V字回復のカギは「プラットフォーム事業化」
だがここで、異なる方向へと舵を切り直せば、活動できる市場もローカルからグローバルへと広がり、売上も利益も飛躍的に伸ばせる領域に踏み出せることになる。
その進化のプロセスは、「プラットフォーム型」「メディア型」「マネー型」と、3段階に分けると理解しやすい(図の右上)。
ここでは、最近のベンチャー企業に多い「プラットフォーム型」を説明しよう。
プラットフォームビジネスとは、人々が一同に集う「場所」をウェブ上に作り、そこで「何らかの価値を必要とする人」と「その価値を提供できる人」をマッチングする仕組みを運営することで、対価を得るビジネスモデルである。
誰でも知っている例で説明すれば、エアビーアンドビー(Airbnb)。自分の持ち家を「貸したい人」と「借りたい人」をつなぎ合わせる民泊事業だ。
その他の例としては、「運転したい人」と「移動したい人」をつなぐウーバー。「スマホ上で販売したい人」と「買いたい人」をつなぐメルカリ、そして「仕事を求めている人」と「働き手を探している人」をつなぐインディードといったように、短期間に業界を制覇するほどの可能性を秘めているのが、プラットフォーム型ビジネスに取り組む会社――プラットフォーマーの特徴だ。
V字の左か右かで、天と地ほどの違いが
プラットフォーマーたちは、なぜ急成長できるのか。
その最大の理由は、旧来のビジネスモデルが、会社の中だけで価値を作ろうとするのに対し、プラットフォーム型のビジネスモデルは、利用するユーザーたちが自分たちで勝手に価値を作っていってくれることだ。また、ユーザーが増えれば増えるほど、利便性が高まるというネットワーク効果により、カテゴリートップになれば、顧客が顧客をつれてくるようになる。
そして、既存のビジネスモデルと異なり、プラットフォーム内での取引が増えても、自社の商品や業務が大きく増えることがないために、一度固定費を回収してしまえば、その後、収益性は急速に高くなっていく。
さらに、一度プラットフォームができれば、広告収入を収益の柱とする「メディア事業」や、「マネー事業」つまり金融事業への進出も可能になってくる。
つまり、V字の左側にいるか、右側にいるかで、将来の事業拡張性は、天と地ほどの差が生まれる。そして、ずっとV字の左側にいる企業は、いくら会社の雰囲気が良くても、「誰もが忙しいのに儲からない」という状況に陥りがちなのである。
(神田昌典著『インパクトカンパニー』(PHP研究所)より)
神田昌典(かんだ・まさのり)経営・マーケティングコンサルタント、作家
上智大学外国語学部卒。ニューヨーク大学経済学修士(MA)、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士(MBA)取得。大学3年次に外交官試験合格、4年次より外務省経済局に勤務。その後、米国家電メーカー日本代表を経て経営コンサルタントとして独立。多数の成功企業やベストセラー作家を育成し、総合ビジネス誌では「日本のトップマーケター」に選出。2012年、大手ネット書店の年間ビジネス書売上ランキング第1位。ビジネス分野のみならず、教育界でも精力的な活動を行っている。主な著書に『2022――これから10年、活躍できる人の条件』(PHPビジネス新書)、『ストーリー思考』(ダイヤモンド社)、『成功者の告白』(講談社)、『非常識な成功法則』(フォレスト出版)など多数。アルマ・クリエイション株式会社代表取締役。一般社団法人Read For Action代表理事。(『THE21オンライン』2019年01月22日 公開)
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