「常識のアップデート」が真の働き方改革につながる

働き方改革,沢渡あまね
(画像=THE21オンライン)

働き方改革で残業時間は減ったけれど、仕事量は変わらないので大変……などと思っている人もいるのでは。働き方改革が叫ばれ始めてから数年経つが、まだまだ問題は多い。今起きている課題と今後の改善点について、業務改善・オフィスコミュニケーション改善士の沢渡あまね氏にうかがった。

働き方は本当に変わったのか?

政府の号令により各企業が本格的に働き方改革に取り組むようになってから約2年。皆さんの身のまわりでは“働き方”に変化はありましたか?

「定時で退社できる日が増えた」「有給を消化しろと口うるさく言われるようになった」などと多少なりとも変化を肌で感じている人も多いかもしれません。一方で、「仕事時間は削減されたが仕事量は減らないので、ゆとりを持って仕事ができない」などと感じている人もいることでしょう。

この2年間で、各企業において制度面の整備はかなり進んだのではないかと思います。しかし、こうした変化はまだ、改革の第1段階にすぎません。

働き方改革のゴールは、長時間労働の是正という目先の問題解決ではなく、その先にある生産性向上や、組織と人の健全な成長です。そして、ゆくゆくは企業、国としての競争力を強化していくことにあります。

長時間労働を是正する制度を作ったところで、それだけではうまくいかないと、皆さん思い始めている頃ではないでしょうか。

「やらないこと」を決めるとうまくいく

それでは、うまくいっている企業とそうでない企業はどこが違うのでしょうか。スタート時期、トップのリーダーシップなど様々な要因がありますが、中でも大きな要因の一つに、「やらないことを決断した」ということがあります。

例えば、業務時間外に無理難題を要求してくるお客さんとのつきあいをやめる、サービス業であれば、営業時間の短縮や、サービスの一部の提供をやめるなどがよい例。

そして、たくさんのことをやらない代わりに、「自分たちの組織はどこで勝っていくのか」という“強み”を明確に定義し直し、そこに労力や時間を注力するようにしたのです。

その際、重要なのは「常識」を疑っていくことです。「なんでこんなに資料を作るの?」「用紙にハンコを押して提出する必要があるの?」「スーツを着る必要があるの?」など、いったん立ち止まって、生産性やモチベーションを下げていたことに対して考えてみる。

そして、これはやらなくていいと思ったら、常識をアップデートしていけばいいのです。これを繰り返せる企業は成長していけます。

常識を疑い、労力や時間のムダを見直して“強み”に労力や時間をかけるようシフトしていくことこそ、本質的な働き方改革であり、多くの会社は、この働き方改革の第2段階に進んでいかなければならない時期になっています。