すごい会計思考
金川 顕教(かながわ・あきのり)
公認会計士、経営コンサルタント、ビジネスプロデューサー、投資家、事業家、作家。三重県生まれ、立命館大学産業社会学部卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格し、世界一の規模を誇る会計事務所デロイト・トウシュ・トーマツグループである有限責任監査法人トーマツ勤務を経て独立。数多くの成功者から学んだ事実と経験を活かして経営コンサルタントとして独立し、不動産、保険代理店、出版社、広告代理店など様々なビジネスのプロデュースに携わる。『これで金持ちになれなければ、一生貧乏でいるしかない』『すごい勉強法』『すごい副業』『公認会計士で起業家だから教えられる「すごい会計思考」』(すべてポプラ社)など著書多数。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます

どこまでを経費として考えるか?

会社員の場合、基本的に自分が住んでいる家の家賃、プライベートで使った交通費、食費などは、当たり前ですが、自分の働いている会社に払ってもらう経費には入りません。自分が毎月もらう給料の中から払います。

でも、仮に会社員の仕事をしながら副業をして、年間100万円の収入があったとします。その場合、副業に関係のある会食や移動に使ったタクシーや電車の費用などは、すべてその副業の経費に入るのです。

同様に、自宅で副業をしている場合は、自宅の家賃も、事務所代として半分程度までは、経費で落とすことができます。仮に家賃が年間100万円だったとすれば、そのうちの50万円は経費に入れることができるのです。

そしてそういった経費が100万円かかったとします。つまり100万円売り上げて、100万円の経費を使ったら、最終的な売上の金額は差し引き0円。この場合、0円の売上にかかってくる税金、つまり所得税は0円になります。

副業で100万円プラスの収入があって、100万円を経費として計上すれば、所得税はかからないので、今までと同じ生活をしていても、100万円プラスの生活が税金を支払わずできるというわけです。

また、何が経費で何が経費にならないかは、副業や起業の業種や職種が何かによっても違ってきます

例えば、副業でアフィリエイトをして、年間で100万円を売り上げたとします。何も経費に計上をしないと、100万円分の売上にそのまま税金がかかってきます。

でも実際は、アフィリエイトをするために、PC代も、回線使用代もかかっている。資料の本を買ったり、アフィリエイトの勉強会に参加していたとしたら、その本代や参加費用、会場までの交通費も経費に入ります。

さらに事務所代として家賃なども、この売上を上げるための経費として計上すれば、払う税金の金額が変わってきます。

経費にはさまざまな種類がある

経費と一言で言っても、さまざまな種類があります。

例えば、ハンバーガー屋さんを始めたとしましょう。ハンバーガー屋さんを経営していくには、ハンバーガーの材料代、お店の家賃や電気、ガス、水道代、さらにフライヤーやホームページ、ブログなどを作った場合の費用などがかかります。人を雇った場合には、その人に払うアルバイト料や給料ももちろん経費です。

ハンバーガーの材料、つまり商品の材料になるパン、肉、トマト、水などは「原価」という考え方です。水を頼んで店に持ってきてもらった運送費は「荷造運賃」ですし、事務所の賃料は「地代家賃」、電気代や水道代は「水道光熱費」というような分け方で、費用に計上していきます。

さらに集客のためのブログを作ったとします。ブログを作るのにサーバー代とドメイン代がかかっており、文章はプロのライターさんに記事を書いてもらいました。これらも全部経費です。サーバー代は「通信費」、ライターさんの原稿料は「原稿料」になります。

もし、飲食店経営のコンサルタントなど、アドバイスを受けるために人と会ったときに支払った食事代などがあるなら、それも「会議費」や「接待交際費」と呼ばれる経費。もちろん事業を成功させるための知識を得るために参加したセミナー参加費や新聞代、書籍代も「研修費」や「参考書籍代」という経費に分けられます。

こういった分類された1つ1つの項目を「勘定科目」と呼び、何に使われたかによって同じ種類ごとに分け、それを計上して計算していきます。

そしてこの経費を分類することを仕訳と言います

勘定科目は、さらにその内容によって、主に原価と販売費に分かれます。

原価は商品を作るための材料費。

販売費は、細かいことを言えば、会計上の用語では「販売費及び一般管理費」と言い、PLにも記載される項目です。

PRや広告宣伝などにかかる費用のことを販売費と言い、減価償却費、租税公課、交際費、旅費交通費、間接的な人件費といった費用のことを一般管理費と言います。

こういった仕訳や経費の計算は、税理士さんにお願いすればよいことですが、販売費及び一般管理費の項目に何があるのか、減価償却費とは何か、賃料、人件費、水道光熱費、交際費とは何かなどは、副業や起業をするつもりなら知っておくべきことです。

毎日の生活で仕訳をするくせをつけよう

一番理想的なのは、副業を始めたり、起業をしたら、毎日の生活をしながら仕訳をするくせをつけること

すべての生活を仕訳していくのです。

例えば、水を買ったときは、あ、これは経費で、飲食代に入るなと。現金で買ったから現金が減っているな、と。もしカードを使った場合は、未払金になるなと。未払金として計上して、1カ月後に150円が減るのかなとか、最初は、できればお金に関するすべての行動を1つ1つ仕訳をしてみると、お金の流れが見えてきます。

究極を言えば、会計は、すべての行動を数値化していくという行為でもあります。

一番の理想は、日々を生きながら、これって何の勘定科目に入るんだろう? と思いながら生活することです。そして使った経費は、できれば、BSに入るのかPLに入るのかまでを考えてみてください。

直接的な経費、間接的な経費とは?

経費に対する1つの考え方として、直接的か間接的かという考え方があります。それはその経費が、その会社の売上のために、どう関わっているのかをベースに考えていきます。

PL上で言うなら、売上原価が直接的な費用で、販売費が間接的な費用になります。

ちなみに、商品を生産して売っている企業でしたら、人を雇うにしても、すべてが人件費というわけではありません。工場の機械ラインを流して作業している人は、売上原価に入ります。

この話はちょっと複雑ではありますが、同じ人件費でもどういった活動に払われているかによって分け方が違うことは、頭に入れておいてもらえるといいでしょう。

起業をすればさらに経費の幅が広がる

経費の仕組みの中には、副業をして個人事業主としてやっていくよりも、会社にした方が、節税という面でメリットになることが、いくつかあります。

その中で、割と見落としがちなのが、出張の手当です。

起業をするときに、会社の決まりごととして、旅費規定を作っておけば、出張をする際に日当を払うことができます。しかも、この費目は、非課税扱いです。

僕の場合は、国内の出張は、1日2万5000円に設定しています。海外出張の場合は1日5万円です。もちろん、ホテル代や交通費は全額別途経費として計上します。

日当の方は、単純に個人の資産にもなりますから、ぜひこれは起業する人は、作っておいた方がいい規定です。

スーツは経費になるかならないか

経費になるかならないかで、微妙な判断になるのは、スーツなどの衣服や、時計、バッグといった小物です

衣服で経費になる場合は、まずは仕事用の衣装として必要な場合。これは純粋に「衣装代」として経費に計上されます。例えばジャニーズのステージ衣装のように、あきらかにプライベートでは着ないよね、というような洋服は、経費と認められます。経営コンサルタントが、自身のHPやセミナーのフライヤーにスーツを着て出ている場合、そのスーツ代も経費として認められることが多いです。

アパレルの会社と提携していて、業務委託契約で広告用として着ていたり、スーツの着こなしセミナーなどで自分が話しているなら、それも経費として認められる可能性が高いといえます。

時計や小物などは、本人のブランディングとして必要な場合もあります。

例えば、モンブランのボールペン。起業している経営コンサルタントが、「書類を書いたりするのにはこれでなくてはならない。このボールペンは自分の仕事の道具である」と、ブログで紹介していたとしたら、これは立派な経費です。しかも、「モンブラン」という一流ブランドのボールペンを使っているということが、そのコンサルタントのイメージアップ、つまりブランディングにもつながっています。

YouTuber が、時計などの小物を実際に使ってみたりして、自身の動画で紹介している場合なども、これは経費として認められやすいです。

このように、何が経費になって、何がならないかという考え方は、すごく重要な概念です。

起業をして、会計のことを税理士さんにお願いするにしても、自分自身である程度は知っておかないと、上手に節税をすることができません。経費に入れることができるものはきちんと経費に計上すること。それをしないと、本来納めなくてよかった税金を払うことになってしまいます。