人生100年時代を迎え、定年後も嘱託職員として会社に留まる人もいれば、セカンドキャリアとして起業を検討している人もいるだろう。

中小企業庁の「中小企業白書」 (2017年) によると60歳以上の起業家シニアが占める割合が高まっている。1972年には60歳以上の男性起業家は全体の8.4%だったが、2012年には35%を占めるまでに拡大している。女性のシニア起業家も同様、1972年に4.6%だった割合が2012年には20.3%まで増加した。定年退職を機に、積極的に起業にチャレンジするシニア層の厚みが増している。

前職の延長か、未知なる分野を開拓か

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(写真=Rawpixel.com / Shutterstock.com)

セカンドキャリアで起業に乗り出したシニアはいったいどのような分野で活躍しているのだろうか。日本政策金融公庫総合研究所の「シニア起業家の開業」調査によると、シニア起業家の開業業種として最も多いのは医療・福祉の分野で、飲食店・宿泊業が続く。

ビジネスを展開するにあたり不可欠な取引先はどうだろうか。シニア起業家のビジネスにおいては、他の世代の起業家と比較して、企業や官公庁などの事業所を取引先としている割合が高く、起業に乗り出すまでに構築した人脈を活用している実態が浮かぶ。

実際、シニア起業家は、起業した事業に関連する仕事の経験が30年以上ある割合が3割を超えている。一方、全く経験のない分野での起業も2割ほどあり、この割合は他の世代の起業家よりも高い。つまり、シニア起業家は、これまでの経験や人脈を活かして事業を展開する一方、未知の分野にも積極的に乗り出しているといえる。

こうした起業の傾向は、その動機にも表れている。同調査によれば、シニア起業家の開業動機として最も多いのは「これまでの経験や知識、資格を活用したい」というもので、「社会に役立つ仕事をする」、「年齢や性別に関係ない仕事をする」といった動機が続く。こうした動機は他の世代の起業家では、それほど高くない。

起業を考えるシニアにとって、これまでの経験をベースにして、ビジネスとして成立する取引先などが確保できている事業を展開するのか、あるいは冒険のような起業を選択するのか。いずれの起業スタイルにおいても、ある程度の準備期間は必要だが、特に後者の場合は、経験や知識が前者より劣る分、綿密に計画を立てておくことがポイントとなりそうだ。起業にあたっては、シニア自身がどちらのタイプに向いているのかをしっかりと分析することが求められる。

開業資金にも余念なし

準備期間とともにキーポイントとなりそうなのが起業にかける資金だろう。前述の調査では、シニア起業家が開業時に準備した自己資金は平均605万円という結果が出ている。この額は、他の世代の起業家よりも多い。自己資金の中央値は300万円だが、1,000万円以上の割合も4人に1人にのぼり、資金の準備にも余念がないのがシニア起業家の特徴である。

充実のサポート体制

準備期間や開業資金にめどがついたところで、いざ起業に乗り出すにあたり、プロのサポートも活用したいところだ。少子高齢化の進展とともに、人材不足が懸念されるなか、シニアの起業に寄せられる期待は大きく、さまざまなサポート体制が整備されている。

例えば、日本シニア起業支援機構は、起業にあたり幅広いサポートを提供している。各種セミナー、ビジネスメンターが起業にあたっての相談に乗ってくれるほか、起業に成功したものの経営状況が芳しくない際には、経営改善の支援もしてくれる。

また、このほか各自治体でのシニア向け起業の支援も充実している。東京都では創業サポート事業のサイトが用意されており、専門のアドバイザーによる個別相談、経営サポートに加え、信用金庫・信用組合を通して無担保・低金利の融資を提供しており、資金面においても手厚いサポートが整っている。

セカンドキャリアで起業に少しでも興味があれば、まずは各機関や自治体が主催するセミナーやサポートについてチェックしてみてはいかがだろうか。(提供:大和ネクスト銀行

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