◉昨年との比較〜順調に富を拡大させる億万長者達〜


まず、フォーブスの2013年版世界長者番付によると、資産10億ドル以上の億万長者は1,426人で、純資産合計5.4兆ドル(523兆円)と昨年に引き続き過去最高を更新しました。

なお、2012年の長者番付では該当者が1,226人、全員の資産の合計が4.6兆ドルになります。つまり、該当者数は約17.3%の増加、全員の資産合計は約16.3%の増加、資産億万長者1人辺りの資産額は約6.6%の増加となります。ちなみに、2012年の世界経済の成長率は、2.3%と言われていますので、経済の成長率を遥かに上回るペースで億万長者達の人数・資産は増加していると言えるようです。

また、国別では、米国442人(前年425人)、日本22人(前年24人)、中国122人(前年95人)、韓国24人(前年20人)、台湾26人(前年24人)、フランス24人(前年16人)、ドイツ58人(前年55人)、英国37人(前年37人)、ロシア110人(前年96人)などとなっています。
ちなみに、日本は前年より2人減り、台湾・韓国は前年より増えて人数では日本より多くなりました。

傾向を見ると、株高が続く米国や経済成長著しい中国で増加しているのは分かりやすいのですが、不況と言われる欧州でもフランス(16⇒24人)、ロシア(96⇒110人)と増加傾向にあることは興味深いです。

日本人のトップは昨年に引き続きファーストリテイリングの柳内氏で、資産133億ドルで66位(前年88位)となります。その後、更にファーストリテイリングの株価が上がっていますので、今は更に上の順位に来い込んでいるようです。また、日本人からのトップ100位圏内入りは柳内氏1人となります(フォーブス海外版では国内版と違い、サントリー創業家の佐治一族が入っていない)。


◉大富豪達の経歴など


ここからは、上位の億万長者達の経歴や近況など簡単なご紹介したいと思います。

◯カルロス・スリム・ヘルー氏(第1位)

日本では事業を行われていないため、あまり日本人に馴染みはありませんが、2010年にビル・ゲイツ氏を抜いて以来、世界長者番付の1位に君臨し続けています。なお、主な事業はTELMEXなどの通信会社になります。

以前、 この20年、億万長者の世界にはどんな変化があったのか1/3 にて、旧共産国が資本主義経済化するタイミングや発展途上国が新興国化するタイミングでは、インフラや資源産業等の分野で巨万の富を得る人が出てくるという話をさせて頂きましたが、その典型といえる人物かもしれません。TELMEXも元は国営企業でしたが、1991年に民営化されています

近年は、ビル・ゲイツ氏らと協力しての慈善事業にも力を入れているようです。

◯アマンシオ・オルテガ氏(第3位)

スペインのアパレルメーカーZaraのオーナーであり、トップ3位入りは初となります。
昨年に比較し資産を195億ドル増やしており、その増加額は今回のランキングで1位となります。

Zaraは新興国を活用しての生産コストの削減や、サプライチェーン方式を活用しての生産リードタイム(開発から販売までの期間)の短縮に成功しており、それが事業成功の核と言われています。この当りの事情は、12位のステファン・パーソン氏(H&Mオーナー)や柳内氏(66位ファーストリテイリングオーナー)と共通かもしれません。

参考: 2002年、グローバル化とIT革命が生んだ大富豪〜この20年、億万長者の世界にはどんな変化があったのか2/3〜

◯ウォーレン・バフェット氏(第3位)

バフェット氏のトップ3からの陥落は2000年以降で初となります。
ただ昨年に比較し、資産を95億ドル増やしており、降順はアマンシオ氏の急成長に抜かれたがためで、本人は好調のようです。

◯リリアンヌ・ベタンクール氏(第9位)

世界長者番付にて女性の第1位となります。
世界最大の化粧品会社ロレアルの創業者ウージェンヌ・シュエレールの一人娘として生まれました。

以前から合法的に政党や政治家への献金を行ってきましたが、2010年以降では、サルコジ前フランス大統領の選挙キャンペーンを非合法的に支援していた疑いが報道されています。

◯ベルナール・アルノー氏(第10位)

ルイヴィトンなどの高級ブランドを束ねるLVMHの総帥です。
ベルナール氏のフランスでは、2012年に就任されたオラント大統領が富裕層に対して75%という超高額所得税の導入を目指しており、ベルナール氏はベルギーへの経済亡命が噂されています。

参考: 所得税75%の衝撃〜フランスの富裕層脱出にみる日本の将来〜

◯マイケル・ブルームバーグ氏(第13位)

第108代米ニューヨーク市長であり、金融情報端末ブルームバーグの創業者です。
昨年の20位から、13位にランクアップしました。資産も220億ドルから270億ドルに増加しています。

政治家としても優秀であり、2010年の人気調査で過去30年間の歴代市長のトップに輝きました。

◯ジェフ・ベゾス氏(第19位)

Amazonの創業者であり、世界CEOランキングでは第2位に輝きました。第1位が故スティーブ・ジョブズ氏であるため、実質1位と言えます。

参考: 世界の偉大なCEOのベスト10〜長期に成果をあげるCEOの条件とは何か?〜

アマゾンの株価が2012年の集計時に比較し40%上昇しており、28位184億ドルから19位252億ドルに上昇しています。

以上、2013年の世界の億万長者の動向とランキングをお伝えしました。
印象としては、ランキングの上位陣はまだまだ80年代や90年代に頭角を現した人物が中心のようですが、徐々に変化が起きているようにも思えます。今後も新興国の成長や技術革新による新産業の誕生が続いていくとすれば、ランキングの上位に更に大きな変化が起きるかもしれません。

引き続き今後の動向にも注目していきたいと思います。

BY TOMB

photo credit: inju via photopin cc