〔株〕togo代表取締役社長 田中勇樹

togo,田中勇樹
(画像=THE21オンラインより)

街の飲食店を社員食堂のように利用できるサービス『green』。今年2月にローンチしたばかりだが、取材を行なった7月初めの時点で、すでに68社が導入し、都内だけでも約1,000店舗で利用できるようになっている。急成長の理由はどこにあるのか? greenを運営する〔株〕togoの創業社長・田中勇樹氏に話を聞いた。

企業の従業員に福利厚生を、飲食店に顧客データを

――街の飲食店を社員食堂のように利用できるというのは、greenの導入企業の従業員は、greenの加盟店で、通常よりも安い値段でランチを食べられる、ということですね。

田中 そうです。従業員のランチ代を数百円補助する福利厚生制度として、企業に導入していただいています。会計時にgreenのアプリの画面を提示すると、割引価格が適用されます。今は現金決済ですが、アプリ内でキャッシュレス決済ができるように開発を進めているところです。

――御社はどこで売上げを上げているのですか?

田中 導入企業から、従業員数に応じて、月額で料金をいただいています。また、加盟店からも、お客様1人につきいくらという形の完全成果報酬で、手数料をいただいています。

――割り引いたうえに手数料も払うとなると、飲食店は利益が少なくなりませんか?

田中 飲食店に割り引いていただいた金額は、当社が導入企業からいただいた料金からお支払いしています。ですから、実際には、割り引いていただいた金額と手数料の差額を、飲食店にお支払いしている形です。greenへの加盟については、完全に無料です。

greenに加盟すると、リピーターが増えますし、価格が安くなったことで注文数が増え、売上げが増えた店舗もあります。

また、飲食店にとっての加盟のメリットとして大きいのは、どれくらいの年齢で、どの性別の、どんな企業に勤めている、どのくらいの年収の人が来店したのかといった、お客様のデータが取れるようになることです。

飲食店には、利益を上げるためというよりも、夜に来店してもらうためのPRとして、ランチ営業をしているところが多いんです。ランチに来店する人のデータが取れれば、夜の来店客数を増やすために、どんな人に営業をすれば効果的なのかがわかります。

greenの会員限定のクーポン券を作って、何回か来店すれば幹事は無料にするなどの施策をしているお店もあります。今後は、そういった施策もアプリ内でできるようにしたいと考えています。

実際には、ランチを食べるのと同じ店舗に夜も行くという人は少ないと思いますから、例えば、渋谷の店舗でランチを食べている人に、夜は恵比寿の系列店に来てもらうよう、データを活用した営業ができないか、といった検証もしています。

――導入しているのは、どんな企業が多いのでしょう?

田中 新卒採用を積極的にしているような急成長中のベンチャー企業や、新興の大手IT企業が多いですね。本社には社員食堂があるのだけれども、他の拠点にはないため、不平等を解消するために導入していただいた企業もあります。

マンパワーグループ〔株〕が行なった調査では、「会社の福利厚生として良いと思うもの」の第1位は「住宅手当・家賃補助」で、その次が「食堂、昼食補助」という結果が出ています。ジムやホテルが利用できることよりも、日々の家賃や食費が安くなることのほうが、従業員としては嬉しいわけです。

10人もいないくらいの規模で、福利厚生制度が整っていないけれど、「せめてランチくらいは」と導入していただいているスタートアップもあります。

greenを導入すると、「良い会社だな」と思われて、採用の強化にもつながりますし、今後は、従業員の定着度や満足度とgreenの利用頻度の関係を分析するなど、人事システムと紐づけることで、企業にとっての付加価値をさらに高めていきたいと考えています。

――加盟店には、どんなところが多いのでしょうか?

田中 ジャンルも様々ですし、多店舗展開している企業もあれば、個人で経営されている小さなお店もあります。

ただ、手軽に食べられることを目的にしていますから、1,000円以上のお店については、人気店以外は、営業をしないようにしています。

――greenのオリジナルメニューもあるとか。

田中 例えば、〔株〕ラムラが運営している『魚魯魚魯』などで、greenの会員限定のオリジナル健康メニューを出していただいています。グルテンフリー麺を出していただいているラーメン店もあります。

これから、全加盟店で1品ずつ、会員限定のオリジナル健康メニューを出していただくことを考えています。