株式等を売買した際、これまでよりも「受渡日」が1営業日短縮される可能性があることをご存じだろうか。具体的にどのような内容なのか、また投資家にはどのような影響が考えられるのだろうか。

いつから、何が変わるのか ? 導入の目的、メリットは ?

2019年7月,株券の受渡日,投資家,影響
(写真=PIXTA)

東京証券取引所は、株式等の決済期間短縮化の実施予定日を2019年7月16日 (火) (約定分) とすることに決定した、と公表している。具体的には株式等の受渡日を、現状の約定日 (T) 翌日より3営業日目 (T+3) から、2営業日目 (T+2) に短縮するというものである。決済期間が1日短縮されるわけだが、どのような目的で導入をするのか、またどのようなメリットがあるのだろうか。

目的としては、まずは国際競争力のさらなる強化が挙げられる。すでに欧米主要各国では決済期間の短縮化 (以下、T+2化) が実施されており、今後もこの流れは進んでいくものと見られている。日本もこのような状況を考慮したうえで「T+2化」を導入し、決済期間の違いによる日本市場への投資機会の損失リスクを軽減することにより、競争力の強化や利便性の向上を図れるメリットがある。

また、決済リスク等の軽減という目的もある。受渡日までの期間が長いということは、それだけ未決済の取引・資金が残っていることになり、可能性は高くないがその期間に何らかの事故等で決済が行われないというリスクが潜在的にある。T+2化を導入し、未決済の取引・残高を減らすことで、決済リスクや信用リスクの軽減のほか、決済までの管理の簡素化が図れるメリットがある。

このようにT+2化が導入されれば、さまざまなメリットが考えられる。投資家にとっても資金の流動性や投資機会の向上が挙げられる。売却時の現金化までの期間が短縮され、それだけ投資機会も増えることになる。

投資家にはどのような影響が ?

金融機関にとってはシステム変更によるコストや事務負担の増大などの影響が考えられるが、投資家にとってはどのような影響が考えられるだろうか。

大きな影響として考えられるのが「権利付最終売買日」の変更が挙げられる。T+2化によって株主優待・配当金の権利付最終売買日が現状よりも1日後ろ倒しになり、「権利確定日」までの期間が1日短くなる。現物取引の場合には大きな影響はないが、現物買いと信用売りを組み合わせた「つなぎ売り (クロス取引) 」を行う場合には注意が必要である。

現状では権利付最終売買日の翌日である「権利落ち日」が、T+2化後は「権利付最終売買日」となるため、現状と同じスケジュールでつなぎ売りをしてしまうと、株主優待・配当金を受け取る権利が無くなってしまうことになる。こちらについてはT+2化導入予定日が近づいてきたら、金融機関からの情報収集をこまめに行っていただきたい。

また、年末の取引にも注意が必要となる。例えばNISA口座を活用する場合、本年中の枠を使いたいのか翌年の枠を使いたいのかによって約定日 (T) が現状と変わってくる。さらに利益確定・損失確定を行いたい場合にも、約定日によってその損益が本年中になるのか翌年になるのかが変わってくるので、年末に損益通算を考慮して取引をする場合には注意が必要である。

導入時期や内容については適宜アップデートを

今回お伝えしたようにT+2化が導入されることにより、メリットはもちろん私達投資家にもさまざまな影響が出ることも考えられる。特に導入直後や年末、企業の決算月や年度末、節目の時期には注意して取引を行うことが必要となる。いずれにしても導入時期や内容についての情報に日々関心を持ち、導入後に慌てることがないよう、準備をしておきたい。(提供:大和ネクスト銀行

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