東証一部に上場する会社数が2018年12月21日現在2,131社となっており、8年連続で増加する見通しである。市況の好調さを表しているとも言えるが、国内には東証以外にも様々な取引所・市場が存在する。今回はそれぞれの取引所・市場の種類・特徴についてお伝えしていく。

国内の取引所・市場の種類と会社数

東証一部,東証二部,マザーズ,JASDAQ,違い
(写真=PIXTA)

証券取引所には、メインの取引市場である「本則市場」と、それ以外の市場 (例:新興企業等が上場する「新興市場」) が存在し、企業は時価総額や流通株式数等の基準を満たした市場に上場することができる。

【東京証券取引所】 (2019年1月28日現在 東京取引所グループHPより)
・東証一部:2,128社 (本則市場)
・東証二部:493社 (本則市場)
・マザーズ:276社
・JASDAQ:725社
・TOKYO PRO Market:29社
2017年売買代金:741兆4,260億円

言わずと知れた日本最大の証券取引所である。プロ投資家向け市場である「TOKYO PRO Market」以外の上記4市場が、一般の個人投資家が投資できる市場となっている。この4市場についての詳細は後述する。

参照:日本取引所「上場会社数・上場株式数」より
https://www.jpx.co.jp/listing/co/index.html

【札幌証券取引所】 (2018年12月13日現在 札幌証券取引所HPより)
・本則市場:47社
・アンビシャス:9社 (うち単独上場会社:8社)
2017年売買代金:2,956億円

本則市場と新興市場であるアンビシャスの2つの市場で構成される。まず、上場する場合に本則市場は対象企業の基準は無いが、アンビシャスは「北海道に関連する企業」に限定される。次に、本則市場は上場時の流通株式数や時価総額に基準を設けているが、アンビシャスは基準を設けておらず、北海道を拠点に活動する新興企業が上場しやすい環境となっている。本則市場についても北海道に関連する企業が多く、地元に根付いた企業が上場しているのが特徴である。

参照:札幌証券取引所「上場会社一覧」より
https://www.sse.or.jp/listing/list#cat22

【名古屋証券取引所】 (2019年1月28日現在 名古屋証券取引所HPより)
・名証一部:194社 (うち単独上場会社:4社) (本則市場)
・名証二部:82社 (うち単独上場会社:51社) (本則市場)
・セントレックス:12社 (うち単独上場会社:12社)
2017年売買代金:1,074億円

本則市場 (名証一部・二部) と新興市場であるセントレックスの3つの市場で構成される。セントレックスは名古屋・中部地区に限らず、全国から業種を問わず企業を受け入れている。また上場時の時価総額の基準を3億円以上としており、後述する東証マザーズの10億円以上と比較して、より新興企業が上場しやすい基準となっている。

参照:名古屋証券取引所「上場会社数」より
http://www.nse.or.jp/listing/number/

【福岡証券取引所】 (2018年12月31日現在 福岡証券取引所HPより)
・本則市場:94社 (うち単独上場会社:20社)
・Q-Board:16社 (うち単独上場会社:6社)
2017年売買代金:215億円

本則市場と新興市場であるQ-Boardの2つの市場で構成される。上場する場合、本則市場は対象企業の基準は無いが、Q-Boardは「九州周辺に本店を有する企業又は九州周辺における事業実績・計画を有する企業」に限定される。こちらも上場時の時価総額の基準が3億円以上となっているため、より九州やその近辺の新興企業がより上場しやすい基準となっている。地域に根差した企業を育成しようという姿勢が見て取れる。

参照:福岡証券取引所「上場有価証券の状況」より
https://www.fse.or.jp/files/lir_cmn/2018kaisya.pdf

東京証券取引所、主要4市場の特徴は ?

以上、日本には4つの取引所が存在するが、売買代金からもわかる通り、札幌・名古屋・福岡の証券取引所は東京証券取引所と比較して市場規模が小さくなっている。またこれら3つの取引所に上場している企業は、それぞれの地域に本社がある等、地元に根差した企業が多いのが特徴である。

それに対して東京証券取引所は市場規模も大きく、全国各地の企業が上場している。

東京証券取引所の主要4市場について、その特徴や上場にあたっての審査基準、投資リスク等の違いについて以下で紹介していこう。なおJASDAQには上場時の審査基準「企業の存続性 (事業活動の存続に支障を来す状況にないこと) 」「企業の成長可能性 (成長可能性を有していること) 」の違いによって「スタンダード」「グロース」の2つの市場が存在する。

東京証券取引所主要4市場の主な上場審査基準の違い

東証一部 東証二部 マザーズ JASDAQ
スタンダード グロース
株主数
(上場時見込み)
2,200人以上 800人以上 200人以上 (株券等の分布状況)
a.公募又は売出し株式数が1,000単位又は上場株式数の10%いずれか多い株式数以上
b.株主数:200人以上
流通株式
(上場時見込み)
a.流通株式数:2万単位以上
b.流通株式数 (比率) :上場株券等の35%以上
a.流通株式数:4,000単位以上
b.流通株式時価総額:10億円以上
c.流通株式数 (比率) :上場株券等の30%以上
a.流通株式数:2,000単位以上
b.流通株式時価総額:5億円以上
c.流通株式数 (比率) :上場株券等の25%以上
時価総額5億円以上
時価総額
(上場時見込み)
250億円以上 20億円以上 10億円以上
事業継続年数 新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して、3か年以前から取締役会を設置して、継続的に事業活動をしていること 新規上場申請日から起算して、1年前以前から取締役会を設置して継続的に事業活動をしていること
純資産の額
(上場時見込み)
連結純資産の額が10億円以上 2億円以上 正 (赤字ではない)
利益の額又は
時価総額
次のa又はbに適合すること
a.最近2年間の利益の額の総額が5億円以上であること
b.時価総額が500億円以上
次のa又はbに適合すること
a.最近1年間の利益の額が1億円以上であること
b.時価総額が50億円以上

参照:日本取引所グループ「上場審査基準」より
https://www.jpx.co.jp/equities/listing/criteria/listing/index.html

株主数、流通株式
上場時に一定数の株主が必要となり、株主数が多い市場ほど上場時の基準が厳しくなる。また発行株式のうち、上場する企業やその役員・家族、組合が所有する株式等、流通性が低い株式を除いた「流通株式」の数と全体に占める比率にも基準がある。市場に流通させる株式数・比率が高いほど基準は厳しくなる。

【株主数】東証一部>東証二部>マザーズ≒JASDAQ
【流通株式】東証一部>東証二部>マザーズ>JASDAQ

時価総額、事業継続年数
上場時の時価総額や、上場申請日を基準とした事業継続年数にも市場ごとに基準がある。時価総額の基準は東証一部が一番高く、事業継続年数は本則市場が3年、マザーズが1年となっている。なおJASDAQは上場時に時価総額と事業継続年数の基準は設けていないが、JASDAQスタンダードについては後述する「利益の額又は時価総額」の項目で、上場基準として一定額以上の時価総額が必要となる場合がある。

【時価総額】東証一部>東証二部>マザーズ JASDAQ (不問)
【事業継続年数】東証一部=東証二部>マザーズ JASDAQ (不問)

純資産の額
本則市場・JASDAQは純資産の額の基準を設けているが、マザーズに上場する際は純資産の額は問われない。またJASDAQスタンダードに上場する際は2億円の純資産が必要となるが、グロースの場合は赤字でなければ純資産の額の大小は問われない。

【純資産の額】東証一部=東証二部>JASDAQスタンダード>JASDAQグロース マザーズ (不問)

利益の額又は時価総額
本則市場とJASDAQスタンダードに上場する際は、直近の利益が一定額以上あるか、または時価総額が一定額以上あるか、どちらかの基準を満たす必要がある。マザーズについては前述した時価総額そのものは基準として問われるが、利益の額については問われることが無い。

【利益の額又は時価総額】東証一部=東証二部>JASDAQスタンダード マザーズ・JASDAQグロース (不問)

上場基準によって投資する市場を選択する

このように市場ごとに上場基準が異なり、各市場に上場している企業の特徴も変わってくる。株主数や流通株式の数・比率等が大きい本則市場は規模も大きく成熟した企業が多い傾向にあり、安定した収益を得られる反面、成長性については期待できない場合もある。高い収益性を求める場合には新興市場への投資を検討しても良いだろう。ただし新興市場へ上場する際は前述の通り、純資産の額や利益の額等が問われないため、今後の成長性に期待し、ある程度のリスクも取りながら投資するスタンスも必要になる。上場基準の違いに注目した上で市場を選択し、自身のリスク許容度に応じた投資を行ってみてはいかがだろうか。(提供:大和ネクスト銀行

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