株・投信・債券からまずは始めてみよう
ひと言に投資と言っても様々な種類があることがお分かり頂けたと思います。迷った場合は、前述した基本の3種類のうちから選んでみるといいでしょう。株式投資、投資信託、債券です。金融商品が得意としている部分と、自身が資産運用に期待していることが合致している商品を選ぶことがポイントです。
購入した銘柄の買い時や売り時の判断をプロにお任せしたい人は、投資信託がお勧めです。個別の商品の売買をファンドマネジャーに任せることができるため、手間をかけずに少額での分散投資が可能です。
初心者に最適な投資信託の手法として、「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」があります。年間上限40万円を最長で20年間、非課税で運用できる制度です。最低積立額や積立頻度は金融機関により異なりますが、100円以上1円単位から始められます。お金の引き出しのタイミングは自由です。この制度では利用者がなるべく損をしないように、金融庁が定めた一定の条件をクリアした投資信託商品だけが選べるようになっています。
購入形式は、月ごとなど一定の頻度で継続的に購入する積立購入。自分でタイミングを見計らうスポット購入はできません。何から手をつけてよいかわからず、自分でタイミングを狙うのが難しい初心者には、始めやすい制度設計と言えます。
株を始めたい人は最初は20万円を目安に
自分で銘柄を選びたい、あるいは安い時期に自分で見極めて購入したい人には、株式投資をお勧めします。
株式運用専用資金を、まずは20万円程度に設定しましょう。10万円前後あれば、誰もが聞いたことがあるような会社の銘柄の購入も可能です。資金全部で一銘柄を買うのではなく、2~3銘柄に分けて売買を試してみるといいと思います。
複数銘柄を購入しておけば、買った途端に価格が下落した銘柄があっても、ほかの銘柄を売買できるため、価格が戻って来るのを待つことができます。利益が出たら売却して、利益を確定することもできます。
「NISA(少額投資非課税制度)」口座では、年間120万円までの投資を行なうことができます。非課税期間は原則5年間です。
非課税枠は一度使うと復活しないので、20万円を元手にした株式の売買を6回繰り返すと、1年間のNISA枠を使い切ることになります。
少額株式投資で株式投資に慣れる手も
近年は投資ブームの影響もあり、少額株式投資も人気があります。月々1万円など積み立てながら株式を購入できる「るいとう(株式累積投資)」や、1,000円から株式が購入できるサービス「PayPay証券」などです。手持ちの資金が少なくても分散投資できるメリットや、値がはる銘柄の一部だけを購入できるといった魅力もあります。「株を始めてみたいけれど、損をするのは怖い」という人は、このあたりから試してみるのも良いと思います。
ただし、株式を分割して購入するので手数料が多くかかります。複数の銘柄の価格を自分でチェックするのも大変です。
まずは、吟味した数銘柄の株式を買ってみるといいでしょう。NISA口座であれば、売買手数料がかからない証券会社もあります。
債券は自身で銘柄を選ぶ必要があるため、感覚的には株式投資に近いですが、株式投資よりもリスクを低くしたいという人に適しています。
最初は、代表格の「個人向け国債」がお勧めです。商品は「固定3年」と「固定5年」と「変動10年」の3種類。購入するなら「変動10年」がいいでしょう。半年ごとに適用利率が見直されるため、市場金利が上がれば上昇します。市場金利が下がったときには適用利率も下がりますが、下限が設定されていて、最低でも0.05%の利息を受け取ることができます。
基本の3種類以外の金投資、外貨預金などは、適性と好みによります。3種類のどれかを試してみて、より投資に興味が出たら検討の余地ありです。
投資を始める際、始めやすい金額は貯蓄の10%以内と考えています。現在、資産運用資金を貯蓄中の人も同じ割合です。毎月5万円を貯蓄するなら、5,000円が相場です。
投資で生じるリスクとリターンはセットです。「リスクが高いものが悪く、低いものが良い」というわけでもありません。自分がどこまでのリスクなら許容できるか、考えながら始めてみましょう。
風呂内亜矢(ふろうち・あや)ファイナンシャルプランナー
1978年生まれ。岡山県出身。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。CFP(R)認定者。独身時代に貯金が80万円しかないのにマンションを衝動買いしたのをきっかけにお金の勉強と貯金を始め、現在は夫婦で4つの物件を保有する。2013年、ファイナンシャルプランナーとして独立。テレビ、ラジオ、雑誌、新聞などで「お金に関する情報」を精力的に発信している。著書に、『ほったらかしでもなぜか貯まる!』(主婦の友社)、『超ど素人がはじめる資産運用』(翔泳社)などがある。(『THE21オンライン』2018年9月号より)
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