毎月なんとなく払っているけど、年金の仕組みってよくわからない。将来本当にもらえるの?など、老後の年金について不安に思ったことはありませんか?たしかに一見複雑そうな年金制度ですが、きちんと理解することで、将来の大きな味方になってくれることは間違いありません。今回は年金の仕組みから、もらえる金額の計算方法まで、日本の年金制度の基本を解説します。

日本の年金制度の歩み

年金,老後
(画像=Narin Nonthamand/Shutterstock.com)

日本の年金制度は太平洋戦争中の1942年にスタートした。労働者年金保険法が発足したのが始まりで、この法律は1944年に厚生年金保険法に改称され、1947年に全面改正される。1961年には国民年金法の全面施行が行われ、国民皆年金が導入されることとなった。この期間は年金制度の創成期とされる。

1965年までは、厚生年金の定額部分は年金に加入していた期間とは関係なく算出されていた。しかし、1965年の改正で加入期間が受給金額に対応する仕組みに改められた。1973年には物価に応じて支給額が変動する「物価スライド制」が導入されたほか、標準報酬の再評価なども行われた。

1985年以降は高齢化に対する対応なども政策として行われた。1985年には基礎年金が導入され、1997年には厚生年金の定額部分の支給開始年齢が引き上げられた。2000年にはJR共済とJT共済とNTT共済の3つの共済が厚生年金に統合され、2002年にはこれに加えて農林共済も厚生年金に統合されている。

年金の「世代間扶養」って?

我が国の年金の運営方式として採用されているのが、世代間扶養を実現する「賦課方式」だ。現役世代が払った国民年金と厚生年金の保険料に、国が負担する分を加えて同時期の受給世代に渡す仕組みだ。個人が積み立てた金を個人に返す「積立方式」とは異なる。

現役世代のとき実際に払った保険料は、その時代の受給世代に渡る。けれども、自身が受けとる世代になったときに支給される額は、かつて現役世代だったときに払った保険料額をもとに決まる。

なお以前は現役世代と受給世代のバランスを図りながら保険料が決まっていたが、少子高齢化の影響などもあって現役世代の保険料が高騰する可能性から、2004年に法律が改正された。以後、保険料には上限が定められ、段階的に引き上げられていた(2017年に引き上げは終了)。

老後の年金は3階建て構造

老後の年金は、加入していた年金から支給がなされ、どんなに長生きしても終身にわたり受給することができます。年金制度は、老齢基礎年金をベースとした3階建ての構造です。

1階部分の年金

1階部分は基礎年金で、国民年金、厚生年金保険のどの年金に加入している人も受給できる年金で、「老齢基礎年金」が給付されます。

2階部分の年金

老後の年金には、国民年金からの「老齢基礎年金」、厚生年金保険からの「老齢厚生年金」があります。

厚生年金保険加入者は、 同時に国民年金にも加入していますので、「老齢基礎年金」も受給できます。

なお、公務員等の共済年金は平成27年10月1日より厚生年金に統一されました。

2階部分は、民間サラリーマンやOLが加入している厚生年金保険から「老齢厚生年金」が受給できます。公務員の共済組合等加入者は「退職共済年金」でしたが、平成27年10月1日以降の厚生年金と統一後の受給者は老齢厚生年金となります。

なお、国民年金の上乗せ年金として「国民年金基金」(任意加入)、および「確定拠出年金(個人型)」があり、2~3階部分を構成しています。

3階部分の年金

3階部分は、民間サラリーマン等の場合、「厚生年金基金」あるいは「確定給付企業年金」、「確定拠出年金(企業型)」で、いわゆる企業年金といわれるものです。

なお、公務員等の共済組合加入者の場合には、退職共済年金の「職域部分」がこれに該当しますが、平成27年10月以降の厚生年金との統一後は廃止され「年金払い退職給付」が創設されました。

民間の生命保険会社や信託銀行などから多くの個人年金の商品が売り出されていますが、保険金(掛金)や老後の年金額などは規約で定まっています。

加入している人は受給年齢が来たら、請求してください。

民間の個人年金も、もらい忘れがないよう注意しましょう。

公的年金の被保険者は3つに分類されている

加入する年金制度は、働きかたによって3種類あります。

将来受け取る年金の種類や金額もそれにより変わります。

国民年金第1号被保険者

自営業者やその妻、20歳以上の学生などは、第1号被保険者として、国民年金保険料(約1.6万円/月)を納め、65歳になったら、国民年金から老齢基礎年金を受け取ります。

納付が難しい場合は、免除や猶予を市区町村に相談しましょう。

国民年金第2号被保険者

会社員や公務員など、厚生年金に加入すると、年金制度上の呼びかたは、第2号被保険者になります。

給料から収入に応じた厚生年金保険料を納め、65歳から老齢基礎年金に加えて、厚生年金から老齢厚生年金も受け取ることができます(昭和36年4月1日までに生まれた男性、昭和41年4月1日までに生まれた女性で、1年以上厚生年金保険 料を納めた人は、65歳より早く一部の年金を受け取ることができます。「ねんきん定期便」で確認してください)。

老齢厚生年金の額は、厚生年金に加入している間の給料によって決まります。

国民年金の第3号被保険者

会社員や公務員などの第2号被保険者の扶養に入っている人、いわゆる会社員の妻である専業主婦(夫)やパートの人が、第3号被保険者です。第3号被保険者は、自分で年金保険料を納めなくても、その年金保険料は厚生年金全体で負担している ため、65歳になったら国民年金から老齢基礎年金を受け取ることができます。

自分が払っている年金保険料はいくら?

国民年金加入者がみんな同じ保険料を払うのに対し、厚生年金保険では、収入によって保険料が変わります。

具体的に、2018年度の国民年金の保険料は1万6,340円ですが、厚生年金保険は収入によって1万6,104円~11万3,460円まで幅があります。

しかし、厚生年金保険では保険料を会社が半分負担するので、会社員の負担は上記の額の半分の8,052円~5万6,730円になります。一例をあげると、月給(標準報酬月額)が20万円の人で保険料は1万8,300円です。ただし、ボーナスからも額に応じて保険料を払う必要があります。

年金保険料を払っていればもらえる3つのお金

年金からの支給には、「老齢年金」、「障害年金」、「遺族年金」があり、国民年金からは基礎年金、厚生年金保険からはその上乗せの年金が支給されます。

ただし、各年金の受給においては加入期間や年齢などの受給要件があり、この受給要件は加入している年金によって異なりますので、注意が必要です。

自分が受け取れる年金額(老齢年金)の計算方法

実際に受け取る年金額を計算してみましょう。以下は簡単に手計算で年金額を算出できる計算式です。おおよその金額ですがイメージをつかむには十分です。

国民年金(老齢基礎年金)
受取年金額(年)=2万円×加入年数
※受け取るのに必要な加入資格期間は10年以上必要

厚生年金(老齢厚生年金)
受取年金額(年)=加入中の平均年収×0.55%×加入年数
※受け取るのに必要な加入資格期間は1ヵ月以上必要(ただし、国民年金の受給資格を満たしていること)

年収350万円の場合の受取額シミュレーション

国民年金(老齢基礎年金)
受け取る年金額(年)=2万円 ✕ 加入年数(40年)=80万円

厚生年金に20歳から60歳まで40年加入となるので、国民年金にも40年加入することになり、満額80万円(年間)を受給することになります。

厚生年金(老齢厚生年金)
受け取る年金額(年)=加入中の平均年収(350万円) ✕ 0.55% ✕ 加入年数(40年)=77万円

年収350万円で40年間働く場合には、年間77万円を厚生年金として受給することになります。老齢基礎年金と合わせて1年間に受け取る年金額は157万円です。

2017年簡易生命表によると女性の平均寿命は87.26歳ですので、65歳から88歳までの23年間年金を受け取ると計算すると総額3,611万円となります。

「ねんきん定期便」「ねんきんネット」で自分の年金記録をチェック

毎年届く「ねんきん定期便」(以下、定期便)。中身を確認しないまま捨ててしまっていませんか。定期便を読み解くことで、年金記録の漏れや誤りに気付いて将来の年金を守ることができるだけではなく、「年金がいくらもらえるのか?」具体的な数字を知ることで、老後の資産設計にも役立てることができますよ。

収入に関しての不安は、年金がいくらもらえるかきちんと調べてみることをおすすめします。毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」やねんきんネットで自分の年金に関する情報を知ることができます。もらえる年金額に加え、あといくら貯蓄をしたらよいかが分かると思います。

万が一のための障害年金と遺族年金

障害基礎年金が支給されるのは、国民年金の被保険者で障害認定日に1級、2級に該当し、保険料を一定期間納めていた場合だ。一方、障害厚生年金は厚生年金保険の被保険者であった人が保険料納付要件を満たし、障害等級の1級、2級、3級に該当した場合、年金を受け取れる制度で、障害基礎年金よりも保障範囲は広い。また、3級の障害よりやや程度の軽い障害が残ったときに支給される一時金として、障害手当金もある。

遺族基礎年金は国民年金に加入している人か、すでに受給する側にあった人が死亡した場合、遺族に支給される年金である。そのうち遺族基礎年金は死亡者が保険料納付要件を満たしていたとき、その人に生計を維持されていた子か子のある配偶者に支給され、配偶者は妻、夫のどちらでも受け取ることができる。

遺族厚生年金は一定の要件を満たしたとき、死亡者に生計を維持されていた人がもらえる年金だ。子どもがいなくても支給される点が遺族基礎年金とは異なる。

年金制度にもマイナンバーが使われるように

年金の手続きには基礎年金番号が利用されてきたが、2018年3月5日以降はマイナンバーを使用することになった。国民年金や厚生年金問わず、これまで基礎年金番号を記入していた書類には原則マイナンバーを記入することになった。例えば年金の資格取得届や資格喪失届、保険料の免除・猶予申請書、年金請求書などだ。

書類上にあった「基礎年金番号」の欄が「個人番号または基礎年金番号」欄に変更され、そこにマイナンバーを記入する。加えてマイナンバーを用いた手続きの際は、そのマイナンバーを保有する本人であることを示す必要がある。第1号被保険者なら市区町村の窓口など、第2号被保険者の厚生年金加入者なら事業主に、本人確認書類を用いてマイナンバー保有者だと示す。第3号被保険者なら事業主か事業主から本人確認作業を任された配偶者に、自身のマイナンバーであることを証明しなければならない。

年金に関するお役立ちコラムまとめ

厚生年金と国民年金の切り替えとは?自分でする必要あり?就職、退職時は要注意
厚生年金と国民年金基金を比較 受給額などはどう違う?
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制度改正の情報を敏感にキャッチして

65歳から一生受け取れる年金は、老後資金の大きな柱となります。仕組みをきちんと知ることで、将来の資金計画が立てやすくなり、不安な気持ちが和らぐはずです。ただし、年金制度はこれまで何度も改正されてきており、今後の制度変更も十分に考えられます。自分の将来のためにも、新しい情報を常に把握できるよう日頃からアンテナを貼っておくことも大切かもしれません。

文・fuelle編集部/fuelle

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