11月の生産は2ヵ月連続の低下

鉱工業生産
(画像=PIXTA)

経済産業省が12月27日に公表した鉱工業指数によると、19年11月の鉱工業生産指数は前月比▲0.9%(10月:同▲4.5%)と2ヵ月連続で低下したが、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲1.2%、当社予想は同▲2.0%)を若干上回る結果となった。出荷指数は前月比▲1.7%と2ヵ月連続の低下、在庫指数は前月比▲1.1%と2ヵ月ぶりに低下した。

11月の生産を業種別に見ると、輸出の低迷や台風19号による工場の操業停止の影響で10月に前月比▲7.9%の大幅減産となった自動車が挽回生産から同4.5%と持ち直し、グローバルなITサイクルの底入れを背景に在庫調整が進む電子部品・デバイスが前月比0.1%と2ヵ月連続で上昇したが、世界的な設備投資の減速に伴う資本財輸出の低迷を反映し、生産用機械(前月比▲8.9%)、汎用・業務用機械(前月比▲1.2%)が2ヵ月連続の減産となった。

鉱工業生産
(画像=ニッセイ基礎研究所)

財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は19年7-9月期の前期比2.9%の後、10月が前月比▲11.9%、11月が同▲6.1%となった。一方、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は19年7-9月期の前期比▲0.4%の後、10月が前月比▲1.8%、11月が同▲3.1%となった。10、11月の平均を7-9月期と比較すると、資本財(除く輸送機械)は▲9.0%、建設財は▲3.4%低い。

鉱工業生産
(画像=ニッセイ基礎研究所)

19年7-9月期のGDP統計の設備投資は前期比1.8%となった。国内需要の底堅さを背景に非製造業は増加を続けているが、輸出の減少に伴う企業収益の悪化を受けて製造業は弱い動きとなっている。また、7-9月期の高い伸びの一因は、簡易課税制度を採用する中小企業を中心とした駆け込み需要であり、10-12月期にはその反動が生じることが見込まれる。現時点では10-12月期の設備投資は3四半期ぶりに減少すると予想している。

消費財出荷指数は19年7-9月期の前期比▲0.7%の後、10月が前月比▲5.3%、11月が同0.6%となった。消費財出荷指数の10、11月の平均は7-9月期の水準よりも▲4.8%低い。耐久消費財(▲7.0%)、非耐久消費財(▲3.7%)ともに7-9月期の水準を大きく下回っている。

GDP統計の民間消費は19年7-9月期に前期比0.5%の増加となったが、消費税率引き上げ前の駆け込み需要が含まれていることを踏まえれば、低い伸びにとどまった。駆け込み需要が前回の消費増税前に比べて小さかったことに加えて、もともとの消費の基調の弱さがその背景にある。

10月の個人消費は消費税率引き上げに台風19号の影響が加わったことから、大きく落ち込んだ。11月の消費関連指標は、前年比では10月からマイナス幅が縮小し、前月比では増加に転じるものが多かったが、10月の大幅な落ち込みの後としては戻りが弱い。現時点では10-12月期の民間消費は前期比▲2%程度のマイナスを予想している。

10-12月期の減産幅は前回の消費増税後を上回る公算

製造工業生産予測指数は、19年12月が前月比2.8%、20年1月が同2.5%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(11月)、予測修正率(12月)はそれぞれ▲1.8%、▲0.2%であった。

19年11月の生産指数を12月の予測指数で先延ばしすると、19年10-12月期の生産は前期比▲3.5%となる。実際の生産が計画を下回る傾向が続いていることを考慮すれば、10-12月期は前回の消費増税後(14年4-6月期の前期比▲2.9%)以上の大幅減産となる可能性が高くなった。

鉱工業生産
(画像=ニッセイ基礎研究所)

前回の消費増税後の減産は増税前の駆け込み需要の反動による部分が大きかったが、今回は駆け込み需要による増産がほとんど見られなかったにもかかわらず増税後に大きく落ち込んでいる。生産の基調は前回の消費増税後よりかなり弱い。

これまでは輸出、生産の低迷を国内需要の底堅さがカバーしてきたが、消費増税後は個人消費を中心に国内需要も弱い動きとなっている。輸出の低迷が長引けば、消費増税前から低迷している鉱工業生産の悪化傾向がより鮮明となるだろう。

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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任

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