3月に入ってからドル円は乱高下している。上旬には、新型コロナウィルスの欧米での感染拡大を受けた「リスク回避の円買い」とFRBの利下げに伴うドル売りが共鳴し、一時1ドル101円台まで円が急伸した。しかし、その後は市場で信用収縮の動きが現れたことを受けて各国の企業や金融機関などが現金化を進め、特に流動性が高く国際決済通貨であるドルを求める動きが顕在化した。この間、円も多くの通貨に対して上昇したのだが、「有事のドル買い」の勢いには勝てず、ドル円では円安ドル高が進行。足元では110円台で推移している。

マーケット・カルテ
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今後もしばらく感染の拡大は止まりそうになく、企業等のドル需要は根強く残るものの、主要中銀がドルの供給を大幅に拡充していること、3月末の期末要因としてのドル需給逼迫は解消に向かうことからドル高圧力は徐々に後退していくと見ている。今後公表される米経済指標の大幅な悪化がドル買いを躊躇させる可能性もある。従って、3カ月後の水準は現状比で円高ドル安と予想している。

今月のユーロ円は、欧州での新型コロナの急拡大とECBの大規模緩和を受けたユーロ売り、リスク回避の円買いによってやや円高ユーロ安となり、足元では118円付近で推移しているが、ドルが市場の主役であったため、ユーロ円の動きは限定的となっている。今後は、ユーロ圏経済指標の大幅な悪化が見込まれるほか、特に新型コロナの影響が大きいイタリアの財政懸念も燻り、ユーロの重荷になるだろう。3か月後のユーロ円は現状比でやや円高ユーロ安と予想している。

長期金利は、今月上旬まで▲0.1%台で推移していたが、中旬以降は現金化の流れで米国債が売られて米金利が大きく上昇したこと、日本の経済対策に伴う国債増発観測が浮上したことで急上昇し、足元では0.0%台後半にある。一方、日銀は大規模な資金供給とともに、金利上昇抑制のための臨時の国債買入れを実施するなど対応を進めている。金利上昇が止まらなければ、(金利を指定して無制限に国債を買い入れる)指値オペも辞さないだろう。こうした対応の効果が浸透することで、3カ月後の水準は現状比で低下と見ている。

(執筆時点:2020/3/23)

マーケット・カルテ4月号
(画像=ニッセイ基礎研究所)

上野剛志(うえのつよし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 シニアエコノミスト

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