メモで未来を変える技術
小野 正誉(おの・まさとも)
株式会社トリドールホールディングス 経営企画室 社長秘書・IR 担当。神戸大学経済学部卒業後、大手企業に就職するも1 年で退社。 その後、外食企業で店舗マネージャー、広報・PR 担当、経営企画室長、取締役などを歴任。2011 年より「丸亀製麺」を展開する株式会社トリドールホールディングスに勤務。 転職してわずか3 年で社長秘書に抜擢。 入社後8 年の間、国内外に1,700 店舗以上を展開する グローバルカンパニーに至るまでの成長の軌跡を間近に体験する。近著『丸亀製麺はなぜNo.1 になれたのか? 非効率の極め方と正しいムダのなくし方』(祥伝社)は、各メディアで取り上げられてベストセラーとなり、海外版も出版されている。他、著書に『メモで未来を変える技術』(サンライズパブリッシング)がある。1972 年奈良市生まれ。和歌山市育ち。日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー。

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04 メモ帳の力が「家庭」を築いてくれた

私は、メモ帳に書き込む内容を、ある程度ジャンル分けしています。

ここまでは仕事に関するストーリーをご紹介しましたが、他にも「家庭」「趣味」「教養」「お金」「健康」に関する「夢のかけら」をメモ帳に書き込んでいます。少し大ざっぱに思えるかもしれませんが、大体の「夢のかけら」は、この5つのどれかに当てはまるのです。

ここではより身近な「家庭」について、どんな夢が叶ったのかをお話ししましょう。まず前提として、「家庭」を持つためには結婚しなくてはいけません。ところが私には、17歳から27歳まで恋人すらいませんでした。女友達は多いものの、恋愛関係に発展させることができない。結婚はおろか、恋愛すら夢のまた夢という状況だったのです。

そこで私は、メモ帳にこんな書き込みをしました。

  • ベストな人と出会い、結婚する

外見や性格などには一切こだわらず、自分にとって「ベスト」と思える人との出会いを願ったのです。ただこの時なんとなく、自分はイニシャルが同じ女性と結婚するような予感がしました。

結論からお話しすると、私はこのときすでに「ベスト」な相手と知り合っていました。そしてある日、男女をまじえたグループで食事を楽しんだ帰りに、友人が運転する車に1人の女性と乗り込んだのです。

彼女とは顔見知り程度の関係でしたし、特にその日特別な出来事があったわけではありません。ただその時、彼女と結婚するとイニシャルが一緒になることにふと気付いたのです。「この人だったのか!」と直感で、素直に納得できたことを覚えています。

その2ヶ月後に交際が始まり数年後、結婚することになりました。そして、「家庭」を築くことができたのです。メモ帳の効果を何度も体験していた私には、とても偶然とは思えない出来事でした。「仕事」に続き「家庭」に関する夢まで叶い、公私ともに人生が一変したのです。

いずれも自分からアクションを起こしたわけでもなければ、具体的に努力したわけでもありません。ただメモ帳に「夢のかけら」を書き込んだだけで、理想の未来を手に入れることができたのです。

05 自分自身の夢

「家庭」を築くことができた私は、2人の子どもにも恵まれました。

もちろん仕事や仲間も大事にしていますが、私が最優先するのは妻と子どもです。自分自身の個人的な夢などもありますが、それ以上にこの3人との絆を大切にしています。どんなに忙しい時期でも必ず言葉を交わし、できる限り家族と過ごす時間を設けられるよう努力していました。

ですから、自分が家族と離れて暮らすことになるなど、夢にも思いませんでした。私は今、地元を離れて東京・品川区の社宅に単身赴任しています。もちろん、こんな「未来」をメモ帳に書くはずはありません。異動を言い渡されたときは、ショックでしばらく立ち直ることができませんでした。

しかし、ある時メモ帳を読み返していて、以下の内容に目が留まりました。

  • 一人で集中できる書斎を手に入れる
  • 読書量を増やし、知識のインプットを心がける
  • 毎日適度な運動をする
  • 料理を作れるようになり、レパートリーを増やしていく

書斎以外は一見叶えやすそうな夢ですが、日々働き、家族優先で過ごしているとなかなか難しいものばかりです。どれも頻繁には思い描くものの、「これは難しいだろうな」と感じていました。

しかし単身赴任によって、これらの夢がすべて叶ったのです。書斎ではないものの、社宅は一人で集中できる環境です。しかも都内とはいえ閑静な立地にあり、読書には打ってつけの場所でした。図書館も近所にいくつもあるので、単身赴任してから一気に読書量が増えたのです。

それに、社宅から会社までは徒歩20分の距離なので、自然と適度な運動ができるようになりました。また、家にいたころは妻に任せきりだった家事も、自分でしなくてはいけません。健康のために自炊もするようになり、レパートリーも少しずつ増えています。

ずっと心の片隅にあった自分自身の夢が、思わぬ形で現実になっていたのです。家族と離れて暮らすことに抵抗はありましたが、単身赴任によって「現状では無理だった夢」がいくつも叶ったのは事実です。またしても、想定外の形でメモ帳の奇跡が起きたのです。