日本を代表するベンチャーキャピタルの一つ、SBIインベストメント。その名の通りSBIグループのベンチャーキャピタルだ。同社に新卒で入社し、途中、投資先企業の経営も経験しながら、一貫してベンチャー・スタートアップの経営・支援に関わり続ける田中正人氏に、ベンチャーキャピタリストの仕事、VCの面白さについて聞いた。(取材・濱田 優 ZUU online編集長/写真・森口新太郎)

田中正人(たなか・まさと)
SBIインベストメント投資部 部長。2007年法政大学卒業後、SBIインベストメント入社。ベンチャー投資歴12年の中で数々のIPO企業を輩出してきただけでなく、投資先企業2社で社長、CFOとしてベンチャー経営に参画し、M&AによるEXITを実現した経験も有する。Forbes JAPANの日本版Midas List(最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング)では2017年8位、2018年5位に選出された。

▼同じ特集の前回の記事はこちら
「俺が一番」の人はベンチャーキャピタリストに向いてない――磯崎哲也氏(下)

大学時代にシリコンバレーでVCと出合い、就活もVCに絞って行った

SBIインベストメント,田中,VC,ベンチャーキャピタリスト,ベンチャーキャピタル
(写真=森口新太郎)

――田中さんがベンチャーキャピタルに入ったのはどういうきっかけ、理由だったのでしょうか?

実は大学2年生の時にベンチャーキャピタリストになると決めたんです。2007年にSBIホールディングスに入社して今年で13年目なのですが、入社後すぐに投資部門であるSBIインベストメントに配属されました。大学では、プログラミングばかりやっていました。人と話すよりもJavaとかC言語を書くほうが多かったです(笑)。

ベンチャーキャピタリストを志したきっかけは、大学時代の2004年にGoogleが、2006年にmixiがIPOして、自分が日々使っていたサービスが大きく成長していく姿を見たことです。あとはこれも大学時代ですが、シリコンバレーに遊びに行って、向こうの空気、雰囲気を感じる中でベンチャーキャピタルという仕事に出合ったことです。

それで新卒で入ることのできるVCに絞って就職活動をしてSBIホールディングスから内定をもらいました。もちろん配属先はVCであるSBIインベストメントを希望していました。

――SBIグループは採用者も多いと思いますが、要望って通るものですか?

運がよかったのか、人事が適性を見抜いてくれたのか……、私が入社した頃は、グループ全体の収益に占める投資事業の割合が今よりも高く、グループに入る新卒の多くがSBIインベストメントへの配属を希望していました。

――大学時代に「俺もいつか起業するぞ」という人は多い気がしますが、そうではなく「ベンチャーキャピタリストになるぞ」と思われた理由は?

理由は2つあります。1番大きかったのは、アメリカの西海岸でtop-tier(一流)のVCやベンチャー企業の存在を大学時代に知ったことです。VCが投資した企業が上場して、売却益や時価総額がとてつもない金額になったニュースが鮮烈な印象的でした。Benchmark Capitalが投資したeBayが上場したのは1999年ですが、$6.7M(670万ドル)の投資が$5B(50億ドル)になりました。今の為替レートでいえば、7億円の投資が5千数百億円になったということです。これをニュースや本で読んで知って、「VCってすごく華やかな仕事だな」と思ったんです。

あともう一つが、社会的意義の大きな仕事をしたいという想いです。大学自体にプログラミングを学んでいた私はプログラマーの教典と言われる、ポール・グレアム氏の『ハッカーと画家:コンピュータ時代の創造者たち』という本に出合いました。ベンチャー界隈でもとても有名な本です。

彼は起業した会社をEXITして、ベンチャーキャピタルY Combinatorを立ち上げているのですが、そのグレアム氏が講演でベンチャーキャピタルの重要性を説いていて社会的意義がとても大きい事業だと思ったんです。自分のプログラミングスキルも活かせるし、今後もっと伸びる産業だと思って、VCを志したわけです。

企業のエース級人材が起業家に転じるようになった

――入社して12年の間に、いろいろな企業に投資をしてこられたと思います。一昨年、昨年とForbes Midas Listにもランクインされていますが、印象に残っている分野、会社、成功・失敗含めて教えてください。