23-24日、世界貿易機関(WTO)の一般理事会がジュネーブで開催された。韓国は日本の対韓輸出規制について「多国間貿易の秩序に甚大な影響を与える」と主張、2国間協議の必要性を各国に訴えた。これに対して日本側は「今回の措置はあくまでも安全保障のための管理体制の見直しであり、輸出を規制するものではない」と反論、議論は平行線を辿った。
そもそもWTOの一般理事会は加盟する164の国・地域に共通の通商課題を討議する場であり、特定の2国間紛争を調停する場ではない。出席した各国代表からは「われわれは関与しない」「議案として相応しくない」「理解に苦しむ」といった冷めた声が大勢を占めたという。日韓のあまりのヒートアップぶりに “関わりたくない” といったところだろう。
一方、日韓はそれぞれの拳を更に高く振り上げる。日本は8月中にも輸出管理上の信頼関係が崩れたことを理由に「ホワイト国」から韓国を除外する方針を固め、韓国もWTOへの提訴手続きに向けて具体的な作業に入った。
一連の経緯を鑑みれば通商上の対立の根本が「政治」にあることは明白だ。ゆえに「WTO協定」という表面上の議論において “すれ違う” のは当たり前である。議論(=感情?)の起点を “1910年” に置き続ける限り、併合した側と主権を失った側の溝は永遠に埋まらないだろう。であれば、それを向けとめ、そのうえでその克服を目指すのが大人の政治だ。
2018年、日本から韓国への輸出額は546億ドル、韓国から日本への輸入は305億ドル、渡韓した日本人は295万人、訪日韓国人は754万人、グローバルサプライチェーンにおける日韓連合の強さは言うまでもない。今更、“民” を一致するはずのない政治のレベルまで引き戻すことなど、是非とも勘弁願いたい。
瓜二つの双子の兄妹を巡るシェイクスピアの恋愛喜劇「十二夜」、書棚で埃をかぶっていた本のページを久しぶりにめくった。両国のトップに以下のセリフを贈りたい。
オリヴィア:「あなたの激しやすい感情によってではなく、あなたの深い英知によって受け止め、心を鎮めてください」(白水社、小田島雄志訳)
この場面のセリフはこう締め括られる。
オリヴィア:「今度のことも笑ってすませていただけるでしょう」(同上)。
今週の“ひらめき”視点 7.21 – 7.25
代表取締役社長 水越 孝