅力的に映る一方、為替リスクを警戒して、投資先としてなかなか手が出しづらいという声も少なくない。外貨で資産運用をおこない日本円に変える際、円安になっていれば利益が膨らむ一方、円高に振れると元本割れの恐れがあり、資産が目減りする可能性もある。
こうした背景から敬遠されてしまうこともある外貨での運用だが、実は私たちが将来受け取る予定の「年金の運用」では外貨運用の存在感が増していることはご存知だろうか。
国内債券に偏った保守的な運用から脱皮
将来受け取る予定の厚生年金や国民年金は、納められた年金保険料を年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF) が運用を実施している。
国民の大切な老後資金を運用するにあたり、最低限のリスクで長期的に必要なリターンを目指すことが基本的な方針となっており、GPIFの運用実績は年金制度そのものにも大きな影響を及ぼすため、従来の運用方法は極めて保守的だった。
2000年代以降でGPIFによる資産構成割合 (ポートフォリオ) をみると、比較的リスクの低いとされる国内債券の割合が最も高かったのが2009年3月末時点。その割合は73.94%に上った。この他、国内株式9.69%、外国債券8.51%、外国株式7.72%、短期資産0.14%となり、外貨での運用は15%ほどにとどまっていた。2010年以降、基本ポートフォリオが段階的に見直され、2014年10月からは国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%に変更された。
この措置により一層リスクと向き合った結果、国内債券の割合がピーク時から半分以下に減る一方、国内株式は資産の4分の1を振り向けることとした。この割合が公表された当時、日経平均株価は1万5000円を挟む展開だったが、GPIFの潤沢な資金が国内株式に流れ込む観測から、株価が続伸した経緯がある。
外貨資産比率を増やしたことでパフォーマンスに寄与
一方、外貨については40%のポートフォリオを組むこととなり、為替変動など国内の投資先よりリスクが高いとされるが、かつて15%ほどしか外貨に振り向けなかった保守的な運用方法からの脱皮を図った。よりリスクテイクした結果、2016年度には収益率は5.85%、収益額は7兆9,363億円となり、運用資産額は144兆9,034億円に上った。ポートフォリオ別にみると、国内債券は0.85%減、国内株式14.89%増、外国債券3.22%減、外国株式14.2%増という結果だった。この年に限ると、これまでのように国内債券に偏った運用方法では収益を確保できず、ポートフォリオ改革が実を結んだ結果となった。
実際に、GPIFが外国株式で運用している銘柄に着目すると、アップルやマイクロソフト、アマゾン、フェイスブック、ジョンソン・エンド・ジョンソンなど世界的に名立たる企業が並ぶ。また、外国債券については、米国や英国、フランス、イタリア、ドイツなど先進国の国債が中心となっており、その中身を見れば、外貨での運用とはいえリスクを管理しながら慎重に運用を実施している姿が浮かぶ。
実はあなたも「外貨運用」経験者 必要以上に恐れる必要は無い
このような形で将来受け取る予定の年金が運用されていることから、間接的には年金を受け取る個人も外貨での運用に参加しているともいえるだろう。つまり、すでに外貨運用の経験者ともいえ、現役世代にとっては含み益ではあるものの実を結んだ経験をしているわけだ。
個人の資産運用においても外貨での運用に対して必要以上に恐れる必要はなさそうだ。GPIFのHPにある「管理・運用状況」から、どういった運用をしているのかについて詳細を確認できる。GPIFの実績からも、そのポートフォリオも参考にしながら、リスクと向き合い、外貨での運用をどのように取り入れるかについて検討する価値はあるだろう。(提供:大和ネクスト銀行)
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