すごい会計思考
金川 顕教(かながわ・あきのり)
公認会計士、経営コンサルタント、ビジネスプロデューサー、投資家、事業家、作家。三重県生まれ、立命館大学産業社会学部卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格し、世界一の規模を誇る会計事務所デロイト・トウシュ・トーマツグループである有限責任監査法人トーマツ勤務を経て独立。数多くの成功者から学んだ事実と経験を活かして経営コンサルタントとして独立し、不動産、保険代理店、出版社、広告代理店など様々なビジネスのプロデュースに携わる。『これで金持ちになれなければ、一生貧乏でいるしかない』『すごい勉強法』『すごい副業』『公認会計士で起業家だから教えられる「すごい会計思考」』(すべてポプラ社)など著書多数。

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利益が出たら、投資はすべき?

事業が軌道にのり、個人の資産でも会社の資産でも利益が増えてくると、それを投資にまわそうと考える人は多いと思います。

僕は、会社のお金では、株式投資やFXとか仮想通貨のような投機的な金融への投資などはしていません。事業投資だけです。

基本的に起業したばかりの人には、そういった活動は、あまりおすすめできません。金融商品に投資するよりは、やはり事業に集中することが重要だと思います。

僕自身は、会社から役員報酬をもらって、普通の医療保険、ドル建ての積み立て保険、生存還付給付金付終身医療保険に加入するなど、現金預金以外にも資産の分散はある程度しています。

ただ、これから副業とか起業をしようと考えている人は、基本的に事業で儲けたお金は事業に投資をして、事業収益を増やすのがおすすめです。

株やFX、投資信託、保険などに入るのは、もうちょっと先というか、個人の資産が増えてから、会社ではなく個人のお金でするのが良いと思います。

したがって、金融機関などが提案するような資産のポートフォリオも考える必要がなく、事業に利益を投資するべきです。例えば、それは人材への投資、広告宣伝費だったりとか、事務所代だったりとか、ホームページの制作費用だったりとか。売上を上げるための事業投資をしっかりしていった方がいいと思います。

投資は長く続けないと意味がない

投資をする際に、すごく重要なのは、いくら投資して、いくら返ってくるかという「リターン」をよく見極めることです。

100万円投資して、リターンは90万円なのか120万円なのか。もちろんその投資とは、金融商品や保険への投資ではなく、事業拡大のための人材への投資や広告宣伝費などへの投資を指しています。

この投資で重要なのは、最初はテストマーケティングだと思うことです。最初から投資がうまくいくことは、ほぼありません。

第1四半期、第2四半期と言われるように、3カ月、6カ月、9カ月、1年といったタームで、定期的に結果を見ていくことが大事です。1カ月間投資したからすぐにプラスになるほど、事業の世界は甘くないのです。

しっかり1年間投資しきって、翌年、再来年とどんどん投資のリターンをプラスになるようにチャレンジし続けるというのが、非常に重要です。

でも、見ていると、事業に投資して損をすると、すぐにやめてしまう人がほとんどです。

このことは、分かりやすく言うと、一般の会社員が株式投資をして損をしたらすぐにやめるのと一緒です。初めて買った株でうまくいくほど株の世界は甘くないですし、それは投資の世界も同じということです。

勉強やスポーツだって、同じだと思います。ちょっと勉強をして入学試験に受かる、ちょっと勉強をしてTOEICで目標点数を取れる、ちょっと野球を練習して3割バッターになれる、どれもすぐにそうなれるかというと、それはあり得ない話なのです。

失敗を積み重ねてその失敗から原因を究明していく。

ビジネス用語では、PDCAサイクルと言ったりしますが、投資の計画を立てて実行し、駄目な点があったら、そこを改善して再調整して、という形で進めていく。大事なのは、駄目だった原因をしっかり追究して改善すること。数字も確認していくこと。そして、この流れを1年、2年、3年と続けていくと、事業はどんどん良くなっていくはずです。

失敗したら原因と結果を振り返ってみること

何に投資したら、結果がどうだったのか、何で損したのか。投資をしたらしっぱなしではなく、原因と結果や因果関係をきちんと検証することはとても大事です。これをしないと、投資をしている意味がありません。

例えば自社商品をPR&販売するイベントを計画したとします。

広告宣伝費をかけたけれど、お客様が全然集まらなかった場合、それは、広告の文章が悪かったのか、それともフライヤーの写真が悪かったのか、それともそもそもの告知の方法が悪かったのか。

イベントに、お客様は集まったけれど、商品は全然売れなかったという場合もあるでしょう。その場合はイベント自体が駄目だったのかもしれないし、商品のディスプレイが悪かったのかもしれません。

自分の広告代理店やデザイナーさんへのオーダーの仕方が良くなかったのか、それともお願いした広告代理店が良くなかったのか、うまくいかなかった原因には、いろいろな理由があるはずです。

そこはしっかり考えることが仕事だと思います。ポンとお金を出したら、ポンと売上が上がった。だから広告を出すことをずっと続けている、ということなどあり得ないわけで、しっかりとその分析を通年かけてやるというところが、大事だと思います。

もちろんお金を投資して損したから、「うわー、もうやめよう!」となる気持ちは分かります。ですが、すぐにそう思わずに数字としっかりと向き合って、どうしたらプラスになるのか、というところがきちんとできないと、投資で結果を出すことは無理だと思います。

まして、本業以外での金融商品への投資などは、損をしたときに、原因と結果を分析して、改善することはまずないでしょう。でも、本業での事業投資でしたら、必ずそれはするべきです。そういった意味でも事業での投資は、投資をした後に軌道修正、改善ができるものにしか、投資をしては駄目だと思います。

ですから、事業への投資は、特に最初は、ある程度は勉強代という感覚でいた方がいいかもしれません。初期のころに、損をすることが、最終的にすごいプラスになることがたくさんあります。僕自身の経験でもそうでした。

たくさん三振していた人が、たくさんホームランが打てるようになることもあるし、下手な料理しか作れなかった人がシェフになることがありますよね。

それと一緒で、投資が失敗したから一生ダメなのかというと、それは繰り返し続けるしかないと思っています。

結局、投資で損をしているということは、一方で、投資で得している人もどこかにいるということなので、何かが自分に足りないんです。必ず。そしてそう思うことがすごく重要です。

個人の投資に不動産以外はおすすめしない理由

起業をして、それが軌道にのって、どのくらいの余剰資金ができたら、個人的な投資にまわせばいいか? ということをたまに聞かれたりします。

これは難しい質問ですが、個人の場合は、それなりの資産ができていること、その投資で損をしてもあまり痛手にはならないことが目安でしょうか。

例えば100万円の余剰資金を金融商品に投資した場合、3%だと年3万円、月に2500円のお小遣いが増えますという程度です。

でもこの場合、そもそも最初に100万円を投資しているので、会計的には100万円の元金がなくなっています。ですので、月に2500円プラス欲しいね、100万円余剰資金があるから、が、自分の中で「よし」と納得できるのだったら、やってもいいんじゃないかと思います。

でも、100万円の余剰資金を200万円に増やしたいというのが本音です。

もちろん僕自身も、FXで倍にするとか、バイナリーオプションで倍にするとか、そういう話を持ちかけられたりもしますが、ここで利益を出せる人というのは、数年間かけて勉強をして、さらに投資と失敗を繰り返すことのできる人です。そういうことは、ごく一部の人にしかできません。そしてこれらの商品に関わることは、投資というより投機です。

例えば、ジェイコム株で一躍有名になった投資家のB・N・Fさんみたいなすごい人たちがいます。彼らはとても強い思いで為替とか株価とかチャートなどに向き合い続けて結果を残していますが、あそこまでいくと、投資というよりも事業だと思います。ですから、それぐらいの気持ちと労力をかけないと結果は出ないものなのだと思います。

また、何かにお金を投資したら倍になりますよ、というような話で、お金を集めている人や会社があれば、それは詐欺だと思ってほぼ間違いありません。僕も、そうした話に乗って、お金が飛んだことが何回かあります。

不動産投資の場合は、年利10%といったような話もありますが、それでも10%です。余剰資金で普通の投資をしようとなったときに、3%の場合、1000万円あっても、年に30万円のプラスです。つまり、年利3%の投資では人生はあまり大きく変わらない。でもそれぐらいの規模での投資がまずはおすすめだと思います。

先にもお話ししましたが、僕個人としては普通の医療保険、ドル建ての積み立て保険、生存還付給付金付終身医療保険に加入するなど、現金預金以外に資産の分散はある程度しています。

そして投資という意味では不動産投資しかしていません。その理由はリスクが低くて利回りがいいからです。

何か個人的に投資をしたいというのなら、不動産投資をおすすめしますし、それ以外はリスクも高いのでおすすめできません。