ドル円は1月月初に米国とイランの対立激化に伴うリスクオフ(回避)の円買いによって107円台まで円高に振れたが、その後は両国の衝突回避や米中部分合意の署名、米政権による中国の為替操作国指定解除などを受けてリスクオン(選好)の円売りが進んだことで約8ヶ月ぶりに110円台を回復した。足元では新型肺炎への警戒などからやや下落しているが、109円台後半で高止まりしている。

マーケット・カルテ
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ただし、円安の持続性は期待できず、今後は一旦ドルが弱含む可能性が高い。米利上げや米中摩擦のさらなる緩和が当面期待できない一方、これまでの株高によって、世界の株価を左右する米国株の過熱感や割高感が高まっているためだ。米国株の水準は今後の景気回復を先取りし過ぎており、目先は調整が入りやすい。新型肺炎への警戒も重荷になる。リスクオンの後退に伴って円買いが優勢になることで、3ヶ月後の水準は108円前後と予想している。なお、今後は米大統領選の予備選挙が始まり、民主党の候補者が絞り込まれていく。中道派が優勢になれば安堵感による円安圧力が予想される一方、急進左派が優勢になった場合は米景気などへの懸念からドル安圧力が見込まれる。

ユーロ円も1月月初にイラン情勢の悪化を受けて一旦円高に振れた後、リスクオンの円売りで持ち直し、足元は121円台半ばで推移している。今後はドル円同様、円買い圧力上昇が予想されるが、一方でユーロ圏の景気底打ちが確認され、過度の悲観が後退することがユーロ買い圧力になりそうだ。結果的に円とユーロのバランスはほぼ保たれ、3ヶ月後の水準は現状程度に落ち着くと見ている。

長期金利は今月半ばにリスクオンに伴って上昇し、一時小幅なプラス圏に浮上したものの、基本的に小幅なマイナス圏で推移しており、足元も▲0.01%台にある。今後もプラス圏では、本邦投資家による強い債券需要が金利上昇を阻む。さらに当面は既述のとおり、リスクオン地合いの後退によって安全資産の債券需要がやや強まり、金利低下圧力になるだろう。3ヶ月後の水準は現状比で若干低下と見ている。

(執筆時点:2020/1/23)

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上野剛志(うえのつよし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 シニアエコノミスト

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