コミュニケーションが社員間で取れているか?

では、今の日本企業が特に見直していくべき「常識」とは何か。私は「インターナルコミュニケーション」「エンゲージメント」「人材育成」の3点だと考えています。

「インターナルコミュニケーション」とは、社内やチーム内でコミュニケーションを図る取り組みです。

手段として、社内報や社内イベント、社内SNS、グループチャットなどが挙げられます。読書会や勉強会を展開する企業も出てきました。社内コミュニケーション、社内広報とも呼ばれ、近年、ここに予算を投ずる企業が増えています。

第1段階の改革で労働時間が短くなったことによる物理的なコミュニケーション不足に加え、国籍や労働形態(正社員・派遣社員など)が異なる「人材の多様化」、リモートワークなどの「働き方の多様化」により、意識的に社員間のコミュニケーションの場を作る必要が出てきたのです。

日本企業はこれまでインターナルコミュニケーションにはあまり積極的ではありませんでした。しかし、社員間のコミュニケーションこそ、社員のモチベーションを上げ、仕事の効率化はもちろん、企業全体の成長につながっていくのです。従来のやり方では不十分だと心得、やり方を見直していきましょう。

社員に愛着心がない組織の問題点とは?

次の「エンゲージメント」とは、「組織に対する愛着心」や「仕事の誇り」のこと。

一般的に、社員のエンゲージメントが高いと、健全な成長欲求と問題意識が芽生え、本音で意見を言い合える関係が生まれます。すると、社員から自発的な改善の提案が出やすくなり、仕事の改革も進みやすくなります。

逆に、エンゲージメントが低い社員は仕事のムダや矛盾を内に溜めがち。その結果、職場の問題が顕在化しにくくなり、組織としてのリスクが高まります。

エンゲージメントを高める方法の一つとして、前述のインターナルコミュニケーションの活性化が挙げられます。また、仕事のノウハウが共有され、業務のプロセス化が実現できている組織ほど、社員のエンゲージメントが高まりやすいという傾向もあります。

例えば、社員満足度の高いサイボウズ[株]や日本マイクロソフト[株]は、社内にて共通のITプラットフォームを通じて社員同士が密接なコミュニケーションを取ることが可能になっており、誰が何をしていて、困ったときに誰に聞けばいいかがすぐにわかるようになっています。

さらに、過去の事例や資料にもいつでもアクセス可能。このように社内ナレッジが容易に活用できる仕組みを整えることが、業務効率化はもちろん、エンゲージメントの向上にもつながるのです。