矢野経済研究所
(画像=PIXTA)

昨年12月18日、山梨大学と山梨県立大学は「一般社団法人大学アライアンスやまなし」を共同で設立、授業科目の共同開設、合同講義の開講、教養科目の相互補完、大学院特別プログラムの共同運営など修学環境の充実をはかるとともに、共同購買や人事交流など運営面における連携を通じて大学経営の効率化を目指すと発表した。
国立大学と県立大学による共同法人の設立は国内初、これは2018年に中央教育審議会が答申した「国公私立の枠組みを超えた大学間連携推進のための法人」の流れに沿うものであり、新法人の島田代表(山梨大学学長)も「全国初の認定を目指す」と表明した。

両大学の取り組みは文字通り、大学の連携・再編時代の到来を予感させるものである。しかし、課題も大きい。この4月からは低所得世帯を対象とした高等教育の支援制度がはじまるが、国公私を超えた連携が進むと自ずと費用負担の公平性の問題が浮き彫りになる。また、学位プログラムの編成に際しては「自ら開設する科目」と「共同開設科目」との設置基準に関する規定が不可欠だ。加えて、単位互換を含む多分野における連携は事務方サイドの業務増につながる懸念もある。
一方、連携が経営不振大学の延命に利用される可能性もある。文科省は「赤字大学の安易な救済策とはしない」と明言しているが、いずれにせよ教育、研究、経営における個々の大学の主体性と責任の範囲を明確化させる必要があろう。

2019年、政府が進めてきた一連の大学入試改革が頓挫した。不本意とも本音ともとれる文科大臣による「身の丈」発言をきっかけに2020年度の導入を予定していた英語の民間試験は見送られ、国語と数学で予定されていた記述式問題の採用も無期限延期となった。
居住地や経済状況による受験機会の不平等、50万を超える大量の記述式解答をミスなく短期間に処理できるか、といった問題は当初から関係者が指摘してきたことである。改革ありきの改革の進め方に根本的な問題があったと言わざるを得ない。

外国語4技能の重要性に異論はない。大学が「社会」の要請に応えていないとの背景も理解できる。しかし、社会とは「経団連」だけではないし、社会のどこにどう貢献するかはまさに大学の個性であるはずだ。画一化された選抜方式と画一化された教育プログラムから輩出された画一的な人材からはイノベーションも独自の文化も生まれない。

今週の“ひらめき”視点 12.29 – 1.9
代表取締役社長 水越 孝