投信販売が急減速

投信動向
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2019年9月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、9月はバランス型に2,400億円の資金流入があった【図表1】。その他に国内債券、外国REIT、外国株式、国内REITにも資金流入があったが、どの資産クラスも500億円以下で小額だった。その一方で、国内株式からは2,200億円の資金流出があり、外国債券からも500億円弱の流出があった。ファンド全体でみると、バランス型への資金流入と国内株式からの資金流出が同規模であったこともあり、9月は600億円の資金流入となった。ファンド全体で3,500億円の資金流入があった8月から急減速した。

投信動向
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バランス型への資金流入は、8月の1400億円から1,000億円も増加した。9月は特定のバランス型ファンド【図表2:赤太字】が引き続き人気で販売が堅調だった上に、確定拠出年金専用ファンドに大規模な資金流入があった。

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株価上昇が株式ファンドの販売の重しに

その一方で国内株式は、8月の600億円の資金流入から9月は2,200億円の資金流出に転じた。4月の2,700億円の資金流出に迫る規模であった。国内株式のインデックス・ファンド(SMA専用、DC専用は除く)には8月に850億円の資金流入があったが、9月は一転して1,200億円の資金流出となった。それに加えて、9月は国内株式のアクティブ・ファンドからの資金流出も8月以上に増加した。国内株式はファンドのタイプによらず総じて売却された形である。9月は月を通じて国内株式が好調であったため、利益確定のため売却する投資家が多かったようだ。

また、外国株式も資金流入こそしたが、240億円と8月の1,560億円から大きく鈍化した。世界的に株価が上昇したことが影響したものと思われる。2019年以降の外国株式の資金動向(緑棒)をみると、国内株式(黄棒)と同様に2月以降は株価の動向に左右されている傾向が確認できる【図表3】。世界的に株価(MSCIコクサイ:緑線)が下落した5月、8月は資金流入がある一方で、上昇した2月、3月、4月、7月は資金流出、もしくは流入が鈍化した。なお、6月は株価が上昇しているが、1,000億円を超える資金流入であった。これは新設された外国株式ファンドの大規模設定の影響であり、既存ファンドに限ると資金流出だった。

外国株式では、足元でも投資家の人気を集めるファンド【図表2:青太字】がある。しかし、2018年以前のように投資家の人気を集めるテーマが少なく、また米中問題や世界経済の先行きに対する不透明感も強い。そのため、特に株価が高値圏にあると外国株式への投資を控える、もしくは保有している場合は国内株式と同様に利益確定するため売却する投資家が多いのかもしれない。

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トルコ関連ファンドが好調

9月にパフォーマンスが良好であったファンドをみると、トルコ関連ファンド(赤太字)が好調であったことが分かる【図表4】。9月は円安に加えてトルコ・リラ高も進行し、トルコ・リラは対円で4%以上上昇したことなどが追い風になった。

トルコ関連ファンドの中で純資産総額が大きいトルコ・リラ通貨選択型ファンドの資金動向(棒グラフ)をみると、2018年3月から足元まで資金流出基調が続いている。特にトルコ・リラが急落した2018年8月の「トルコショック」の時には100億円を超える資金流出があった。ただ、トルコショック以降は流出金額が大きくても40億円程度であり、小規模な資金流出となっている。純資産総額(線グラフ)をみても、トルコショック以降は2100億円程度で安定している。トルコショックを経験したにもかかわらず、その後もトルコ・リラ通貨選択型ファンドに辛抱強く投資している投資家が意外に多いようだ。

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前山裕亮(まえやまゆうすけ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員

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