医者が教える「ヤブ医者」の見分け方
金子俊之(かねこ・としゆき)
とうきょうスカイツリ―駅前内科院長・医学博士。1979年東京都生まれ金沢医科大学医学部卒。順天堂大学大学院医学研究科修了。日本リウマチ学会専門医・指導医。日本内科学会認定医。リウマチ・膠原病内科の名医。幼少の頃より動物や人体に興味を持ち医師を目指す中、基礎研究と臨床両方の経験を積めるリウマチ・膠原病を専門に力を注ぐ。大学卒業後は初期研修からリウマチ・膠原病領域で権威のある順天堂医院で学び、日本リウマチ学会専門医・指導医を取得。患者は30〜40代といった比較的若くリウマチを発症した女性が多く、都内だけでなく、関東近郊・全国からも来院する等、好評を得ている。また、専門分野に留まらず、医学業界(病院・医者)について鋭い発言を放つ等、今話題を呼んでいる期待の若手医師!

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お金がなくても治療は受けられる

医療従事者は当然知っていますが、一般的には浸透していない便利な仕組みや制度があります。

それは、

・高額療養費制度
・治験
・オンライン診療

などです。高額療養費制度を知らない人の中には民間の高額な医療保険に加入してしまう人も少なくありません。

しかし、それは意味のない行為といえます。

なぜなら、日本の医療は国民皆保険制度となっているためさまざまな治療が本来は公的な保険や高額療養費制度などでカバーできるからです。

それではそれぞれの便利な制度について個別に詳しく解説してまいります。

~高額療養費制度について~

日本には大変便利な医療制度があります。

その一つが高額療養費制度です。

高額療養費制度とは、年齢や所得に応じて上限額が定められているので、いくつかの条件を満たすことで、経済的な負担をさらに軽減できる国の医療制度です。

通常は病気やケガで医療機関にかかった場合は、健康保険証を提示することで自己負担額はおおむね3割となります。

しかし大きな事故にあったり、病気になって手術や長期入院が必要になったときには多大な費用がかかるイメージがあります。

しかしその時には、高額療養費制度を利用することで、手術代が何百万円もかかったとしても、その人の所得に応じて支払う上限額は決まってくるのです。

ですので何百万円も支払いがかかるということはないのです。

便利な高額療養費制度ですが、中にはこの制度について詳しく説明してくれない病院やクリニックもあります。

万が一、長期入院が必要になったときはこの高額療養費制度を利用できる、ということを頭にしっかりと入れておいてください。

民間保険の中には先進医療特約というものがあります。

これは加入する必要がないと思っています。

先進医療とは、一般の医療水準を超えた最新の先進技術を提供する医療のことで、厚生労働大臣から承認された医療行為のことを意味しています。

病気の種類や治療内容によっては保険適用のものと保険適用外のものがありますが、技術料はすべて保険適用外で全額自己負担です。

ほとんどの人が先進医療特約に加入しておかないと大きな病気をしたときに手術代が高くなるとか良い治療が受けられないと勘違いしているようですが、全然そんなことはありません。

前述のように、かりに病気になって手術が必要になった際、自己負担が100万円以上かかったとしても高額療養費制度を使えば数十万円で収まります。そのため、わざわざ高い月額費用を払ってまで民間の先進医療特約に入る必要はなく、この治療が必要になるケースはほとんどないということだけは知っておいてください。

もしも先進医療特約を無理に勧められたら、それは詐欺の領域なので注意しましょ う。

~最新の治験のメリットについて~

二つ目の便利な医療制度は最新の治験です。

治験というと、自分が実験動物になるような悪いイメージを持つ方もいるかもしれ ません。

しかし、それは大きな間違いです。不安に思うことは何もありません。

クリニックレベルでできる治験は、安全性がある程度確認されている薬の最後の確認といったフェーズが多いため、比較的安全と言えます。

それにそういった専門的な治療の治験ができる医療機関というのはもともと限られています。

専門治療の治験をおこなえる医療機関というのは、つまりその疾患に対して高い専門性があるという証にもなります。

さらなる利点としては、治験を利用することでメーカー側からは医療費や交通費などが出ることがほとんどですので、最新の治療を受けたいけれど経済的に苦しい、といった方にとって治験はむしろチャンスでもあります。

また治験をおこなう際には治験専門のコーディネーターがおり、治験についてきちんと話をしてくれます。

治験に興味のある方は自分が納得するまで話をしてみることをおすすめします。

~オンライン診療について~

オンライン診療は、将来的に絶対に必要な診療だと思っています。

まだまだ始まったばかりのオンライン診療ではありますが、国自体がこのニーズを確証しているので今後はもっと普及していくと思います。

私のクリニックでオンライン診療の導入を始めたのは昨年からですが、まだ導入初期で適応ルールが非常に厳しいため、適用できる患者さんがなかなかいないというのが現状です。

導入が難しい点は、国の制度にあります。

技術的には、ただTV電話を通じて患者さんの病状を聞き、それに対して薬を処方するだけなのでまったく難しくありません。

しかし、診療報酬の面でいまは問題があります。

オンライン診療と対面診療でどれくらい診療内容に差が出るか? といった研究はこれからなので、今はまだニーズが少なくても数年後には普及するシステムだと思っています。

日本医師会が懸念しているのは、オンライン診療は対面診療にくらべて診療の質が著しく下がるのではないかという点です。

実際に現場に出ている医者として言わせていただくと決してそんなことはないと思います。

もちろん、関節リウマチとか一部の感染症の患者さんたちに対しては、実際に診察しないと薬を処方することはできません。

しかし生活習慣病の患者さんで症状が安定している方であれば、対面診療をしたからといってオンライン診療以上の情報が得られるわけでもないと思います。

オンライン診療で十分に対応できる病状の患者さんをしっかりと選べば、オンライン診療というのは患者さんにとっても医療機関にとっても、利便性が高いシステムであり、とくに遠方にお住まいの方や多忙で来院が難しい方にとってはとてもニーズがあります。

オンライン診療が普及すれば医療の利便性・簡便性は向上するため、初診費なども下がるといったメリットも生まれます。そのため、将来的には絶対に普及してほしい診療だと思っています。