◉ダブル・アイリッシュ・ダッチ・サンドイッチ
Googleも、アメリカ以外の海外事業での節税を上手く行っており、時には「やりすぎだ」と非難される企業の一つです。
Googleは海外で生じた収益の大半を、アイルランド、オランダを経由して無税地のバミューダ諸島に移転するスキームを採用しました。その結果、海外収益の税負担は2〜3%前後と言われています。
米Googleから海外におけるGoogleの商標権のライセンス管理を任されているのが、グーグル・アイルランド・ホールディングス(GIH)です。アイルランド籍の法人ですが、実際に経営管理を行っているのはバミューダ諸島にある管理会社です。そのため、 アイルランドでは税法上は非居住企業となり、アイルランドにおける低めの法人税(12.5%)さえ免除 されています。
そしてGIHがグーグル・アイルランド・リミテッド(GIL)に商標のライセンス業務を委託、このGILに各国の子会社からライセンス使用料が振り込まれます。
ただし、GILからGIHヘはライセンス使用料が直接支払われるわけではありません。一旦オランダの子会社を通してから入金しています。
両国間の租税条約により、アイルランドからオランダへのロイヤリティ支払いは課税されてないためです。
またオランダの国内法でもロイヤリティに対する課税は発生せず、GIHやバミューダ諸島の法人にライセンス料や管理費を支払えば、巨額のお金が動きながらも課税はされません。
グーグルはアイルランドでほとんど法人税を払っていませんが、国内で2500人を雇用しており、アイルランドの税務当局はこのスキームを静観しています。
なお、このスキームは「ダブル・アイリッシュ・ダッチ・サンドイッチ」と呼ばれています。80年代にAppleが生み出した手法と呼ばれており、現在はGoogleをはじめ、多くの米国系IT企業が利用しています。
比較的、優秀なCEOがいると言われる会社での実施と重なるかもしれません。
参考: 世界の偉大なCEOのベスト10〜長期に成果をあげるCEOの条件とは何か?〜
地域別&女性CEOベスト5~止まらない中南米の勢いと蚊帳の外の日本~
なお、日本政府はタックスヘイブンを厳しく規制しているため、このスキームを日本企業が真似する事は出来ません。
◉各国政府も事態を問題視
このようなグローバル企業による節税は、ここ2年ほど特に注目と批判を集め話題となっています。
グローバル企業による上記のような節税は以前からもありましたが、現在ほどは問題視されていませんでした。しかし、近年はリーマンショックや欧州危機により、各国の財政が悪化しています。各国政府は緊縮財政を強いられ、市民の不満も高まりました。
そのため、ここ2年ほどはあまり税金を納めないグローバル企業に対しての批判が強くなっているのです。
また、このようなグローバルな節税のスキームに対しては、各国個別の対応に限界があるため、政府間の連携を模索する動きも進んでいます。
2012年にメキシコ市で開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でもこの問題が話題となりました。英国とドイツの両財務相が、コーヒーチェーンのスターバックスやAppleなど、米国に本社を置く巨大多国籍企業の租税回避行為に対抗するため、国際協力体制の構築を呼びかける異例の共同声明を発表したのです。
今後の動向が、注目されています。
BY TOMB
photo credit:
401(K) 2013
via
photopin
cc